テラーノベル
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ラウールから余裕の色が消え去った。向井の泣き声はとてつもない威力を孕んでいて、冷静沈着な宮舘が息を飲んだ程。しかも内容が音量以上にとてつもない。全員の思考が?でシンクロする。
向井は宮舘が好きなはず。
だったら今のは…?
店内に困惑が広がる間も叫びは続く。
「好き好き言うてたの、冗談やったんか?俺弄んで酷いわ…涙止まらへんやんか、アホぅ…!」
「あっ…あの、康二くん?」
「あのやあらへん。冗談なんかどうか答えろやっ!」
「…冗談な訳ない、ボクは本気で康二くんが好き。愛してるって言っても過言じゃないよ。お願い……信じて」
宮舘が差し出したおしぼりを受け取って、ラウールは向井の濡れる頬を押さえる。因みに阿部の肩は秒で解放した。絶叫よりも早い佐久間と目黒の突き刺すような視線が痛かったからだ。
面々が見守る中、言葉を尽くして愛を伝えるラウール。軽口ではあっても紡ぐ言葉に偽りがないのは、その場にいる皆が知っている。向井にも分かったのか徐々に嗚咽が潜まり、小さなしゃくり上げに変わって行く。
うさぎさんみたいな真っ赤な目でラウールを見詰め、涙を拭う手甲へ向井が掌を重ねる。一回り違う温もりを握り合う二人。横で見ている阿部も瞳が潤み、今にも雫が溢れそう。
「んっ、うん…信じる。…俺もな、ラウが好きやねん。だても好きやけど、今はどっちが好きか分からんくらい、ラウがす……」
「…っ!それ、ホント?康二…く、ん…?」
「~…すやぴぃ…」
ベタな恋愛小説のように、突然テーブルへ突っ伏した向井の返事は寝息だった。束の間の静寂。それをラウールの溜息が破り、次ぐセリフで笑いが広がる。
「……ねぇ、こんなお約束な展開アリ?今の告白ってノーカンになるのかなぁ…~酷いのはどっちだよ、もうっ」
「うわっははは!ちょ~~ウケるっ!持ってんなぁ、ラウ!」
「流石にノーカンだろ。絶対起きたら覚えてないし」
「んん~…でもさ、眠い時だからこそ本音なんじゃないかな?前向きに考えよう、ね?」
「うん、阿部の言う通り。ラウールが伝え続けて来た愛が実ったんだよ」
「阿部ちゃん、だてさん…ありがとう」
「ちょっと~、俺らにはぁ?」
「何で茶化しにお礼言わないといけないの」
「佐久間くんは兎も角、俺は真実を言っただけなんだけど」
「余計タチ悪いよ。ん~…と、寝ちゃった康二くんどうしよう。取り敢えずウチに連れて帰っていい?」
眠り姫の髪を淡く撫でつつ、ラウールが周囲へ視線を馳せて問う。各々泳いだ目配せが答えだった。この店でしか会わないから誰も向井の家を知らないのだ、曖昧に頷くしかない。真逆にしっかり頷き返し、向井を大切そうに両腕に包んでラウールは片目を瞑った。
「大丈夫、責任はボクが取るよ。皆には迷惑かけないから安心して」
「お前、責任って…まさか酔ってる隙に手出すつもりじゃ」
「めめじゃあるまいし、する訳ないじゃん。ボク知ってるんだよ、阿部ちゃんとの馴れ初め」
「なっ……ん、で」
虚を衝かれた目黒がラウールの後ろを見る。頭がもげる勢いで首を振って応える阿部。そんな空気を入れ替えるべく、宮舘が苦笑いで助け舟を出した。
「まぁ、あの夜は俺を含めて何人かいたからね。人の口に戸は立てられないって言うし」
「…………」
「…………」
渦中の当人達はお揃いの赤い顔で黙り込む。面白くない佐久間が唇を尖らせ、阿部へ向かって独り言の体で投げ掛ける。
「あ~あ…阿部ちゃん酔っ払っちゃわないかなぁ。俺がお持ち帰り出来ちゃうくらいー」
「…酔っ払っても持ち帰るのは俺です」
「送り狼がよく言うじゃん」
「ハイハイ、喧嘩しなーいの!だてさん二人見張っててね?…じゃあ、お休みなさ~い♡」
「はい、承りました。…お休み、いい夜を」
「お…~お休みなさい。帰り道、気を付けてね?」
「まったな~。次会ったら詳しく聞かせろよぉ!」
「あ、それは俺も聞きたい」
「仲良いんだか何だか不思議な関係だね、二人とも」
ぱたんと扉が閉まる音と宮舘の声が、綺麗に重なり合った。
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