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鋼谷は冷や汗をかきながらも、無数の霊体の襲撃に立ち向かっていた。彼の周りには、カラグの暗い力によって呼び出された怨念たちが渦巻き、彼の体力を徐々に削っていく。鉄鎖を操る手は次第に重くなり、彼の視界は霞んでいった。
「くそ…これほどの数とは…!」
鋼谷は一瞬の隙を突いて、鉄鎖を振るう。霊体に向かって鋭い一撃を放つが、次から次へと新たな霊体が押し寄せてきて、彼の攻撃は無力感を増すばかりだ。彼の心の奥底で不安が膨らんでいく。
「こんなところで…倒れるわけにはいかない…!」
その時、鋼谷は胸の奥から湧き上がる力を感じた。彼の異能、「鉄鎖」の力が、彼自身を奮い立たせていた。鋼谷は意を決して、周囲の霊体に向かって全力を振り絞った。
「お前たちに負ける気はない!」
彼は鉄鎖を振りかざし、周囲の霊体を一掃しようとする。しかし、その瞬間、カラグの声が鋼谷の耳に響いた。
「無駄だ、鋼谷。お前の力は、もう限界だ」
カラグの冷笑に鋼谷は怒りを覚える。しかし、彼の体は徐々に衰え、力が入らなくなってきていた。周囲の霊体がさらに増えていき、鋼谷は彼らの包囲網に飲み込まれそうになる。
「このままでは…!」
鋼谷はもがきながらも、必死に逃れようとする。しかし、霊体は彼の身体に絡みつき、次第にその力を奪っていく。彼の意識は薄れ、視界が暗くなる。耳元にはカラグの笑い声が響いていた。
「お前はもう終わりだ。怨念に飲み込まれ、消え去るのだ」
鋼谷は恐怖に襲われ、力尽きかけたその時、彼の心の中で声が響いた。彼を支えてくれる存在、彼の師匠や仲間たちの声が。かつての教えや思い出が、彼を奮い立たせる。
「まだ…終わっていない!」
鋼谷は必死に意識を保ち、心の中に宿るその声に従った。彼はもう一度、鉄鎖に集中し、自らの異能に呼びかける。
「来い、鉄鎖よ!俺を助けてくれ!」
彼の呼びかけに応じるように、鉄鎖が再び輝きを放ち始めた。その光は周囲の霊体を飲み込み、鋼谷の身体に新たな力を与えていく。彼は再び立ち上がると、目の前に広がる暗闇を力強く見据えた。
「これで終わりだ、カラグ!」
鋼谷は新たな決意を胸に、鉄鎖を一振りした。光の軌跡を描きながら、霊体を切り裂くその姿は、まるで戦士のように美しかった。周囲の霊体が一瞬怯み、鋼谷はその隙を逃さず攻撃を続ける。
「俺の力を見せてやる!」
鋼谷の声は、彼自身の力だけでなく、仲間たちの意志をも背負った響きだった。霊体は彼の力の前に崩れ去り、彼の身体も少しずつ軽くなっていく。
だが、カラグはまだ余裕を崩さず、冷たい笑みを浮かべている。「いい気になるな、鋼谷。お前の力は一時的なものだ」
鋼谷はその言葉を無視し、心の中に燃える情熱を感じ続けた。彼は鉄鎖を振り続け、周囲の霊体を払いのけていく。自らの意志が次第に強まると共に、彼は冷静に戦況を見つめる。
「終わらせない!」
彼は息を整えながら、最後の力を振り絞った。次の瞬間、鋼谷の鉄鎖が輝き、その光が彼の周囲の霊体を取り込んでいく。彼の心の中に宿る力は、すべての怨念を打ち砕くほどの強さを持っていた。
「これが俺の力だ!」
鋼谷は叫びながら、最後の一撃を放った。その瞬間、彼の周囲に光の柱が立ち上り、霊体が一斉に消え去る。鋼谷の目の前には、再び静寂が訪れた。
「終わったのか?」
彼は疲れきった身体を支えながら、ふらりと立ち尽くしていた。だが、心の中には確かな勝利感が宿っていた。これが彼の新たな始まりであることを、彼は確信していた。