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「あーあ……」
「何、どうしたの?」
給料日後ということもあって、会社近くの「ひらみぱん」で同僚の寿とランチをしていた。
野菜が山盛りで、見た目だけは健康的。
でも、私の胸がいっぱいになっているのは、野菜のせいじゃない。
「瑠璃、まだ奈良と連絡、取れてないの?」
「うん……」
「LINEは?」
「既読にならない」
「電話は?」
「繋がらない」
寿は何か言いかけた顔をしたけれど、結局口をつぐんで、フォークとナイフでポーチドエッグに切り目を入れた。
黄身がとろりと流れ出し、皿の上でだらだらと広がっていく。
それを見ているだけで、なんだか胸がざわついた。
「あれじゃない?」
「どれ?」
「奈良、携帯電話料金、滞納してるんじゃない?」
「あ……あったね、そんなこと」
「ね?」
「でも、何だか気になるんだよね……」
私はライ麦パンに挟まった生ハムとチェダーチーズ、ピクルスを前歯で引きちぎりながら、意味のない不快感を一緒に飲み込んだ。
味はちゃんと美味しいはずなのに、喉を通るのが重い。
「なら、行けば?」
「どこに?」
「アホか。行くって言ったら富山に決まってるでしょ」
「あ……うん」
「あぁ、じゃなくて!」
寿はため息をつきながらフォークを置いた。
「まぁ、私も富山支社の知り合いにちょっと探りを入れてみるわ」
「なんの……?」
「はぁ……つくづくあんたはおめでたいわね!」
「めでたくもないわよ……」
「う・わ・き・よ! 浮気!」
「浮気ぃ……建はそんな人じゃないよぉ」
「ダメだこりゃ」
寿は呆れたように笑ったけれど、私は笑えなかった。
気分は、朝からずっと下降線のまま。
天気予報も同じく下降線で、退勤時間には大粒の雨がアスファルトを激しく叩きつけていた。