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太一は白いベッドの上で目を覚ました。今日は新しい人生の門出となる日だ。カーテンの隙間から差し込む光でさえ、彼の不安を和らげてくれていた。
「お父さんとお母さんが殺される夢を見たんだ……」
そう言って溜息をつくと、背後から声が聞こえた。
「ただの夢よ。心配しないでね」
「そうだぞ。父さんたちが死ななわけないだろ」
母と父が慰めてくれて、安心してしまう。そんなことないだろうな。
そう思っていたが、太一が森に散策をして帰ってきた時。家の扉を開けると、廊下には肉の塊が落ちていた。それを前に進むと、両親の頭が机の上に乗っていた。首からは血が流れている。
「母さん!父さん!」
彼らの近くに行くと、部屋は真っ赤に染まっていた。悍ましい部屋に息を呑む。
父と母が殺されたことが信じられなくて、何度も顔を見た。やはり父と母で間違いない。
目から涙をこぼしていたら、後ろから大男が現れた。右手には血まみれの鉈を持っていて、太一に振り下ろしてきた。
何とか避けると、男は袋を見せてきた。そこには両親の内臓が入っていた。それがスイッチとなり、近くにあった剣で大男を切り刻む。
血が頬につき、彼は微笑みながら興奮していた。
気がついたらそこには大男のバラバラの死体があった。
肩を動かしながら洗い息を吐き、彼は人間に対する憎悪が増した。
『少年よ。人間が醜いか?ならば我々と共に、人間を根絶しようじゃないか』
血の中から現れた黒い影がそう囁く。それを拒む理由などない。太一は受け入れた。
すると額と胸に黒い模様が現れ、力がみなぎってきた。これならば人間を根絶し、モンスターだけの世界を作れる。
右手は触手のようになったが、関係ない。これで力を手に入れたのだから。
太一は新たな姿となった自分を見つめ直す時間を持とうとしていた。この異形の力をどう活用すればいいのか、具体的な戦略が必要だった。
まずはこの力について深く理解しなければならない。鏡の前で自分の手を観察する。
人間とは違う黒い肌。そして何より驚異的なのはその柔軟さだ。まるで別の生き物のように自在に形を変えることができる。
試しに右手を伸ばしてみると、それだけで数メートル先まで届いた。壁に触れることも容易であり、さらに細かい作業までこなせる精度も備わっている。この能力を使えば潜入任務などにも役立ちそうだ。
次に考えたのは攻撃手段だ。これまで使っていた剣とは別に、この異形の部分自体を武器として使う方法を考えなければならない。
太一は地下室へ降りて訓練場所へやってきた。そこで生成された黒い触手を使って、仮想敵との模擬戦闘を開始した。
「こんな風に使うのかな……」
彼は空中から急降下させて突き刺す動作から始める。その速度は並外れており、一瞬で対象物を貫通させる威力を持つことを確認した。しかし反応速度や正確性にも問題がある。
それでも慣れれば十分実用的な攻撃ができる。それ以外にもこの触手自体が、毒液や麻痺効果のある液体を分泌できる可能性もあるだろう。
練習と研究の末、彼はある程度自信を持てるレベルになった。ただ一つ懸念されていたことがあった。それは人間としての感情だ。この新しい姿や能力には代償がないわけではなかった。
彼が感じ始めていたのは冷酷無情とも言える感情。それが以前よりも強くなってきていることに気づき始めた。しかし、それでも構わないと思っていた。彼にとって優先すべきことはただ一つ――人間社会を破壊することなのだ。