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「……で、ヒトミゴクウって何?」
「ダメだこいつも馬鹿だ」
「は?」
烏に馬鹿だなんて言われるなんて、思っていなかった。
いやでも本当に何? ヒトミゴクウ? 何か美味しそう。
「おいらが説明しようではないか!」
「黙れチャラ男」
「ヌレバさぁぁぁん!?」
「で、何なの? そのヒトミゴロウって」
「人身御供ね? 孤独に飯食うドラマじゃないんだから」
え、神様なんだよね? 信じてないけど。
神様もテレビって観るものなのだろうか。まぁ確かに、あのドラマは面白いが。
「言ってしまえば、生贄さ。君は、神様に捧げられるために殺される筈だった、13の女の子」
「嘘よ。そんなの信じるわけないでしょ?」
「でも、君のお母さんの態度ってどうだったの? 君を5のときから見守ってきたけど、ずっと素っ気なくなかったかい?」
キミヲゴノトキカラミマモッテキタケド?? え? こいつストーカー?? 怖っ!!
……しかし、確かにトワの言葉は、筋が通っていた。ずっとお母ちゃんがあたしへ少し冷たくて、距離を置いていたのは事実。
「君は14になると同時に、捧げられる予定だったんだよ。君は中学二年生で、12月うまれで13だから、あと半年くらいだった……」
「何で14なのよキリ悪いわね」
「4には死って意味があるからね。それに、14の娘を好むロリコン神は多いよ」
「キモ~」
……ま、結局のところ信じてないけど。
何故か手鏡をのぞき込み、かっこいいと呟いているアホなトワを心で冷笑しながら、あたしは川へ向かって歩いていた。
「……え!? ちょ、ちょっと!! トワ様!!」
「どったんだい?」
「ヒミ様が!!」
「え~?」
「げっ……」
何だあのくそカラス。くそガキにチクりやがって。くそとくそでくそすぎてヤバイわね。
面倒くさそうにあたしの方へと目をやったトワと、バチッと目が合ってしまう。かなり気まずい。
「ちょ、ちょ待てよヒミちゃん!!」
「よくあるでしょ? 夢の中で死んだら目が覚めるってやつ」
「待て待て待て待て!! 夢じゃないって! ヌレバ!!」
「はい!!」
足速すぎるだろというトワの言葉を無視して、急いで川へ飛び込もうとした。しかし、それは無理だった。
足がぶらぶらと浮いていて、後ろでパタパタと必死に羽を動かす音が聞こえてくる。どうやら、ヌレバちゃんが小さい身体で、あたしを持ち上げてくれているようだ。
「三途の川へ飛び込もうとする奴があるかぁぁぁぁ!!」
「うるさいわね……」
「なんでぃ! 助けてやったっつぅのによぉ!!」
「助けたのワタクシなのですが……」
ヌレバちゃんはあたしを草地へおろすと、ゼェゼェと苦しそうに荒い呼吸をしていた。
トワはあたしのことを睨みつけると、へにゃりとしたあと、大きく溜息を吐いた。
「だから言ってるじゃねぇかよぉ! ヒミちゃん死んだから、おいら達が何とかするって!」
「いや、夢だし……」
その言葉を聞くと、トワはカチンと固まった。
すると、あたしの頬を精一杯にぶってくる。
「いったぁぁぁぁ!?」
「ほれ! 夢じゃねぇぞ!」
「えぇ……えぇそうらしいわね!! 一発殴らせなさい!!」
「マジでやだこの子」
あたしの言葉通り、一発あたしに殴られたトワは、
「二発なんですけど……」
頬をさすりながら、ガッシリと肩を掴んでくる。
またセクハラしてきたこいつ。
「三途の川飛び込んだらどうなるか考えたことあるかい!?」
「ない」
「死ぬの! 死んでるのにもっかい!! 存在ごと消滅エンドなの!!」
「あらやだトワをあそこへ突き落としていいかしら」
「マジかよ」
「トワ様……そんなことはいいですから、ヒミ様を何とか元の世界に返してささげるための最善策を考えましょう」
「この子もういいんじゃない? 可愛い子を失うのは悲しいけどさ、かわりの人間なんていくらでもいるんじゃないのかい?」
「そうおっしゃらずに……」
「……まぁ、もう思いついてはいるのだけどね」
「本当ですか!?」
トワはごほんと咳払いとすると、指を遠くへ指さした。
「その、夏の神様とやらに、捧げられる予定だったんしょ? ヒミちゃんは。つまりよ、夏の神様と話し合えばいいのだ!」
「そ、そんな! もっと現実的に!!」
「これ以外に方法ある? ないだろう?」
「それは、そうですけど……でも、人身御供を欲しがっている神が、そんな簡単に要求をのむでしょうか? あなた様のような低級神でも、かなりプライドが高く、傲慢なのですから……」
「低級言うなって!! ……そもそも、生贄って文化は人間が自己満足で始めたものだからね。正味本当にくれくれ言ってるかは謎だし……ま、無理だったら戦えばいいっしょ!」
「そんな、無茶苦茶な……」
「何の話?」
「だからぁ……ヒミ様から人身御供という馬鹿げた役割を外して、安全に元の世界に返す方法ですって……」
「だから何なの? 人身御供とか」
「だから生贄だって言ってんだろ!?」
「まぁまぁそう興奮なさらずに……」
トワは物わかりが悪い奴は嫌いだなどグチグチ言いながらも、あたしに一から説明をしてくれた。
話がとっちらかるから悪いんだ。
「……で、神様って根拠は?」
「未来予知できます!」
「トワ様嘘はいけないですよ……」
「ナンパできます!」
「成功しないでしょう……」
「あかん腹立つ。腹立つわお前」
その時、けたたましい悲鳴が、ここへと響いた。
悲鳴では、ないのかもしれない。あれが、鳴き声なのだ。
「な、何よ!!」
「根拠! 根拠があるぜ!!」
「えぇ、そうですね……」
「いくぜヌレバ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ~!!」
突然の展開に驚きながらも、あたしは走って二人(というより一柱? と一匹)に付いていったのだった。