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白山小梅
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『柊って毎回余力残してるよね?そういうの、なんか、ずるい』
『余力……?そうかな、普通じゃね?』
『普通じゃない。ちょっと妬いてくれてもバチはあたらないよ?』
『なるほど。ほとりちゃんは俺に妬いて欲しいんだ』
『そういうこと』
『絶対いや』
『はああん!?!?』
柊 碧音という男は、あたしに対してヤキモチを抱くつもりはないらしい。
AM10:00
待ちあわせで有名なこのスポットは、休日のこの時間、当たり前に賑わっている。
ブランド物のバッグ(密かに憧れているもの)を身につけた大人なお姉さん、量産系の可愛い格好の女の子、休日出勤なのかスーツ姿のおじさん。
デートだろうか、それとも友達と遊ぶの?
目的は多種多様にあるけれど、この場所に来たあたしの目的も、もちろん待ち合わせである。
今日の予定は、何を隠そう、デート。
デート…………………だってさ。
自分の独白によって頬に熱が通う。それも一瞬で。
柊とは今まで夜に会うことばかりだったから、こうして白昼堂々と待ち合わせするのは初めてだ。
それに一応……ううん、まぎれもなく、柊はあたしのカレシ、だし。
しかも、今日はいわゆる初デートってやつ。そりゃあ、あたしでも舞い上がるものです。
──『そういえばナイトプールのチケット、今週末までなんだけどどうする』
『行く!行きたい!』
気怠い柊を押しのける勢いで、あたしは思い切り食いついた。時効だと思い込んでいたプールが戻ってきたのだから、そりゃあ食い気味にもなるわ。
『ていうか、水着は?』
『あ……持ってない』
というわけで、時間も無いので買い物デートとプールは同じ日に詰め込むことに。今日は水着を買うことが第一ミッション。そのあと、プールっていうタイムスケジュールだ。……楽しみ。
きょろきょろと辺りを見渡せば、あたしの瞳はある人物を捉えた。……柊だ。
待ち合わせ場所に、きちんと柊が居る。それだけであたしの幸せ指数は爆上がりなので、幸せってなかなかお安いものらしい。
あの人、誰を待ってると思います?あたしです!ここに居るんです!って、すれ違う人全員に声をかけないだけいいと思う。高校の頃だったら人目もはばからず、やっていただろう。
自制できるだけ、あたしは大人になれている。
深いブルーのTシャツ、それから白のルーズシルエットパンツっていう柊らしいシンプルなコーディネート。でも、柊のすらっとした長身と端正な顔立ちのおかげでかなり様になっている。
立っているだけなのに、撮影中のモデルみたいだって思っちゃうくらい、あたしの目は柊贔屓がひどい。
でも、柊がかっこいいのがずるいよね?ってことで全部許してもらえると思う。ね、芽依子ちゃん。
脳内で芽依が『おっけー』なんてグーサインを出した気がするから、OKということにする。
正真正銘の柊は、あたしがまだ来ないと確信しているのか、スマホに視線を向けている。この位置では確認できないけれど、両方の耳はイヤホンで塞がられているはずだ。
……ていうか、薄々気付いていたけれど、来るの早くない?
ちなみに、今日の待ち合わせ時間は10時半。昨日の夜、電話で可決された。
柊は10時が良いと言い張ったけれど、朝に弱い男が何言ってんの、と11時を推したあたしによる泥仕合は、間をとってこの時間となった。
ただ、あたしを待たせたくないって柊の言葉を検証する必要があるので、半信半疑で30分前に到着したのに、もう居るってどういうわけ??