テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
静まり返った店内に唯一響くのは、グラスの中で氷が踊る音。賑やかしの佐久間が黙ってしまっては致し方ない。が、
何となく気まずい。
カウンターに並んだ三人がそんな思いを抱いていた頃、一人余裕のある宮舘が対面からそっと見渡し観察してみる。…阿部が最も挙動不審だ。瞳をキョロキョロ動かして離れた席を伺う様子は、さながら小リスのよう。愛らしい仕草に母性が擽られ、カクテルを手早く拵えて目黒の横へスマートに置く。
「阿部。新作なんだけど良かったら味見して」
「えっ……う、うん!ありがとう、いただきます」
花を撒き散らして微笑んだ阿部がカクテルの前へいそいそと移動する。目黒の顔が分かりやすく蕩け、佐久間が宮舘へ向かって舌をべーっと突き出した。何だかんだ言っても愛らしい面々だ。
「ん…~すっごく美味しい。これメニューに入れてよ、次もまた飲みたい」
「…へぇ、そんなに美味しいんだ。ちょっとちょうだい」
頬に片手を宛てがい本音の賛辞を紡ぐ阿部からグラスを引ったくり、目黒が残りを一気に呷った。返事は当然聞く間もなく、いや、聞く気もなく。突如奪われた阿部よりも、反対隣の佐久間が先に喚き始める。
「あ~~っ!!なに俺の目の前で関節キスしてんだ、お前ぇぇ!!」
「確かに美味しいね。俺もまた飲みたいかも」
「スルーすんなぁ!~…しかも全部飲みやがってぇ…さては俺と阿部ちゃんの関節キス阻止したなっ!?」
「そもそも阿部ちゃんとじゃなくて、俺との関節キスになるじゃん。やだよ」
「ぐ……そ、そっか。ナイスセーブ、蓮!」
「うす」
ぽかんと口を開ける阿部を置き去りにして、拳同士をかち合わせる佐久間と目黒。やはり妙に気が合う。阿部が好みな時点で両思いみたいなものなのかもしれないが。
二人の雰囲気に気付いたらしい阿部が少ししょんぼりし、手持ち無沙汰に指遊びを始めた。庇護欲が溢れちゃった宮舘は流石に放っておけず、空の皿を回収がてら場の空気を変えに行く。
「そう言えば阿部と目黒は待ち合わせしてたんじゃないの?これから何処かへ行く予定?」
「「あ………」」
綺麗に目と声が合わさった。見事に友情から愛情に空気が変わる。反して佐久間の視線が肌に突き刺さって来たが此処は耐えて貰おう、宮舘は心の中で頭を下げた。恋路は素直な方が好ましい。目配せでのやり取りの後、阿部が躊躇いがちに口を開く。
「ど…こって言うか、あのぉ……その」
「…やっぱり俺が言うよ。何処とかじゃなくて、こういう事 」
「めっ…~~!」
開いたものの口淀む阿部の手を取り、掌と掌を重ねてギュっと握った目黒は、宮舘を真っ直ぐ見詰めて言い切る。毅然と、真摯に。顔を赤く茹だらせた阿部は最後まで名前を言えず仕舞い。見詰められた宮舘とテーブルに突っ伏した佐久間はそれが意味するところを知っている。
向かう先はベッド。二人が度々交わして来た〝合図〟。
「ははは、お熱いねぇ。じゃあもう行ったら?時間は有限なんだし」
「そーそー、行け行けっ。熱いついでに南国まで行っちゃえ」
「佐久間くん…いいの?」
「あのさぁ…こんな時にウダウダする男に俺が見える?…いいから行けって。阿部ちゃん溶けてなくなっちゃうよん」
「…だね。阿部真っ赤だし」
「………~っ」
結局また口を噤んだ阿部が潤んだ眼差しを目黒へ向け、惑っていた目黒は心優しい人達へ深く頷いてから立ち上がり、繋いだ手を淡く引いた。自然と二つの影が寄り添い合う。
「ありがとう、だて様、佐久間。えぇと…行ってきます」
「うん?ふふ…行ってらっしゃい。またおいでね、二人とも」
「はあ~~~かわゆす。ハイハイ、絶対またねっ!ほら、目ぇ瞑ってる間に行けって!」
「ありがとう。…また来ます。行こ、阿部ちゃん」
宮舘は仲睦まじい背中を見詰めたまま、佐久間は目と半身を伏したまま、扉が閉まってからも手を振り続けていた。
コメント
6件

このお話の☃️さんたち皆可愛くて優しくて好きです☺
結局🩷も漢なんだよねえ🤭

最高です🥰✨ぜひ🖤💚のその後お願いします!m(_ _)m