僕のお気に入りの場所は、地面に暖かな草が遠くまで生い茂っていて、1人で綺麗な夜空を見上げられるところ。
僕はいつもその場所で冷たい風をゆっくり浴びながら、眠りにつくように目を閉じる。
寝る態勢でも、起きている態勢でも元気が溢れ出てくる。
だから、明日の旅を頑張ろうと思うことができる。
★ ★ ★
今日もカトは伸びをしながら起き上がった。
朝の冷たく心地いい風の匂いを嗅ぎながら、昨晩に見た夜空を思い出した。
無風だったものの、星は満開の花のようにキラキラと輝いていて、月はカトを見守るように優しく光を放っていた。
「また綺麗な夜空見れるかな?」
いつもいつも夜空が綺麗なわけではない。
髪が乱れるほどに風が強いときもあれば、雷が鳴り響くときもあり、曇って月さえも見えなくなるときがある。
その度にカトは暗い顔をするのだった。
1週間も綺麗な夜空が見れなかったときには
「もう何もしたくない。」という言葉だけを言い続けた。
それほどに夜空が好きなのだ。
カトはいつも通り旅の続きを始めた。
町を出て、森へと続く細い道をどんどんと進んで行った。
すると、大きなカバンを抱えて汗を流しながら必死に歩いている郵便配達員がいた。
郵便配達員はカトの目を見ると、急いでカバンの中をあさって何かを探し始めた。
カトが郵便配達員から通り過ぎようとした瞬間、郵便配達員は
「バッ」と一つの封筒を取り出し、
「カトさぁん!」とカトを引き留めた。
話したくないな・・・。
カトは少しめんどくさかったが、郵便配達員の方を振り向いた。
「カトさん宛ての招待状です。えっと、トゼラ様からです。」
郵便配達員は新人のようで、少し慣れていないようにぎこちなく言った。
「トゼラ?誰?」
「トゼラ様は宝石店の社長で、権力者だとか気に入った人としか仲良くしないことで有名な人ですよ。」
「へぇ。」
何の招待状なんだろ。
興味のないことだったら絶対に行きたくないな・・・めんどくさいし。
カトは
「ビリリ」と封筒を破いた。
「それじゃ、僕は仕事に戻りますね。」
中には水色の厚紙が1枚入っていた。
★ ★ ★
カト様
1週間後の6月4日から5日までの一晩にパライダで行う、「流星群観覧会」があります。いつも夜空のために旅をしているとお聞きしましたので、あなた様をご招待致します。
4日の昼頃までにパライダのシャドア商会に集まり次第、会場でみなさんといろんなお話をしながら流星群を待つ予定です。
カト様のご来場お待ちしております。
★ ★ ★
カトにとっては「行かない」という選択肢は絶対にないと言っていいほどにいい話だった。
ただ、カトがいるドリイスからパライダはとても遠いことが問題だった。
徒歩で行けば5日ほどで着くものの、カトには全く体力がなく、順調に行くことができたとしても、7日はかかる。
どうしよ・・・行きたいけど、徒歩では行けない・・・。
徒歩以外でどう行こう・・・。
カトは考えたが、何もいい案は浮かばなかったため、とにかく徒歩でパライダまで進めるだけ進み、途中に馬車か何かに乗ってパライダに着けばいいと思った。
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