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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第158話:ハリウッド女優の強行着陸
巨大ヒグマが掘り当て、シロ様の神聖オーラによってプラチナ色に輝く天然温泉が爆湧きした我が家の庭。
立ち込める真っ白な湯煙が十勝の冷たい秋風を心地よく温め、古民家の裏手は完全に極上の秘湯露天風呂と化していた。
すでに湯船(クレーター)の中には、村のおばあちゃん達が総出で集まり、「極楽じゃあ」とのんびりお湯に浸かっている。
湯船の中では、毛並みが完全にシルク化したキタキツネのコン吉とコン次郎がぷかぷかと浮き、巨体を持て余したヒグマまでもが、おばあちゃん達から貰った蒸しサツマイモを片手に気持ちよさそうに目を細めていた。
そんな、種族の壁を超えたあまりにも平和すぎるもふもふ温泉空間に、突如として上空から凄まじい爆音が響き渡った。
バリバリバリバリバリバリバリッ!!!!!
「キャッ!? な、何ですかこのもの凄い風と音は!?」
割烹着の裾を押さえながら、小春ちゃんが驚愕して十勝の秋空を見上げた。
黄金色に色づいた防風林の木々が激しくなぎ倒されんばかりに揺れる中、上空からゆっくりと降下してきたのは、限界集落にはおよそ似つかわしくない、漆黒にピカピカと輝く超高級プライベートヘリコプターだった。
機体には、世界的な映画配給会社のロゴがデカデカと刻印されている。
ヘリは俺の敷地である広大な庭の空きスペースに、信じられないほどの正確さで強行着陸(バーティカル・ランディング)を決めた。
ローターの風圧がゆっくりと収まり、ヘリの重厚なドアが乱暴に開け放たれる。
そこから姿を現したのは、大きなサングラスを頭に上げ、眩いばかりの金髪を十勝の秋風になびかせた、世界の至宝。
【日常チャンネル】の筆頭VIPリスナーにして、世界的ハリウッド女優のシャーロットその人であった。
「オーマイゴッド! 画面で見るよりも何百倍も素晴らしいわ! ここが私のキングが治める、世界最高のアンチエイジング・スパね!!」
映画のスクリーンからそのまま飛び出してきたかのような圧倒的な美貌と、それ以上に規格外のテンションを爆発させながら、彼女は日本の限界集落の大地へとファーストステップを刻んだ。
「し、し、シャーロットさん!? 本物のハリウッド大女優が、なんでヘリコプターでうちの裏庭に垂直着陸してるんですかぁぁぁっ!?」
小春ちゃんが、持っていた湯かき棒をひっくり返して腰を抜かした。
「ハロー、可愛いコハル! 配信を見ていたら居ても立っても居られなくなって、プライベートジェットで成田まで飛んで、そこからヘリをチャーターして直行してきたのよ! ハリウッドの激務で私の肌はシワシワ(あくまで私の主観だけどね!)だったけれど、あのプラチナのお湯に入れば一瞬で10代に戻れるわ!」
シャーロットはそう叫ぶと、身につけていた超高級ブランドのコートを躊躇なく脱ぎ捨てた。
その下には、すでに完璧なバカンス仕様のハイブランド水着が着用されており、彼女の準備万端(ロジスティクス)ぶりはドバイの石油王にも引けを取らない。
「私の愛しのキング! 会いたかったわ!」
彼女は真っ先に、湯船の縁の特等席で座布団に座っていたシロ様の前へと膝をついた。
シロ様がゆっくりと彼女を振り返った瞬間、その神秘的な『オッドアイ』の瞳が、湯煙の中で左右異なる美しい輝きを放った。
左目のサファイアブルーはどこまでも深く冷徹に、右目の琥珀色は気高く温かみを持って、世界のトップ女優を静かに見つめる。
『ミャウ(相変わらず騒がしい人間ね。まぁ、遠くからよく来たわ)』
シロ様が威風堂々と肉球を差し出すと、シャーロットは「オー、なんて光栄なの!」と大感激しながらその肉球にキスをし、そのままの勢いでプラチナ色の天然温泉へとドボンと飛び込んだ。
「冷たい秋風の中で入るこのお湯……まさに天国(ヘブン)だわ!! 体中の細胞がパチパチと若返っていくのがリアルタイムでわかるわよ!」
お湯に浸かった瞬間、シャーロットの誰もが羨む美肌が、さらにプラチナ色の光を吸い込んで透き通るような輝きを放ち始める。
「あら、海外の綺麗なねえちゃん、遠くからよく来たねぇ。これ食べなさい」
「オー、サンキュー、グランマ!」
温泉に浸かっていた村のおばあちゃんが、普通にローカルな距離感でシャーロットに蒸しサツマイモを差し出し、シャーロットもそれを笑顔で受け取ってパクリと齧る。
そのすぐ隣では、体長3メートルの巨大ヒグマが「グルォォ……(ようこそ、俺の掘った湯へ)」と、大きな片腕を上げて挨拶し、シャーロットも「あなた、最高のエンジニアよ!」とヒグマのフワフワの肩を優しく撫でていた。
言葉の壁も、国境も、さらには種族の壁までもが、シロ様のバフが溶け込んだプラチナ泉の中で完全に融解していく。
世界一カオスで、世界一尊い『極上の混浴空間』がそこに完成していた。
最強のネットワーク網を通じて全世界へ生配信されている画面の向こうでは、この「ハリウッド女優が日本の過疎地でヒグマとおばあちゃんと混浴している」という前代未聞の超現実的映像に、二千万人を超えるリスナーたちが腹を抱えて大爆笑していた。
『おいおいおい!! リアル降臨とかガチで行動力バグりすぎだろwwww』
『大女優が村のおばあちゃんからサツマイモ貰って食ってるのシュールすぎるww』
『ヒグマと並んでも絵になるハリウッド女優の圧倒的画力よ!!』
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)百連発』
『”Charlotte, you spatial thief!!! You used a helicopter to steal the first bath before me?! I’m preparing my private jumbo jet right now!“(シャーロット、この空間泥棒め!!! ヘリを使って私より先に一番風呂を盗んだな?! 私は今すぐプライベートジャンボ機を準備するぞ!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)八十連発』
『”She is completely enjoying her holiday… That hot spring’s anti-aging effect surpasses any latest medical treatment in Hollywood!“(完全に休日を満喫しているな……。あの温泉のアンチエイジング効果は、ハリウッドのいかなる最新医療をも凌駕している!)』
画面の向こうで世界の資本が激しく嫉妬の炎を燃やし、極彩色のスパチャが爆湧きする湯気の中で乱舞する中。
俺は一人、静かに軽トラックの荷台に腰掛け、保冷バッグからいつものタッパーを取り出して開けていた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊き上げられた『冷やし玄米』と、自家製の『大豆ミートと秋ナスの甘味噌炒め』である。
「……よし。前線陣地における、国際的超重要人物(ハリウッド女優)の突発的な不法着陸を確認。これより指揮官は、これからの国際問題対応(おもてなし)に備え、定時エネルギー補給を執行する」
俺は、プライベートヘリの巨大な影と、プラチナ色に輝く温泉の湯気に包まれながら、一切の感情を排した元・社畜の顔で、ストイックに大豆ミートを玄米の上にワンバウンドさせて咀嚼し始めた。
(……ふむ。秋ナスのカリウムと、大豆の植物性タンパク質。いかなるハリウッドの輝きを前にしても、俺の兵站(ロジスティクス)に一ミリの乱れもないな)
脳内で完璧な戦術補給を執行していたが、俺は需品科としての『目の前に本物の世界的大女優が水着姿で現れようとも一ミリも動じない鋼のポーカーフェイス』を維持し、淡々と喉へと滑り込ませた。
「お、お兄さぁぁぁん!!! 目の前で本物のシャーロットさんがヘリで強行着陸して、おばあちゃん達やヒグマさんと一緒に最高に尊い国際混浴を満喫してる奇跡の瞬間に、なんで一人だけヘリの風圧を浴びながら真顔で『ナス大豆ミート』をストイックにモグモグ咀嚼できるんですか!!」
小春ちゃんが完全に理性を失い、温泉の脱衣所用に物置から出しておいた、樹脂製の頑丈な『風呂用プラスチック椅子(ホワイト・耐荷重百キロ仕様)』を両手で盾のように構え、凄まじいジト目でツッコミを入れてくる。
だが、俺は玄米の咀嚼を止めない。
「小春ちゃん、取り乱すな。どれほど国際的なエンタメ界の巨頭が我が陣地に強行突入してこようとも、元・陸上自衛隊需品科たるもの、定時給食(エネルギー補給)という基本ルーティンを怠ってはならない。いかなる超常現象の前でも己の代謝サイクルを一定に保つ。これが需品科の鉄則だ」
俺は水筒の熱いほうじ茶で喉を潤すと、二千五百万人を突破して全世界の回線を麻痺させかけている配信カメラにキリッとした真顔を向け、いつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。画面の向こうで、本物のハリウッド女優がヘリで降臨し、奇跡の国際混浴が始まったと感動されているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『本人が目の前でお湯に浸かってるのに、絶対に認めない男!!!』
『主の限界言い訳タイム・ハリウッド女優降臨編ww』
『さあ、この世界の至宝をどうやって現実科学で論破するつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは本物のシャーロットさんではありません。これは、海外の過激なエンターテインメント企業が、秋の行楽シーズンに向けて我が限界集落の広大な敷地を利用して実施している、新型の『高解像度3D屋外ホログラムプロジェクター』の遠隔実証実験に過ぎません。彼女の圧倒的な美貌や、お湯がプラチナ色に輝いて見えるのも魔法の力ではなく、ヘリのローターによる局所的な気圧低下と、温泉の湯気が引き起こした集団幻覚(ミラージュ現象)による、光学的なエラーです。ええ、すべてはただの『ホログラムの地方営業』と『気圧低下による集団幻覚』ですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
バコォォォォォンッ!!!!
小春ちゃんが、持っていた頑丈な風呂用プラスチック椅子を全力で振りかぶり、俺の背中に向かってパーフェクトな満塁ホームラン級・風呂椅子スマッシュを見舞った。
耐荷重百キロの強固なプラスチックが肉体に激突した、鈍くも破壊力抜群の爆音が、十勝の秋の広大な空へと虚しく響き渡る。
「ホログラムがおばあちゃん達とサツマイモを美味しそうにモグモグ分け合うわけないでしょうが!! 集団幻覚じゃなくて、お兄さんの配信とシロちゃんのオッドアイの加護が凄すぎて、シャーロットさんがリアルに大暴走して会いに来てくれたんでしょうが!! 自分の家のチャンネルが、世界中をリアルタイムで動かす超弩級のインフルエンサーだってことを素直に認めなさいよ!!」
『小春ちゃんの風呂椅子スマッシュ炸裂www(いい音)』
『高解像度3D屋外ホログラム(本物のハリウッド大女優)』
『気圧低下による集団幻覚(世界一贅沢な本物の混浴)』
『適応力バグおじさん、ついに大女優のリアル降臨までホログラムの地方営業と言い張るww』
『風呂椅子の攻撃力が耐荷重を越えてて草ww主の背中が心配だわww』
俺の理不尽極まりない光学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレの風呂椅子ツッコミに、お湯の中でサツマイモを頬張っていたシャーロットは「オー! ナイススマッシュ! コハルのツッコミ、映画のアクションよりキレがあるわ!」と大笑いして拍手を送り、二千五百万人を超えるチャット欄のリスナーたちも、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ほんと、相変わらず世界の至宝を前にしても屁理屈だけは一人前な下僕ね)』
俺の膝の上へ、湯気の中からトコトコと戻ってきたシロ様が、満足げにその美しいオッドアイの瞳を細め、ゴロゴロと喉を鳴らしながら俺の玄米の匂いをくんくんと嗅いでいた。
キツネ兄弟も、巨大ヒグマも、湯煙の中で世界のトップ女優と完全に仲良くなり、楽しそうに秋の豊かな時間を共有している。
「……まぁ、理由はどうあれ。ホログラムであろうとも、村の公金口座に映画のプロモーション費用名目で天文学的な外貨が振り込まれ、冬の防衛予算(冬支度)が完全に神の領域に達したなら、ロジスティクスとしては完全勝利だ」
俺は背中のプラスチックの衝撃をさすりながら苦笑し、シロ様の純白の背中を撫で、水筒の熱いほうじ茶をゆっくりと飲み干した。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすつもりだったが、今では世界一尊いオッドアイの神獣と、最強の工兵ヒグマ、騒がしい女子高生、そして国境を越えてヘリで突撃してくる大女優に囲まれた、世界一バグった『絶対の聖域』になってしまった。
シャーロットの放つ圧倒的な華やかさと、元需品科のブレない大豆ミート咀嚼。
限界集落の黄金の秋は、庭に佇む漆黒のヘリコプターと大爆笑を背に受けながら、全人類を虜にする究極の『もふもふ温泉スローライフ』へと、どこまでも力強く突き進んでいくのだった。
コメント
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もう最高すぎて声出た😂✨ ハリウッド女優がヘリで限界集落に強行着陸って予想の斜め上すぎるし、着いた瞬間おばあちゃんとヒグマと混浴してるの完全にカオスで笑ったww それなのに主人公は涼しい顔で大豆ミート咀嚼してて、そのギャップがたまらんかったよ…! 小春ちゃんの風呂椅子スマッシュも音が聞こえてきそうな勢いでツボった♡ シロ様のオッドアイがまた神秘的で、この世界観にもう完全にハマった〜😭💕