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ニャヘマ「さて…ここでやり過ごすとしますか。」
ノア「避難所の方には行かないの?」
ニャヘマ「派手に暴れたもの。今ルスベスタンと入れ替わり、避難所に入れば怪しまれる。」
ノア「…そっか。」
ニャヘマ「それで…君は何者なの?」
ノア「…うまく説明できないかなぁ。ボクとしては、君の方が気になるけど…まずは自分から言うのがマナーだね。何者っていうのは少し難しいけど…生まれつき魔法が使えるヒト、そんなところかな。まぁ君もそうだろうけど…」
ニャヘマ「…生まれつき?」
生まれつきという単語にニャヘマは、眉をひそめる。
ノア「…待って生まれつきじゃないの?」
ニャヘマ「そうね、私はね。今まで他にこんな化け物みたいな力を使えるヒトはいなかった。だから、生まれつきだなんて思わなかった。私はもしかして特別だったりする?」
ノア「…そう…だね…。原因が分からないけれど…」
ニャヘマ「原因は分かりきってるの。」
ノア「え?」
ニャヘマ「…多分悪魔だったと思う。自信が無いのは…アレがあまりにヒトに似ていたから。」
ノア「ヒトに…」
ニャヘマ「あの時のことは鮮明に覚えてる。…私はねこの国の出身じゃないの。砂漠にある小さな集落の出身だった。もうほぼ無くなっちゃったけれど。」
ノア「無くなったのは…悪魔のせい?」
ニャヘマ「ええ。ある時、悪魔が私達の集落を襲撃してきた。その悪魔はほんとにタチが悪くって。多分酸…かな。どこに避難しても、建物は溶け始めるし、屋外に出ようものならヒトは数秒で酸液…の水溜まりになった。悪魔を追い出そうと戦ったヒトのほとんどは悪魔に殺された。私の父親もね。」
ノアは言葉に詰まる。
ニャヘマ「…気は使わなくていいわ。私ね、皆死んで、あ、自分もこのまま死ぬんだって思ったの。それでも家族だけは守らなくちゃって…その時だった。襲撃してきた悪魔が悲鳴をあげてて何事かと思って振り返った。」
ノア「…それが」
ニャヘマ「そう。察しがいいのね。悪魔に傷を負わせたのは悔しいけれど、知らない悪魔だった。…変わった髪飾りを付けた2つ結びのヒトの女の子のような…悪魔だった。何か吠えながら、掌から氷を出して、私達を襲ってきた悪魔を刺してた。悪魔同士で争うことは滅多にない。だから印象に残ってる。まっ見たことある人が生きてなかっただけかもしれないけど…。その悪魔と目が合ったの。ほんの一瞬。その後その悪魔はすぐ立ち去った。」
ノア「うん。」
ニャヘマ「ほんの一瞬の出来事だったけれど、次に私が何をすればいいかすぐに分かった。私は振り続ける酸性雨を凍らせた。悪魔が吐いた体液を凍らせた。そうして、その悪魔と同じように悪魔に刺した。無我夢中で、気づいたら悪魔は死んでた。これの他に原因があると思う?」
ノア「…ないだろうね。十中八九その悪魔のせいだと思う。」
(でも…何かおかしい。氷を使う悪魔…特徴的にもオケアノス…。でも彼女にそんな力はなかったはず…まさか新たに…いや、ありえない…。彼女…氷に対する情熱が変態並だったし…そもそもそんなことできるなんて1人も…)
ノアはハッと顔を上げる。
ニャヘマ「?」
ノア「…そもそもなんで…ボクはこの姿を保てているんだ…?」
ノアは胸に手を当てる。
ノア「…やっぱり、戦う前より増えてる。こんなこと…」
ニャヘマ「話が見えてこないんだけど…」
ノア「魔力の感覚はわかる?」
ニャヘマ「魔力というよりは空腹感だけど…なんとなく。」
ノア「それでいいよ。魔力はちゃんと減ってる?」
ニャヘマ「…別に減ってるけど…。」
ノア「…ボクだけ回復してる…?」
(仮にオケアノスだとして…こんなこと絶対できない。…だって彼女はシリルに殺されてあの村の地下室に安置されたんだ…。なら彼女以外で、こんなことが出来るのは…)
ノア「まさか…ジハード…?」
ノアは立ち上がり、フラフラと歩き始める。
ニャヘマ「ちょちょちょっ…!」
ニャヘマは慌ててノアの腕を引っ張る。
ノア「…離して欲しいな。」
ニャヘマ「ちょっとできない相談かも。」
ノア「彼は…理由なんて分からないけど、わざとこんなことをしてるんだ…。記憶が見れなかったのも…きっと…」
ニャヘマ「仮に話せる悪魔が居たとして、今まともに会話出来ると思う?」
ノア「…それは…」
ニャヘマ「分かってるでしょ?その目で見てきたんだから。」
ノア「でもこのままじゃ…」
(やっと、やっとまだまともな子に会えたのに…このままじゃ…彼は殺される。)
ニャヘマはノアの腕を離さない。
ニャヘマ「…無闇に動くだなんて、尊敬しないわ。」
ノア「…君にボクの気持ちがわかるわけ…」
ニャヘマ「分かるわけないでしょ。私がしたくて、してるの。じっとしてなさい。」
アリィ「…ええと…」
ニェヘマ「…ニェヘマ。」
アリィ「ニェヘマさん、手袋とか出せたりする?」
ニャヘマ「手袋?なんのために…」
アリィ「そりゃ手当のためだよ。薬は一瞬で出来るものじゃない。薬ができるまでの応急手当は立派な延命。でも傷口に素肌のまま、触れれば更に悪化して薬の完成までに間に合わないかもしれない。」
ニェヘマ「それくらい自分で出せないんですか。」
アリィ「私は物を作るのに向いてないの。」
ニェヘマ「はぁ…人目につかない所で作ってみます。」
アリィ「お願い。さて…」
アリィは腕に結び目の緩い、包帯を巻かれた患者を見下ろす。
アリィ(薬は作るのに時間がかかる…それまで持たせないといけない。…イリアが居たら、もっと早く治療が出来たんだろうけど…私に出来ることをやるだけ。)
アリィは緩くなっている包帯を改めて強く結び直す。
メシェネ「アリィお姉ちゃん、お鍋泡がいっぱい出てきたよ。」
メシェネは沸騰した鍋を指す。
アリィ「ありがとう。…えーと」
メシェネ「メシェネ!」
アリィ「ありがとうメシェネくん。…ん?メシュエネ…?」
メシェネ「そうなるよねー…この名前両親が適当に決めちゃったんだよ。次はどうしたらいい?」
アリィ「名前を適当って…ええとそのまま使うわけにいかないから、冷ましてくれると嬉しいな。」
メシェネ「俺の両親結構いい加減なヒト達でねー、メシュエネに憧れすぎてこんな名前付けられちゃったの。お湯は捨てて大丈夫?」
アリィ「それはまぁ…なんとも…あっうん。捨てて大丈夫。それは再利用も出来ないから。」
ネア「お花を煮るなんて不思議。」
アリィ「ある国では、お花をそのまま食べるとこもあるらしいよ。よいしょっ…と。そっちはどう?」
アリィは立ち上がり、ネアのところへ行く。
ネア「特に何も変わってないよ。」
アリィ「んー…温度が足りないか…。携帯暖火、使うかぁ。使い方分かる?」
ネア「うん!」
アリィ「じゃあお願い。本当は力技に出ても私はいいんだけど…メクチカの花なんか、そのまま使ったら貴方達ごとやられちゃうからなぁ。」
(…にしても…少しだけど…残しておいてよかった。)
ネア「でもこれなんのためにやるの?」
アリィ「それはそこそこ強めの麻酔みたいな効果があって…そのままだと皆眠っちゃうけど、正しく扱えば、鎮痛剤代わりにもなるんだよ。…えーと…全体的に感覚が鈍くなるって感じ。」
ニェヘマ「出来ました。…けど…」
アリィ「あっ、ありがとう。」
アリィはニェヘマが差し出した手袋を触る。
アリィ「つっっっっめたっっっっ…!!」
ニェヘマ「所詮は氷なので…」
アリィ「…やっぱり思ったんだけど…使い慣れてないでしょ。いつから…」
ニェヘマ「こんなにこの力を利用したのは、…今日が初めてです。」
アリィ「今日…」
ニェヘマ「…そんなに不格好ですか。」
ニェヘマはそう不満を口にする。
アリィ「いや、魔法に不格好とか格好とかないから。」
それをアリィは一刀両断する。
アリィ「初日でこれだなんて、むしろ才能の塊だね。」
ニェヘマ「…素直に喜べませんね。こればっかりは。」
アリィ「まぁまぁ。魔法はほとんどイメージだよ。技術なんていらない。最近思ったんだけど、要るのは情熱だけなんじゃないかな。」
ニェヘマ「随分抽象的なことを…」
アリィ「つまり貴方は自分が氷しか扱えないと思ってるってこと。氷から何か思いつくものは無い?」
ニェヘマ「…水ですかね。」
アリィ「でも水って、山や森に流れてる水は冷たいけれど、暖かい水もある。でしょ?」
ニェヘマ「はぁ…」
アリィ「氷を冷たいものと決めつけないで。貴方には暖かい氷だって柔らかい氷だって出せるはず。水がイメージできるんだから。そのまま水をイメージしてもいいかもね。」
ニェヘマ「水を…」
ニェヘマはアリィに1度返された手袋を手に持ち、目を閉じ考え込む。
ニェヘマ「…暖かい…?」
ニェヘマは目を開ける。そこには見た目の変わっていない手袋があった。
アリィ「成功したね!」
ニェヘマ「してるんですか?これ。確かに暖かいですけど…」
アリィ「それでいいの。これをんー…軽く15双は欲しいかも。」
ニェヘマ「じゅっ…!?やっぱり悪魔…」
アリィ「あーはいはい。もうそれでいいよ。」