テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
せっかくお互いのこと打ち明けたのに…っ
公園のベンチでの静かな会話、すごく沁みました。自分を責めながらも「写真」って言葉にした辰哉さんと、それを遮らずに全部聞いてから「ちゃんと言ってくれてありがとう」って返した照さんの距離感が、本当に丁寧で。一人で抱え込まないと約束し合った直後の異動の話には、心臓がぎゅっとなりました…。続きが気になります。
その日の夜。
辰哉は予定なんてなかった。
仕事を終えても、まっすぐ家には帰らず、公園のベンチに座っていた。
街灯の明かりだけが静かに足元を照らしている。
スマホが震えた。
💛「終わった。今から帰る」
続けてもう一件。
💛「辰哉、本当に予定だった?」
画面を見つめたまま、返事が打てない。
心配させたくない。
でも、自分の気持ちも整理できていない。
結局、
💜「うん」
とだけ返した。
────────
十分後。
足音が近付く。
「やっぱり」
聞き慣れた声だった。
辰哉が顔を上げる。
照が少し息を切らして立っていた。
💜「……なんで」
💛「予定ないと思ったから」
💜「……」
💛「当たってた」
辰哉は観念したように苦笑した。
💜「鋭すぎ」
照は隣に座る。
少し距離を空けて。
無理に近付こうとはしなかった。
────────
しばらく沈黙が続く。
先に口を開いたのは照だった。
💛「何かあった?」
💜「……」
💛「仕事?」
辰哉は首を横に振る。
💛「じゃあ俺?」
その言葉に、辰哉の肩が小さく揺れた。
照はそれを見逃さなかった。
💛「やっぱり」
💜「違う」
💛「違わない」
辰哉は小さくため息をつく。
💜「……写真」
💛「写真?」
💜「昨日の集合写真」
照は数秒考えて、すぐに思い出した。
💛「ああ」
💜「隣にいた人」
💜「仲良さそうだった」
言った瞬間。
辰哉は俯いた。
💜「ごめん」
💜「こんなの言うつもりじゃなかった」
💜「仕事だって分かってるのに」
💜「勝手に不安になって」
💜「五年前のこと思い出して」
💜「また同じになるんじゃないかって……」
声が少し震える。
照は静かに聞いていた。
最後まで、一度も遮らずに。
────────
話し終えると、照はゆっくり息を吐いた。
💛「ちゃんと言ってくれてありがとう」
辰哉は顔を上げる。
責められると思っていた。
でも照は優しく笑っていた。
💛「あの人は本社のチームリーダー」
💛「仕事で組んでるだけ」
💛「昨日も会議のあとに写真撮ろうって言われて並んだだけ」
辰哉は静かに頷く。
💛「でも」
照は真っ直ぐ辰哉を見る。
💛「説明しなかった俺も悪い」
💜「そんなこと…」
💛「五年前」
💛「“言わなくても分かる”って思って失敗した」
💛「だから今回は違う」
照は少し照れたように笑う。
💛「何でも話すって約束しただろ」
辰哉の目に涙が滲む。
💜「……うん」
💛「だから辰哉も」
💛「一人で抱え込むな」
💛「嫉妬したなら嫉妬したって言って」
💛「不安なら不安だって言って」
💛「俺はちゃんと聞くから」
辰哉は笑いながら涙を拭いた。
💜「……かっこつけようとしてた」
💜「大人なんだから平気って」
💛「平気じゃなかった?」
💜「全然」
二人とも思わず笑ってしまう。
────────
立ち上がると、夜風が二人の間を吹き抜けた。
照が辰哉の方へ手を差し出す。
💛「帰ろう」
辰哉はその手を見つめる。
そして、迷わず握った。
💜「うん」
歩き始めた、その時。
照のスマホが鳴る。
画面を見ると、本社の上司からだった。
照の表情が少しだけ引き締まる。
電話に出る。
💛「はい、岩崎です」
数秒後。
照の表情が変わった。
💛「……え?」
辰哉も思わず足を止める。
電話を切った照は、ゆっくり辰哉を見る。
💜「どうした?」
照は少し言いにくそうに口を開いた。
💛「本社勤務」
💛「三か月じゃなくなった」
辰哉の鼓動が大きく鳴る。
💛「正式な辞令が出るかもしれない」
💛「期間未定で、本社へ異動になる可能性があるって……」
さっき取り戻した安心が、一瞬で揺らぎ始めた。
ゆんしょ
6,443
2,639