※注意※
・研磨×黒尾→黒尾×研磨のお話です
・告白の一歩手前で終わります
・口調迷子の可能性有り
・一話完結です
それでも良ければどうぞ!
孤爪→「」
黒尾→『』
灰羽→[]
夜久→〈〉
研黒研 / 檻を破って
__________
孤爪side.
俺には”幼馴染”がいる。
年は俺より一個上で、音駒バレー部の主将をしている。
ちょっと厨二病なところもあるけど、意外と頼りになるし、俺にバレーを教えてくれた人。
俺は今、そんな幼馴染に片思いをしている。
この気持ちを、クロにはまだ伝えてない。
…いや、伝える気もない。
だって、この”幼馴染”という関係に縋っていた方がずっと楽だから。
『研磨〜、朝だぞー!』
「…ぁと一日だけ」
『一日って…笑』
『研磨さんよぉ…早くしないと朝練遅れちゃいますよー笑』
朝。
クロはいつも俺を起こしに来てくれて、そのまま一緒に登校する。
正直まだ寝ていたいけど、俺は重い身体を上げて準備を始めた。
『なぁ、研磨さん知ってる?』
『キスをする場所にも意味があるらしいよ』
「…はぁ」
『興味ない感じね』
「まぁ…と言うかある方が珍しいんじゃない?」
『…ちなみに、頭とか髪にするキスは思慕…まぁ、相手を愛おしく思ったり、好きが溢れた時にするらしい』
「…へぇ」
「…で、クロはする人でもいるの?」
『いると思います?』
「思わない」
『ん〜…まぁいいや』
「何それ」
『あ、そーいえば耳にするキスの意味は誘惑なんだって』
「…俺、先に行くね」
『え、ちょ、研磨さーん!?』
俺の準備が終われば、二人で家を出て、電車に乗って、歩いて、学校に着いたら部室に寄って、それから体育館へ向かう。
そして、帰りはこれの反対。
これが長いようで短い、俺とクロが二人きりでいられる時間。
『おーい、研磨?』
「…何?」
『いや…早く体育館行くぞ』
「…うん」
この時間が終わるのは嫌だけど、それと同時に少しだけ安心する。
必要最低限の会話でも、お互いを信頼しているからこそ、対立せずに成り立つこの関係。
俺は人と話すのが得意じゃないから、この感じが丁度良い。
注目されるのも嫌い。
疲れるのも嫌い。
でも、最近はみんなとやるバレーが楽しい。
烏野にいる翔陽はずっと面白いし、それをどうやって攻略するかを考えるのも面白い。
ずっとずっと俺の中になかった感情。
これも全部、クロが俺にバレーを教えてくれたから。
俺たちは部室を後にし、体育館へと足を踏み入れる。
そこから広がる景色は、いつも通りのバレーコート。
もう既にネットは張ってあって、部員のほとんどが集まっている。
『…やっくん、リエーフは?』
〈それがまだ来てねーんだよな…〉
〈一年は早く来いって言ってんのに…〉
リエーフ、また遅刻かな。
そんなことを思っていたら、勢い良く体育館の扉が開いた。
[皆さん、おはざーっす!!]
『はい、リエーフ遅刻でーす』
〈レシーブ練追加だからな!〉
[ええっ?!]
[夜久さんっ!それは酷いですってぇ〜!!]
「…はぁ」
俺は呆れて、体育館の壁を背に座りこんだ。
そして、携帯ゲームを開こうと…
『研磨さん?』
「……な、何?」
…したところをクロに止められた。
『ゲームは部活以外の時間でやって下さいね?』
「…うん」
部活中じゃなかったらやって良いんだ…。
『…あ、授業中とかもダメだからな?』
「分かってるよ…」
『いーや、今絶対 部活中じゃなかったらやって良いんだ… とか思ってたでしょ!?』
「…思ってない」
『絶対思ってた』
「思ってないってば」
『思ってたでしょ』
「思ってない」
『いーや、思ってたね』
クロは気付いてないと言うか、気にしてないだけだと思うけど…
今、俺たちすっごい距離近いよ。
そう、俺が上を向けばクロの顔がすぐ目の前にくるくらいには。
…俺顔赤くなってないかな?
て言うか、なんでクロはこの距離でいてそんな平常心でいられるの?
なんか無性にイライラしてきたんだけど。
俺はクロのことがやっぱり好きで、どうしても意識しちゃうのに。
…あ、そうだ。
俺が顔を上げちゃえば良いんだ。
それでクロの顔が赤くなれば、俺は脈アリ。
まぁ、赤くならなくても少しは意識してくれるはず。
俺はすぐにそれを実行した。
「思ってないって言ってるじゃん」
『うおっ、急に顔上げないでもらってもいーですか…』
「……え」
クロの顔、すっごく赤い。
これって俺脈アリだよね…?
…どーせならちょっとからかってみよ。
そう考えた俺は、携帯ゲームを手から離し、クロの顔を両手で包み込んでみた。
『…な、何してるんですか研磨さん』
「別に」
『別にって何?!』
「はぁ…クロうるさい」
『…研磨…顔赤くない?』
もう、ちょっとクロをからかってみようとしただけなのに…
…なんで俺まで照れてんの?
はぁ…心臓うるさすぎ。
「…クロの勘違いじゃない?」
「ていうか、クロも顔赤いよ」
『いやまぁ、それは…』
『…な、なぁ、研磨?』
「え、何…?」
『ずっと言いたいと思ってたんだけど…』
何だろう?…告白?
いや、クロに限ってそんなことはないか…。
それに、告白するなら俺からでしょ。
じゃあ何?
練習始めるとかそーいうの?
…ていうか、そこで黙んないでよ。
普通に気になるんだけど。
「…何?」
『…俺、結構ガチで研磨のことが』
[黒尾さーん!研磨さーん!れ・ん・しゅ・う!始めましょうよー!]
〈おい、リエーフ!!今、俺たちの主将が頑張ってる大事なとこだろ!?〉
〈何、割り込んでんだよ!?〉
[ええっ!?そーなんですか!?]
[すいませ〜んっ!俺のことは気にせず続けてもらって良いですよ!]
〈…はぁ、ごめんな黒尾〉
『いやまぁ…やっくんのせいじゃないし…』
「で、結局なんて言おうとしてたの?」
やっぱり告白だと思うけど、自意識過剰みたいでなんかやだな…。
…俺、クロと両思いだったんだ。
これからはもう、俺たちはただの幼馴染じゃいられなくなるのかな…。
まぁ、俺は大歓迎だけど…。
『…ま、まぁ、またいつか言うよ』
『おーい、お前ら!練習始めんぞー!』
「いつかっていつ…」
『…はぁ、ちょっとだけ許してくださいねー』
そう言ってクロは俺の髪に優しい口付けをした。
「……はっ?」
『んじゃ、練習行きましょ』
「え、いや…」
『…まぁ、そーゆーことだから』
最悪…俺、今絶対顔赤い。
ていうか何で髪?…って、そーいえばクロが朝言ってたな。
確か…頭や髪にするキスは思慕。
相手を愛おしく思ったり、好きが溢れた時にするキス…。
「…クロのばか」
俺たちが結ばれる未来は、そう遠くないのかもしれない。
“幼馴染”という檻を破って。
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