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川沿いの道の先に、魔物を防ぐ村壁が見えた。
道の延長線上には村門らしきものも見える。
しかし門は開いておらず、衛士もいない。
クリスタさんの移動速度が落ちた。
どうやらここで止まるようだ。
俺も速度を落とし、そして門の前で止まる。
「誰もいないようですね」
人間ならば魔法を使えなくても、ある程度固有の魔力反応を感じ取れる。
たとえ村壁や村門の向こう側にいたとしても、俺ならその魔力反応を捉えられる筈だ。
しかし周辺には、俺とクリスタさん以外の魔力反応はない。
つまり、この門や村壁の向こう側は無人だ。
「ええ。カサクラの村は鉱山とともに閉鎖されました。廃坑となった場所から魔物が出てくるおそれがありましたから。ここから全員で行きましょう」
「わかりました」
ミーニャさんとジョンを魔法収納から出す。
「もうついたのかニャ」
「みたいですね」
周囲を見回すミーニャさんとジョンに、クリスタさんが告げる。
「ここはカサクラの村の村門です。廃坑から魔物が出てくるおそれがあった為、村人を移住させた後、門と壁を封鎖しました」
「なら扉の向こうは……魔物や魔獣の気配はしないのニャ」
ミーニャさんもわかるようだ。
そう、人間だけでなく、魔物や魔獣の魔力反応もない。
「その通りです。ただ、この門の中に入ると、廃坑や沈殿池はすぐです。ですから、ここから隊列を組んでいきましょう」
「了解ニャ」
「わかりました。それじゃエイダン、すまないが俺の槍と弓、矢筒を頼む。矢はとりあえず20本で」
ここで装備するようだ。
一応、どれも鎧の肩や背中に装着できるよう作ってあるから、問題はない筈だけれど。
「わかった」
20本入りの矢筒、弓、槍の順に出して渡してやる。
ついでに俺も黒色の鱗鎧を着装する。
ちなみに俺の鎧は一瞬で着装することが可能だ。
着装した状態をしっかり認識した上で魔法収納に入れると、着装状態になるように出すことが出来るようになる。
この方法を使えば、一瞬で着替えなんてのも可能だ。
何に使うかはまあ、置いておこう。
この世界では礼装と作業衣を一瞬で着替える必要は、多分ないから。
「それでは行きましょう。先頭はミーニャさんで、その次にエイダンさんがついて、適宜遠視魔法で前方を索敵して下さい。私が三番目で、ジョンさんが殿をお願いします」
「わかったニャ」
「わかった」
「わかりました」
「それでは門を開けます」
クリスタさんが門扉に手を当てる。
何か魔力が動いた後、扉がゆっくり手前に動き始めた。
◇◇◇
「まずは沈殿池へ向かいます。毒水が廃坑から出ていると報告にはありますが、今も毒水が出ているのか、毒の種類に変化が無いか、調査した方がいいでしょうから」
クリスタさんがそう指示したので、建造物が並ぶ中を通って、北側の沈殿池に向かう。
建物はどれも煤けた感じだ。
よく見ると、所々壊れた場所もある。
ただ、これくらいの壊れ具合なら、俺程度の魔法使いがいれば修復可能。
つまり、ある程度手を入れれば、この建造物群はまだまだ復活可能だ。
「50mの範囲に人、魔物、魔獣の反応は無し。危険そうな場所も無し」
「了解ニャ。次の交差点を右に行くニャ」
俺達の会話と足音の他は、風が立てる音だけ。
静か過ぎて、少々不気味だ。
そして歩いて行くと、高さ2m位の堤防のようなものが見えてきた。
沈殿池だ。
この向こう側に、明らかな魔力反応と、濃い魔素の気配。
透視魔法を使用して正体を確認する。
見えた、これだな。
「堤防の向こう側、沈殿池に濁った魔力を感じます。対象は骨魚です。確認出来るのは3匹」
骨魚は、その名の通り、魚の骨とヒレだけという形状をしたアンデッド系の魔物。
不浄な魔素が溜まった水場に発生し、水面に近づく人間を襲う。
教本には、そう書いてあった。
「了解ニャ。クリスタ、どうするニャ?」
「倒してから、水質や魔素の調査をしましょう。倒すのはミーニャさん、お願いしていいですか」
「了解ニャ」
「それでは堤防直近まで皆で行きましょう。そこから先は、まずミーニャさんに骨魚討伐をお願いします。なお、毒水に触れても大丈夫なよう、今のうちに対毒魔法をかけておきます」
クリスタさんの魔力が広がって、ミーニャさんだけでなく、俺達全員をさっと包む。
これは俺が知らないタイプの魔法だ。
毒の種類にかかわらず、何にでも使えるような対毒魔法なんてのは、普通は存在しない。
毒を分析して、どうすれば無力化出来るかを知った上で、その毒を中和可能な種類の対毒魔法を使用するのが一般的だ。
しかし、今の対毒魔法は、魔力の感触からして、そういった特定の毒を無効化するタイプでは無さそうだ。
ミーニャさんにかかった魔法が、毒水の近くでどう反応するか、注意して見てみよう。
ミーニャさんは軽くジャンプして、堤防の最上部へ。
堤防の向こう側、沈殿池の中を遊泳している魔力が、ミーニャさんに気づいて動き始める。
「敵は3匹、いずれも骨魚です」
「了解ニャ」
ミーニャさんは、ごく普通に自然体で立っているように見える。
ここから見ると、後ろ姿だけれど。
骨魚が、ミーニャさんに近づいてきた。
そして、一気に水面からジャンプして、ミーニャさんを襲う。
「ニャニャニャ、っと」
ミーニャさんは軽いステップで左に動くと同時に、右手をささっと高速で振った。
俺の目でも、魔法を使わないと捉えられない位の速さだ。
襲いかかった骨魚は、3匹ともミーニャさんの右手に跳ね飛ばされた。
堤防を越え、俺達の斜め右前方5mくらいのところへと落ちる。
見ると3匹とも、魚ならエラがある部分で前後に切り離されていた。
どれも少しだけバタバタ動いたが、すぐに動きを止める。
なるほど、確かにミーニャさん、強い。
骨魚だって、1匹2~3kgはあるだろう。
それが飛びかかってきたのを、片手の振りだけで仕留めて、なおかつ安全な場所に飛ばしたのだ。
どう考えても、これは普通では出来ないと思う。
「終わりニャ。エイダン、他に何かありそうかニャ」
ミーニャさんは、いつも通りの感じでそう言うと、俺の方を見た。
俺は池をもう一度確認。
魔力反応は無く、透視魔法で池全面を見てみても、動くものは無い。
「動きがあるものは何もないです。魔力反応もありません」
「エイダンさん、骨魚を回収しておいて下さい。私達も水面近くまで行きましょう。池の水を調べる必要がありますから」
「わかりました」
骨魚を魔法収納に収納し、そして堤防を上って、沈殿池へ。