テラーノベル
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💚side
朝、目を覚ますと、翔太からメッセージが届いていた。
そこには
💙『水族館、行けなくなった。ごめん』
の一文。そして、謝るキャラクターのスタンプ。今週、一番楽しみにしていた予定が突然キャンセルになって、内心、ものすごく落ち込んだ。
落ち込んだけど、行けなくなった理由は書いてないし、何か急な予定でも入ったのだろうと、俺は気を取り直して返信した。
💚『残念。また誘うね』
しばらく画面を見つめていたが、既読は付かない。大きくため息を吐き、重たい体を引き摺るようにして起き上がった。
今日一日、暗い気分で過ごすのだけはやめよう。せめて、普通に。いや、寧ろ明るめに。
そう思い、そのためにはまずシャワーを浴びようと、バスルームへと向かった。
熱いシャワーで幾分、頭がシャキッとし、髪を乾かし、整えると仕事へと向かう。
今日はグループでダンスレッスンからの番組収録。一日中グループ仕事しかないから気が楽だ。それに翔太に会えるから単純に嬉しい。顔を見たら、全然気にしてないよって直接言おう。翔太の心の負担にならないように。用意しておいた水族館のチケットは、欲しがる人がいたら、誰かメンバーにあげればいい。無駄にするのももったいない。
移動車の中で、自分たちの曲を聴きながら、目を閉じる。翔太の綺麗な歌声が耳に心地よかった。いつか、翔太の歌が本当に好きだよって直接本人に言ってやりたい。きっと翔太のことだ、恥ずかしがって照れて、それでもすごく嬉しそうにするんだろう。愛しい人のそういう反応を想像するだけで幸せだった。温かい気持ちが胸に流れ込んでくる。俺は翔太が大好きだ。翔太に気軽に会える日常に感謝しかない。
💚「おはよー」
🩷「おっちー」
控え室にはほとんどみんなが揃っていた。真っ先に目で目的の人を探すが、翔太の姿はない。まだ来ていないようだった。
ストレッチを始めると、間も無くして、翔太が目黒と一緒に現れた。2人、一緒なんて珍しいなと思っていると、翔太と目が合い、手を振ろうとしたら目を逸らされた。
💚「………?」
なんだか元気がない気がする。
気のせいだといいけど。翔太、頭痛持ちだし、身体がそこまで強くないから、体調でも悪いのかもしれない。そんなふうに心配したところへ照の号令でレッスンが始まった。
🖤side
昨夜はしょっぴーを手に入れて、最高の気分だったけど、今日がグループ仕事だったことをすっかり忘れていた。自分の心に余裕がなく、先々のスケジュールの確認まで気が回らなかった。
阿部ちゃんがしょっぴーを見て、しょっぴーがその目を逸らす。2人の関係が一夜にして変わってしまったことにほんの少し胸が痛んだ。でも、悲しむ資格は俺にはない。このまま、突き進むしかないのだから。
昨夜のしょっぴーは本当に可愛かった。
しょっぴーには内緒で、鎖骨の下、見えるか見えないかギリギリのところに俺の印を残した。白い肌にうっすら浮いた赤い印は、着替えでもしないと見えないはずだ。自己満足でもいい、しょっぴーの身体に持ち主の刻印を残しておきたかった。
朝目を覚ますと、しょっぴーは先に起きており、携帯を弄っていた。何かを打った後で画面を伏せ、そのままシャワーを浴びに行った。俺が後ろからそれを見ていることには気づいていなかった。悪い誘惑が頭に浮かぶが、流石に携帯に触るのはやめた。去り際に見えた横顔がなんだかとても苦しそうに見えたから。これ以上、卑怯な真似はしたくないと思った。
最低最悪のことをしている。
もちろんその自覚はある。この後、阿部ちゃんにどんな顔で接したらいいのかもわからない。このことを阿部ちゃんに言うべきかもわからない。しょっぴーは何も知らない。俺だけが2人の気持ちを知っていて、わざとすれ違わせた。
胸が苦しい。
それでも今さら止めるわけにはいかないから、残された選択肢はひとつ。しょっぴーをこっちへ振り向かせるしかない。脱衣所の扉の前で立っていると、やがてシャワーの音が止み、しょっぴーが出てくる気配がした。俺は弾けるように動き出し、朝食の支度に取り掛かった。
コメント
6件
本当は両思いだったしょっぴーとあべちゃんの2人はこのままなのかな? 少し切なくなりました😥
テラー書き始めた当初から小説上手く書けないってずっと悩んでて、それでも書きたいものを形にしたくて泥を捏ねるように文章に興してます。誰かの心に届きますように。コメント、返せてなくてごめんなさい。いつも励みになってます🙇♂️