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――あの日から、三週間。
季節は少しだけ進んでいた。
大学へ向かう道も。
昼休みの食堂も。
放課後の帰り道も。
何も変わらない。
変わったのは。
こさめの心だけだった。
◌ ───── ◌
💜「おはよ」
🩵「おはよ〜」
💜「眠そうだな」
🩵「昨日ちょっと夜更かししちゃって〜」
嘘だった。
最近、夜になるとなかなか眠れない。
眠れても浅くて。
朝起きると身体が重かった。
◌ ───── ◌
昼休み。
💜「飯」
🩵「行く〜」
四人で食堂へ向かう。
いつもの席。
いつものメニュー。
いつもの時間。
それなのに。
運ばれてきた定食を見た瞬間だった。
🩵「……」
胃の奥がむかっとする。
急に込み上げる吐き気。
🩵「ご、ごめん〜」
立ち上がり、そのまま食堂を飛び出した。
❤️「お、おい!」
🩷「こさめ!」
◌ ───── ◌
洗面台で顔を洗う。
冷たい水が頬を伝う。
🩵「はぁ……」
吐くほどではなかった。
けれど。
気持ち悪さは消えない。
しばらくすると、後ろから足音がした。
💜「大丈夫か」
🩵「あっ、いるまくん〜」
💜「顔真っ白だぞ」
🩵「ちょっと胃の調子悪いだけ〜」
💜「風邪じゃねぇの」
🩵「もう治ってるよ〜」
💜「病院行けよ」
🩵「大丈夫だって〜」
笑う。
その笑顔を見ても。
いるまはどこか納得していない顔だった。
💜「無理すんなよ」
🩵「うん〜」
その優しさが。
まだ苦しかった。
◌ ───── ◌
数日後。
朝。
目が覚めると同時に吐き気がした。
🩵「また……?」
最近ずっとだ。
食欲もない。
眠い。
身体もだるい。
🩵「疲れてるのかな〜……」
そう思っていた。
今日までは。
◌ ───── ◌
夜。
部屋でカレンダーを眺める。
予定を書き込もうとして。
指が止まった。
🩵「……あれ」
もう一度見る。
日付を数える。
もう一度。
もう一度。
🩵「……」
血の気が引いた。
🩵「生理……」
来てない。
予定日を。
とっくに過ぎていた。
◌ ───── ◌
スマホを開く。
検索画面。
“生理 来ない”
画面をスクロールする。
そこに並ぶ症状。
・吐き気
・眠気
・身体のだるさ
・食欲の変化
全部。
当てはまっていた。
そして。
一番見たくなかった文字が目に入る。
「妊娠初期症状」
🩵「……」
呼吸が止まる。
🩵「違う」
小さく首を振る。
🩵「そんなわけない」
一回だけ。
たった一回だけ。
しかも。
あれは事故みたいなものだった。
🩵「違うよ……」
何度も呟く。
けれど。
胸の奥の不安は消えなかった。
◌ ───── ◌
翌日。
大学帰り。
ドラッグストアの前で立ち止まる。
何度も店の看板を見る。
入ろうとして。
やめる。
また歩き出して。
立ち止まる。
🩵「……」
意を決して店へ入った。
目的の商品はすぐに見つかった。
妊娠検査薬。
箱を手に取る。
心臓がうるさい。
誰も見ていないのに。
誰かに見られている気がした。
急いでレジへ向かう。
店員は何も言わない。
淡々と袋へ入れるだけ。
それなのに。
🩵(お願い)
🩵(違って)
心の中で何度も願っていた。
◌ ───── ◌
家に帰る。
机の上に袋を置く。
中から検査薬を取り出した。
🩵「……」
まだ使えない。
怖かった。
もし。
本当に陽性だったら。
自分の人生も。
いるまの人生も。
全部変わってしまう。
🩵「……」
箱をぎゅっと抱きしめる。
誰にも相談できない。
相談したら。
きっと優しいあの人は責任を取ろうとする。
それだけは。
絶対に嫌だった。
✦
知らないままでいられたなら。
どれだけ幸せだっただろう。
けれど。
現実は。
もう目の前まで来ていた。
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こりん
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suzu🎲⭐️🎼⏳🪽🎺
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コメント
1件
ああー、これは…読んでて胸がぎゅってなったわ。 こさめの体調不良、最初はただの疲れかと思ってたら、まさかの展開。妊娠検査薬を前に立ちすくむシーン、すごくリアルで、こさめの不安がひしひし伝わってきてこっちまで息苦しくなった。いるまの優しさが逆に辛いって感情もわかるよ…。たった一回の“事故みたいなもの”が、二人の未来を変えちゃうかもしれないと思うと、読み終えた後もずっと胸が重いわ。