朝目が覚めると包丁の音がした。珍しく誰かが早起きでもしたのかと思ってワクワクしながらキッチンのドアを開けると
クローバー「おはようございます、ビショップさん。今日は昨日よりも天気が良いそうですよ。」
ビショップ「、、、そっか。」
昨日、俺が連れてきたんだっけ。てか作れることできたのか。思わず近くに寄った。
ビショップ「、、おはよう」
クローバー「はい。おはようございます。あと少しで出来上がるのでもう少しお待ちください。」
ビショップ「そしたらここにいるよ」
クローバー「分かりました。」
そういえばこの子の過去を聞いていない。なぜあそこにいたのか。泥棒が入ってきてなぜ恐ろしく思わず平然といれたのか。気になって仕方ない。
クローバー「私のことが気になりますか?」
ビショップ「え」
クローバー「まだおふたりが起きていらっしゃらないし、私は空いてないのでビショップさんが良ければお話いたしますよ。」
ビショップ「えっあぁじゃぁ、、」
普通こういうのって自分から話すものじゃないんじゃないのかって思ったけどまぁいいか。
私の本名は【アーサー.クローバー】といいます。父がカナダ人、母が日系のアメリカ人でアメリカ生まれ日本育ちです。父は株式会社フォレストという会社を運営しており、私は恵まれた環境で育っていました。ですが、私が5歳のときのことです。
クローバー「母様!私、今日蝶々を見つけたんです!だから折り紙に折って母様に、、」
母「そう、いいものを見れたのね。優しい子ねクローバー。」
クローバー「んふふ、」
母様は病気を持っていました。決して伝染る訳ではないのですが、遺伝性かもしれないといわれ私も外に出ることはしょっちゅうなく、先生が家に来訪していました。
父「クローバー。もうすぐ寝る時間だ」
クローバー「えぇー」
母「ふふ。クローバーおいで」
クローバー「はぁい!」
母様の頭をなでるあの優しい手が好きでした。
あの優しいお声が大好きでした。
父「母様ばかりしてずるいな、父様にもやらせろっ!」
クローバー「きゃああ!!」
母「あはは、苦しいですよ父様。」
父様の包み込んでくれるあの大きな手が好きでした。
あのにこやかな顔が大好きでした。
ですがその晩
クローバー「、、、母様?」
父「レース、、レース、、!!!なぜ私を置いていったのだ、、レース、!!!」
母様は眠るように息を引き取られました。
私と父様がお部屋を出て僅か30分のことです。
最後のあのなでてくれた手は最後の力だったのかもしれませんでした。
そこから、父様は感情を失い母様とともに創業した会社を残すのに必死になっていました。
毎朝食卓は一緒だったのが別々になり、何時間かある勉強のときには必ず様子を見に来てくれていましたがそれもさっぱり。
晩、寝る前に頭をなでてくれたのももう顔を見ることすらもなくなりました。
最後に顔を見たのは私が別邸に1人っきりになったときです。かれこれもう5年前になるでしょうか。
父「クローバー。私は仕事だ。母様が残したこの会社を私は残さなければならない。それまで私は家を出るからその間、お前がこの家を守ってくれ。」
クローバー「はい。かしこまりました。」
使用人をほぼ全員連れてゆき移動手段も徒歩しかないような山の中に置いていく。
これは言葉に出さないだけで意味はうっすらと分かりました。
【お前はもういらない。ここで孤独になって誰からも忘れ去られてくれ。】
そういう意味だろうと私は感じました。
乳母も私と目を合わせることなく故郷に帰ってゆき他の使用人も私と手を交わすこともせず、父と共に去ってゆきました。
私は母様と同じで時が経つにつれ体が弱くなっていくのを知っています。元から弱かったのですが、父が去るほんの少し前にそれが悪化しました。そこからは近所の方が不憫に思ってかなりの頻度で来てくれたので助かりました。
ですがいつまでも過去の栄光にすがり私だけが助けてもらう訳にも行きません。そう思い荷造りをしようとしていた時、貴方が家へ来てくれました。あの時の感情はどう表せばいいのでしょうか。
ビショップ「、、ふーん。そっかぁ」
クローバー「ご気分、悪くしましたでしょうか?申し訳ございません。朝ごはんの用意を、」
ビショップ「いや、大丈夫。」
思わず立とうとした彼女の手を握ってしまった。彼女も顔が赤く染まり始めた。
ビショップ「君は帰りたいと思う?父に会いたい?」
クローバー「、、私は、」
ここでなんと返されるだろう。別に帰りたいと言ってくれてもいい。怪盗だからここの居場所をバラされてもすぐに移動する準備は出来ている。でも、なにかが心の中で引っかかって握っているこの手を離したくない。
クローバー「私は、ここにいてもいいんですか?私は、ここにいたいです。」
ホッ
ん?ホッ?なんでだ?
オセロ「んぉいー、話終わった?」
松五郎「腹減ったよォクローバーちゃーん」
クローバー「あっ、はい!すぐに用意しますね」
ビショップ「あっ」
握っていた手を振り放されてしまった
オセロ「あたしも手伝うねクローバー。」
クローバー「はい!でしたらあの鍋に入っているものをここの器に、、」
オセロ「やだ!めっちゃ美味しそう!クローバーすぐお嫁に行けちゃうじゃん!」
クローバー「へっ」
松五郎「ビショップ!」
ビショップ「うへっ」
松五郎が勢いよくビショップの肩に飛びついた
松五郎「クローバーちゃんはさ、これからここの家政婦として働いてもらうことになったんだわ。だから隣町にも買い出しに行くだろうし店にも気分転換に行くだろうよ。んで隣町には最近開業したばっかのカントリー系服屋があんぞ」
ビショップ「だから?」
松五郎「まっ狙うならお早めにって感じだよなぁ。クローバーちゃーん俺もなんかするよぉ」
ビショップ「、、え?」
なにを言っているんだろう松五郎は。
ビショップ「まっいいか。クローバーさん。俺も手伝うよ」
クローバー「はっはい。」
ビショップが器に盛っているなか、クローバーの耳はうっすらと赤色に染まりその様子はオセロと松五郎にしっかりとみられているのであった。
4人の住む家は孤島です。怪盗だからと配慮して町からも離れた場所にこじんまりとした家を建てており、隣町には徒歩30分ほどかかります。ちなみに病院はひとつしかなくそこも手術が出来ないようなところなので大きい病院へ行くには船で40分ほどです。交番は2つあります。
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