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土曜日はアラームをセットせずに惰眠を貪った。

目覚めた瞬間に、時間を気にせず眠れる大人の自由を全身で実感する。直後にやってきたのは、時差ぼけのような気だるさではあったが。


雪緒はベッドに起き上がり、欠伸をしながら首を巡らせる。

ベッドを取り囲む壁に埋め込まれたガラスブロックを通って、週末の日差しが届いている。この部屋で大好きな眺めの一つ。


さて、朝ごはんはどうしようか。


ざぶざぶと顔を洗って、冷蔵庫の中身を思い浮かべる。

牛乳もヨーグルトも品切れ。

昼ごはんと夜ごはんの仕入れに、スーパーにでも行こうか……。


裸足で部屋を横切り、BGM代わりのテレビのリモコンを掴んだとき、充電中のスマートフォンが震えた。


真じゃ、ない。


真の着信パターンはそれとわかるように変えてある。――半年前のあの日から、そのリズムを刻んだことは一度もない。


何百、何千と味わった落胆を再び味わって、スマートフォンを手に取る。


ディズニーシー限定のキャラクターのぬいぐるみを抱っこした、首から下の写真のアイコン。穂乃里からだった。


『雪緒ちゃん、暇?』

『お店がてんてこ舞いだよー』

『ご馳走するから!』


ぬいぐるみと同じキャラクターが、可愛く両手を合わせているスタンプで締められている。

こちらの動きを見られているのではないかと思うくらいの、絶好のタイミング。

雪緒は苦笑いしてテレビのリモコンをテーブルに戻した。


穂乃里の姉の深乃里が言っていたことが思い出される。

『甘え上手でしょ』それはまぁ、否定はしない。


ただ、羨ましさはある。

穂乃里にしても、妹にしても、人の懐に飛び込むスキルに長けている。


雪緒には備わっていないスキルだ。

それができたらどんなに人生が楽だろうと考えることもある。


弱みを見せて、助けてもらって。


雪緒は限界まで自分で抱えてしまうし、自分で何とかしなければと考えてしまう。

会社の人事考課でもよく言われることだった。


出かける準備をしながら、一瞬手が止まる。


以前付き合った相手にも、「全然甘えてくれない」とか「オレって頼りにならないのかな」などと言われたことがある。

どこか、こちらを責めるような口調で。


――ダメだ、暇があると碌なことを思い出さない。

早く穂乃里の店に行って手伝おう。


着替えるピッチを上げて、雪緒は引きずる記憶を振り切った。




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