テラーノベル
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終演後、楽屋口の近くで光が出てくるのを待った。
数人のファンと笑顔で握手をしている光を見て、なんだか急に「隣人」としての距離が遠くなった気がして、少しだけ胸がざわついた。
「あ、お姉さん。マジで来てんじゃん」
私に気づいた光が、ひらひらと手を振って近寄ってくる。
近くで見ると、あいつの額にはまだ汗が滲んでいた。
「……千円、返しに来ただけ。あと、ネタの苦情。カブトムシはひどすぎるでしょ」
「ははっ、似合ってたよ。でもお姉さん、さっきめちゃくちゃ笑ってたでしょ。後ろまで聞こえたよ」
「……笑ってないし」
「嘘つけ。顔、真っ赤だぞ」
光は私の様子を見てニヤニヤしながら、手渡した千円札を無造作にポケットに突っ込んだ。
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