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竜之介くんのご両親に会わせて欲しいとお願いしてから数日後、


「亜子さん、うちの親が来週の土曜日なら時間取れるって言ってるんだけど……どうかな?」


私との事を解ってもらう為に連日のように実家へ通い続けていた竜之介くんから『来週の土曜日なら時間が取れる』という話を聞いた私は迷わず、


「それじゃあ、その日にお願い出来るかな?」


時間を作ってもらうよう言った。


「……分かった。それじゃあ伝えておく。それで……その時、凜はどうしようか? 流石に話し合いの場に連れてく訳にはいかないよね」

「それなら大丈夫。保育園は土曜日もやってるから、その日はお願いする。まあ、凜はきっと土曜日に保育園に行くなんて嫌がると思うけどね」


大切な話し合いの場に子供の凜を連れて行く訳にはいかないので、その日だけは保育園で預かってもらうことを決めたのだけど……話し合いの前日、私の思った通り、凜は明日の土曜日に保育園へ行く事を嫌がって泣き出した。


「やだ! あしたはほいくえん、いかない日だもん!」


普段私の仕事が土日休みでこれまでも土日は保育園に行かなかったから凜の言い分は分かる。


だけど、明日はどうしても凜を連れて行く訳にはいかないから、何とかして納得してもらおうと話をしていく。


「あのね、大切な用事があるの」

「いっしょにいく!」

「それは出来ないの。分かってよ、凜」

「やだぁ……」


いくら話をしたところで、まだ幼い凜には分からないだろう。


どう話せば分かってくれるのか途方に暮れていると、


「凜、明日頑張って保育園行ったら、日曜日は良い事があるよ」


つい今しがたまで何処かへ電話をしていた竜之介くんがリビングへ戻って来ると、泣いて駄々をこねる凜に向かってそう口にした。


「いいこと? なに?」

「それは今は言えない。明日頑張って保育園に行ったら教えるよ」


竜之介くんの言う『良い事』というのが気になった凜が何かを尋ねるも『今は言えない』という答えが返ってくる。


そんな竜之介くんの言葉を聞いた凜は悩みだす。


そして、


「……ほいくえん、いく」


悩みに悩んだ後、凜は自ら保育園へ行くと言ってくれたのだ。



凜が自ら進んで保育園へ行ってくれる事になって翌日は問題無く凜を保育園へ送り届けた私たちは約束の時間よりも少し早めに着けるよう、竜之介くんの運転する車で彼の実家へと向かった。


そして、


「初めまして、八吹 亜子と申します。本日はお時間を作って下さってありがとうございます」


部屋へ通された私は竜之介くんのご両親と顔を合わせた。


お父様もお母様も私の事をよく思っていないのが態度に表れていたけれど、それに気付かない振りをしながら笑顔を向け続ける。


「竜之介から八吹さんの話は聞いているよ。それで、今日はどんな用件かな? 申し訳無いが、あまり長い時間は取れないのでね、出来れば手短に頼みたい」

「親父! そういう言い方は無いだろ? 今日は時間があるからって言ってたじゃないか」

「竜之介、お父さんにはお父さんの都合があるの。仕方がないでしょう? 八吹さんも、気を悪くなさらないでちょうだいね」

「はい、あの、すみません、お忙しい中お時間を頂戴してしまって……」

「亜子さん、ごめんね」

「ううん、大丈夫」


竜之介くんにとってご両親のこの反応は予想外だったのか申し訳無さを滲ませて謝ってくれるけれど、私としてはこういう反応も想定内だったから、大丈夫と答えて本題に入る事に。


「――竜之介くんにはいつも助けられていて、本当に感謝しています。こんなに素敵な人に出逢ったのは初めてで、私なんかには勿体無いくらいの人だと思っています。それと同時に、お父様やお母様にとって大切な息子さんである事もよく分かっています。私のような離婚歴があって子供までいる女との交際をよく思われない事も、重々承知しております」

「亜子さん……」

「君は竜之介よりも話が分かるみたいだね。私どもとしても、竜之介の将来の事だ、本人に相手を選ばせてやりたい気持ちはある。けれどな、竜之介は次男と言えど、名雪家うちの名を継ぐ大切な存在なんだ。こう言っては何だが、せめて君が初婚なら可能性もあったかもしれない。しかし、離婚歴があって尚且つ子供までいるとなると……世間体の問題も生じてしまう。分かるかな?」

「親父!」

「竜之介、お前は黙っていなさい。私は今、八吹さんと話をしているんだ」

「――っ!」


私を思ってお父様に言い返そうとする竜之介くんだけど、今話をしているのはあくまでも私なので、それを言われてしまうとこれ以上強く言えない彼は悔しそうな表情を浮かべて口を噤んでしまう。


正直、この展開も予想はしていた事。


今日の為に、こう言われたらこう返そうと、頭の中で何度もシュミレーションをしてきた。


だから、私は怯む事なく言葉を続けていく。

頼れる年下御曹司からの溺愛~シングルマザーの私は独占欲の強い一途な彼に息子ごと愛されてます~

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