「うわぁっ!?」
アリィ「うおっ!?」
ポルポル「ギッ… !?」
服屋に倒れるように入り込んできた客人に 流石にポルポルも驚いたのか少し大きな鳴き声が出たが、直ぐに倒れた入口のドアに音はかき消された。
アリィ「なにやってんの!?ジーク… 」
ジーク「ってぇ〜…!」
猫の女性獣人「ごめんなさ〜い!止まれなくて〜!」
ジーク「…歩く災害((ボソッ」
女性「なんてこというんですかぁ〜!獣人が人間より耳がいいのを知っててわざと言ってますよね!?ねぇ!?」
アリィ「えっとあなたは…」
女性「ハッ!申し遅れました!私、ベツレヘムと言います!長いのでベツでいいです!」
アリィ「随分と勢いがあるね…。」
ジーク「おいこれどうすんだこのドア。」
ベツレヘム「ハッ!すみません!私が全面的に負担しますので…!」
ジーク「金はないんじゃなかったのか…?」
ベツレヘム「へ?自分で修理するんですよ?」
ジーク「は?」
扉の修理中
アリィ「ジーク、ベツさんってどうしたの?」
ジーク「…俺達が仕留めた悪魔いただろ?」
アリィ「うん。それがどうしたの?」
ジーク「実は…アイツハンターで、俺達が仕留めた悪魔は依頼で狙ってたらしくて…」
アリィ「それ…恨まれるんじゃ…!?」
ジーク「だよな…。だから慌てて逃げてきたんだけど、1文無しだったから飯を直前に上げたんだよ。目の前で涎垂らされて気まずかったし。懐かれたあげく、お礼をさせろと追いかけられた。」
アリィ「獣人に足の速さでは勝てないからね…。でもそれがドアを壊した理由にはならないと思うんだけど… 」
ジーク「…アリィ、お前は知らないだろうけど猫の獣人って結構ドジな奴が多いんだ。自分が止まれるスピードを見誤って俺はそれに巻き込まれたって訳。」
アリィ「ありゃりゃ…。ジークはどこも怪我してない?ベツさんは大丈夫だろうけど…。」
ジーク「大丈夫だ。」
アリィ「よかった。お礼くらい受け取ったら?そうしないとあの人気が済まないと思う。」
ジーク「…そうするか…。気まずいけど…。」
ベツレヘム「おふたりともお待たせ致しました!修理終わりました!あとごめんなさい! 」
アリィ「ベツさんの潔いとこ私、好きだよ。にしても、随分と手馴れてるね。 」
ベツレヘム「昔から私人一倍ドジで後始末をしてたのでこういうのは慣れてるんです。」
ジーク&アリィ(なんて悲しい…!)
ジーク「あー…ところでお礼の話なんだけど… 」
ベツレヘム「なんなりとお申し付けください!あ!次の町までの護衛なんてどうでしょう!私、ドジですけどこれでも強いんですよ! 」
ジーク「どうする?」
アリィ「いいんじゃない?戦わなくていいならそれに超したことないよ。」
ジーク「じゃあ頼む」
ベツはきらきらと目を輝かせ尻尾をピンと真っ直ぐ立て喜ぶ。
ベツレヘム「ほ、本当にお礼をさせてくれるんですか…!?ありがとうございます!今まで厄介払いばかりされてて…うう〜」
ジーク「また泣き始めた…」
アリィ「ベツさんも苦労してるんだね…。ここでずっと話してるのも店主さんの目が痛いから私達が止まってる宿に行こうか。ジーク、食材は買えた? 」
ジーク「…あっ!?」
アリィ「…ジークは買い物続けて。」
ジーク「悪い!」
アリィ「ここが私達の泊まってる部屋。
これのこと紹介するね。」
ベツレヘム「さっき音が鳴ってたものですね!おもちゃですか?」
アリィ「…やっぱり獣人さんだし、聞こえてたか。これは圧縮装置付きバッグなんだ。」
ベツレヘム「圧縮バッグ!?それってすごく高いんじゃ…。」
アリィ「うん。私達じゃ到底届かない代物だよ。これは…ある人から譲ってもらった中古品なんだ。」
ベツレヘム「音が出るのは…」
アリィ「よく分かんない。変わり者だったから改造でもしたのかな。」
これはジークと一緒に考えたポルポルへの対策だった。
ベツレヘム「改造…ふふっ、私の友人みたいですね。」
アリィ「友人?」
ベツレヘム「はい。犬の獣人で、すごく頭がいいいんです!機械いじりが得意で…!」
アリィ「その人のことが凄く好きなんだね」
ベツレヘム「へ?」
アリィ「凄く楽しそうに話すから。」
ベツレヘム「はい、すごく好きなんです! 」
アリィ「ふふ。この町からは、早い段階で発ちたいからなるべく準備を早くお願い。」
ベツレヘム「承知致しました!」
1週間も経たずして、次の町へ出発した時のことだった。
ジーク「…なぁアリィ」
アリィ「なに?ジーク。」
ジーク「…俺達どうしてこんなに運が悪いんだろうな。」
アリィ「私には分からないなぁ」
3人は悪魔と向かい合っていた。
ジーク「ベツさん?さっきからじっとしてるけど護衛は…」
ベツレヘム「大丈夫ですって!」
アリィ「どうみても大丈夫じゃなさそうですけど…」
悪魔が咆哮を上げ、ずいっとこちらに顔を寄せる。するとベツレヘムは持ち前の胴体視力を活かし、悪魔に文字通り殴って伏せをさせた。
ベツレヘム「順番は守ってください!今はアリィさんと話してるんです!」
アリィ&ジーク「つっよ…」
ベツレヘム「アリィさん!なんのお話でしたっけ?」
アリィ「ごめん忘れた…」
ベツレヘム「え!?じゃあ仕留めますね…」
そう言うとベツレヘムはしょぼんとしながら淡々と、悪魔を仕留め処理をする。
ジーク「手馴れている…。手際の良さは流石ハンターだな。」
アリィ「ジークは私よりはずっと手馴れているけど、やっぱり時間がかかるよね。」
ベツレヘム「ジークさんは他の人より手馴れているんですか?」
アリィ「うん。ジークは本業が狩人なんだ。だから動物とかも捌いたりするから…。」
ベツレヘム「なるほど!狩人なら今回は私も干し肉じゃなくて、新鮮なお肉が食べられたり」
ジーク「期待してるとこ悪いけど、とれない時はとれないよ。動物だってバカじゃない。」
アリィ「腕は立つ方だと思うんだけどねぇ…」
ベツレヘム「運ですか?」
ジーク「だな」アリィ「だね」
ベツレヘム「運ならしょうがないですねぇ…」
ジーク「ベツさん、取り分どうする?」
ベツレヘム「えっ、私にも分けてもらえるんですか!?」
アリィ「仕留めたのはベツさんだもん。」
ジーク(この人、多分世間知らずなことを今まで悪用されてたんだろうなぁ…。)
その日の晩、ベツレヘムが見張りにつきアリィとジークは寝ることになった。
ジーク「限界になったら交代するから言ってくれ。3人分がどれくらいか分からなかったら多めに作って余ったスープがあるからお腹が減ったら蓋を開けて食べてくれ。」
ベツレヘム「はい、何から何までありがとうございます。」
アリィ「ベツさん、はい毛布。今日は冷えるだろうから。」
ベツレヘム「ありがとうございます。」
アリィ「焚き火で毛布燃やさないようにね。」
ベツレヘム「そこまでドジじゃありません!」
アリィ「ふふっ。」
ジーク「アリィ、同じ性別の友達が出来て嬉しいのは分かるが、からかうのは程々にしろよ。」
ベツレヘム「友達…と思ってくれてるんですね。えへへ…ちょっと嬉しいような…恥ずかしいような…」
アリィ「えへへ…おやすみベツ、ジーク」
ベツレヘム「おやすみなさい、アリィさん、ジークさん。」
ジーク「2人ともおやすみ。」
皆が寝静まり、ベツレヘムさえも寝落ちした深夜のこと。
ポルポル「ギ…」
ポルポルが目を覚ます。
ポルポル「……」
ふよふよと飛び、ポルポルはを毛布を抜け出しテントを抜け出す。辺りを見回すと、ベツレヘムが寝落ちしているのを見つける。
ポルポル「ギ!?」
「ギー!」
服の裾をくわえ引っ張るがビクともせず、ベツレヘムはビクともせず気持ちよさそうに寝ている。
「ギ!ギー!ギッ!」
残念ながら音で起こす作戦も失敗に終わった。
「ギ…」
ポルポルがどうベツレヘムを起こすか模索している時だった。はぁはぁと息をする音が静かに忍び寄る。犬のような巨体が律儀に足音を立てずに近づいてくる。そう、 悪魔だ。悪魔が気配を潜めてすぐそこまで忍び寄っていた。
ポルポルは一層慌てて、ベツレヘムを起こそうとするがそんなポルポルとは裏腹にベツレヘムは依然と気持ちよさそうに寝ている。
ポルポル「ギ…ギーーーー!」
ジーク「ん…」
ジークがぱちりと目を覚ます。
ジーク(…金属音…?悪魔か…?)
恐る恐るジークはテントを開ける。
ジーク「…ぅぉっ!?」
アリィ「んぅ…」
ジーク「あ、悪い…」
(どういう事だあれ…悪魔と…人…? )
ジークの視界の先に居たのは悪魔の亡骸と、雪のような髪を大きなリボンでひとまとめにした人だった。
ジーク(ここからだとよく見えない…。)
そう思い、ジークがテントから出た時の事だった。白髪の人間が倒れた。
ジーク「…っぅおい!?」
ジークが慌てて白髪の人間の元に駆けていく。
ジーク「おい!大丈夫か!おい!目を覚ませ!」
(息はしてる…生きてもいる…ただの気絶か?)
ジークが慌てて白髪の人間を起こそうとすると、声の大きさにアリィが起きてきた。アリィに起こされたベツレヘムも目を覚まし、ジークに近寄って行った。
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