荷物を諸々部屋に運んだ後は買ったものを全てしまう作業なんだけど……
魅津希)…組み立てができない…
何故に組み立てかって?
実はね本棚を愁音さんにオネダリして買って貰ったのですよ…まぁでも私ってこういうのやった事無くてですね……何をどうしたら良いのかさっぱり……
魅津希)那木さんでも呼ぼっかな…
スマホを触りとあるメッセージアプリに那木の名
前を探してその欄を触る
そうすると今まで全く連絡していなかったのがよく分かる……まぁなんせ交換したのが会った初日だし…それにまだ一日しか経ってないし……
魅津希)えっと…とりあえず助けてもらおう(もうわからない人)
以下メッセージ上のやり取り
魅津希】あの……那木さん今お時間宜しいですか?
那木】んぁ?どーしたよ
魅津希】えっと……ほ、本棚の組み立てって出来ますかね……
那木】本棚……わりぃやったことねぇわ、そういうのに詳しいのは雅魅だからよ
魅津希】そ、そうですか…
那木】…連絡して置いてやるから部屋で大人しくしてろ
魅津希】本当ですか!?
那木】あぁ、そういうの弄るの好きだからな、大人しく待ってろよ
魅津希】はい!
以上メッセージ上のやり取り
魅津希)良かったぁ…
連絡を取ると雅魅さんがこちらに来ると言うことなので取り敢えずやりやすいよう部屋を少しだがしまい、食べ物系をリビングの冷蔵庫において「中に入っている箱の中のスイーツは皆さん用です」とだけ書いて私は部屋に戻った
魅津希)ありゃ…?(微かにだけど雅魅さんの独特な匂いする……もう来てるのかな)
狐の以下略(耳としっぽですね)が生えて以降匂いやら音にまで敏感になる事がココ最近だが分かってきたのだ
魅津希)雅魅さん居らっしゃいます?
部屋を覗くと1人黙々とドライバーを持って本棚の部品を触っている雅魅さんが居た
雅魅)あ、わりぃ勝手に邪魔してるぜ
魅津希)いえいえ!
雅魅さんは少しだけ顔をこちらに見せたあとすぐに顔を背けまた組み立てに集中してしまった
魅津希)(大きな火傷のあと…ずっと気になるんだけど聞いたら多分ダメだよね……深い過去がありそう……)
火傷の痕をじーっと見ていると雅魅さんは視線に気づいたのか「これが気になんのか?」と聞いてきた
魅津希)き、気になりますけど……そんなにも大きな痕だと余程の事があったんじゃ…
雅魅)んぁ〜……まぁ、色々だな笑
雅魅さんは引きつった笑顔を見せ「これ以上は踏み込むな」という一線を引いてきた
私はそう言うのには元から敏感であった…人の辛い過去を聞くまでもなくよく分かる人間だ
傷の付き方、それを自分から話すかどうか…
顔を半分位覆う火傷のあと……それにこの引きつった笑顔は言うまでもない…
「誰かに着けられた」と言うのは多分だが無理だろう…強いて言えば「火事とかで着いた」というのが多分だが正しいだろう
それを言わないって事はご家族はもう……この世に居ない…
魅津希)その…こういうのはあまり言わない方がよろしいのでしょうけど…何か…ありました……?
そう話すと雅魅さんは体を一瞬だけ驚かせこちらを見て「何故そう思った?」と聞いてきた
雅魅)俺、こういうの隠すの得意なんだけど
魅津希)…そう言うのに敏感なだけです……人の過去をよく知ってしまうんです、相手の言動とか表情とかで
雅魅)…なら分かってるな
魅津希)それが真実かどうかは分かりませんが、多分私が思っているものじゃなければその傷はどうにも着きません
深く踏み込むように伝えると「ココ最近のガキは生意気で色々勘が鋭いな」といった
魅津希)…火事か何かがなければそのような傷は着きません、かりに何かが掛かっとしても顔に直撃するのは…余り考えにくいかと
雅魅)…火事だよ、昔の俺はナヨナヨしててよ…よく弄られてたもんだ
魅津希)時々ですけど私の目を逸らしたり龍城さん達の目まで逸らしていましたね
雅魅)この火傷の痕のせいでさらに顔面を醜くしちまったよ
雅魅さんはとても苦しそうな顔で「相手は犯罪を犯しても何とも思わない非情な奴らだった…俺の家族が目の前で家ごと燃やされてんのにアイツらは泣きながら笑ってた」と、今にでも相手を調べあげて存在事抹消してやりたいという嫉妬心に狂った顔をしていた
魅津希)…目の前で……
雅魅)今の俺は確かに犯罪を犯してる、でもそれは未成年でも罪は罪というものを守る為にだ
魅津希)…そこから未成年の犯罪を見過ごすことが出来なくなったのですね
雅魅さんは組み立て途中の部品からやっと視線を背けこちらに顔を向けた
雅魅)魅津希、俺はおかしいと思うか?
そう何かにもがき苦しむような顔を見せてきた
魅津希)…可笑しくないですよ、人を憎むのは誰だって同じです
そう伝えると雅魅さんは我慢していた何かが崩れるように目から涙を零していた
魅津希)人を憎むのは罪ではありません、仕方の無い事です
そばに寄ると雅魅さんは今まで「人に甘えることが無かったのか」子供みたく抱き締めてきた
魅津希)おっと……大丈夫ですからね
「火事の時から」雅魅さんの「時」は止まっていた……幼い頃から……ずっと、止まっていた…動き出すこともなく……ずっと、ずっと…きっとわかってくれる人が居なかったのだろう「未成年者は子供だから許される」というのが世間の殆ど、雅魅さんは「犯罪は犯罪、人を殺したらそいつは未成年者だろうが人殺し」というのがモットーなのだろう
魅津希)雅魅さん、私は分かります、犯罪者は犯罪者…未成年だろうとなんだろうと犯罪者に変わりないから…ね
「止まったまま」の雅魅さんの頭を撫でると子供みたいに……沢山泣いた
魅津希)(雅魅さんはずっと……子供だったんだ…本来なら親がいる時期の時に親を…家族を失った……身体だけ大きくなってしまったんだ)
魅津希)大丈夫ですからね…私の前だけ弱みを見せてください…未成年ですけど…未成年だからこそ楽に伝えられる部分もあると思うんです…半分生意気ですけどね笑
子供みたいに泣きじゃくる雅魅さんの頭を撫でると「ずっと…こうやって甘えたかった……もっと、幸せになりたかった…」と呟いている
魅津希)……大丈夫です、誰も居ない時だけ私に甘えて下さい
人は愛に飢えると奇行に走る…自分は愛されていた…と、錯覚するためだ……愛されすぎたが為に奇行に走る事もある…でも、愛に飢えた方が奇行の度合いが全く違う
人は弱みを見せてやっと……ちゃんと人の愛に触れられるのだ
魅津希)大丈夫ですからね