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⚠視コロ
舜side
「……なぁ、山中くん。あんた、人間何回目?」
放課後の秘密基地。
俺は手渡されたノートを開いたまま、本気で震えていた。
柔「え? 1回目だけど……どうかした?」
ヘアピンで前髪を上げた柔太朗が、きょとんとした顔で首を傾げる。
どうかした、じゃない。
ノートにびっしり書き込まれた新しい恋愛女児漫画のプロット――これが、もう、信じられないくらい「天才」のそれだった。
舜「新ヒロインが、光と影のハーフ? で、初恋の男の子が実は敵の闇の王子!? しかも、2人が再会するシーンが『夕暮れの噴水前で、破れた絵本のページが風に舞う瞬間』って……シチュエーションが神すぎて鳥肌立ったわ!」
少女の「好き」と「憧れ」のすべてが詰まっている。
胸がギュッとなる切なさと、ページをめくる手が止まらなくなるワクワク感の黄金比率。
舜「恋愛の仕掛けが完璧すぎる……! なんで男のあんたが、こんな女子の心をズタズタに打ち抜くような最高の設定思いつくん!? 想像の天才か!?」
柔「ふふ、よかった。舜太くんがそうやって、目を見開いて褒めてくれるの、すごく嬉しい」
褒めちぎる俺を見て、柔太朗はいつもの「作られた王子様の笑顔」じゃなく、本当に嬉しそうに、子供みたいにクシャッと笑った。
柔「俺ね、ずっと頭の中でこういう世界を想像してたんだ。でも、誰にも言えなくて。……でも、舜太くんなら、この世界を一番可愛い絵で形にしてくれるって信じてるから、いくらでも溢れてくるんだよ」
そう言って、真っ直ぐに俺を見つめてくる。
澄んだ瞳の奥にある、創作への純粋な熱量と、俺への絶対的な信頼。
あかん、よすぎる。
ストーリーも天才やけど、こいつの存在自体がずるすぎる。
舜「……わかった。あんたがそれだけの天才的なストーリー出してきたんや。俺も魂削って、世界一可愛い作画で返さな男がすたるわ!」
俺は勢いよくスケッチブックを開き、ペンを握り直した。
柔太朗の天才的な脳内から溢れる夢を、俺が全部、この手で最高のものに仕上げてやる。
柔「うん。よろしくね、俺の最高のパートナー」
後日
舜side
「……描けん。美少女は描けても、恋する距離感が全然わからん!!」
終業式を明日に控えた放課後。
セミの鳴き声が響く秘密基地で、俺は机に突っ伏していた。
明日から夏休み。
まとまった時間が取れる絶好のチャンスなのに、俺のペンは完全に止まっていた。
原因は、柔太朗が書いた珠玉のデートイベント。
『水族館の巨大水槽の前、人混みで急に手を引かれるヒロイン』のシーンだ。
舜「頭ではわかってるんや! でも、いざ描くと、なんかこう……ドキッとする空気感が画面から伝わってこおへん!」
柔「そっか……。文字だけじゃ、お互いの体温とか、距離感までは想像しにくいよね」
パイプ椅子に座った柔太朗が、人差し指を顎に当てて少し考える。
そして、名案を思いついたように顔を輝かせた。
柔「じゃあさ、明日から夏休みだし、俺たちでそのシチュエーション、練習しに行こうよ」
舜「……は? 練習って、誰と誰が」
柔「俺と舜太くん。実際に水族館に行って、同じ動きをしてみるんだ。そうすれば、舜太くんもリアルな想像ができるでしょ?」
爽やかに微笑む想像の天才・山中柔太朗。
いや、天才の発想はぶっ飛びすぎやて! 男2人で水族館デートの練習!?
でも、ここで引いたら天下は獲れん。
舜「……しゃあない、これも漫画のためや。行ったろやないの!」
柔side
夏休み初日。
やってきた水族館は、冷房が効いていて涼しかった。
だけど、薄暗い館内を進むにつれて、なぜか俺の心臓は少しずつ熱くなっていく。
柔「すごいね、舜太くん。本当に海の中にいるみたい」
舜「お、おう……。っていうか、人多すぎひん? 土曜やからって、これじゃ作画の資料撮るのも一苦労やな」
カメラを片手に、周囲をキョロキョロと見渡す舜太くん。
その時、遠足らしき子供たちの集団が、どっと俺たちのほうへ押し寄せてきた。
「あ、危ない――」
気がつけば、俺の手は自然に動いていた。
舜太くんの細い手首を、ぐっと掴んで自分のほうへ引き寄せる。
ドン、と軽い衝撃。
薄暗い巨大水槽の前、ブルーの光に照らされて、舜太くんの体が俺の胸の中にすっぽりと収まっていた。
舜side
舜「……え?」
視界が、急に柔太朗の胸元でいっぱいになった。
耳元で、トントンと、少し速いテンポの鼓動が聞こえる。
それは俺の心臓の音なのか、それとも、柔太朗の音なのか。
柔「……これ、だよ」
頭上から、少し低くて、いつもより少し掠れた柔太朗の声が降ってきた。
手首を掴む彼の指先が、驚くほど熱い。
柔「『不意に引き寄せられて、お互いの息が触れそうな距離になる』。……どう? 舜太くん、想像、できそう……?」
見上げると、水槽の青い光を反射した柔太朗の瞳が、じっと俺を見つめていた。
学校で見せる「完璧な王子様」の演技じゃない。
息を呑むほどに綺麗で、真剣で、どこか少し、緊張しているような生々しい表情。
アカン。
これ、完全に少女漫画のやつや。
っていうか、心臓が爆発する……!!
舜「……っ、お、大体わかった! わかりすぎて胸焼けしそうやから、一回離して!!」
俺は真っ赤になった顔を隠すように、柔太朗の胸を軽く押し返した。
柔太朗は一瞬呆然とした後、「ふふ」と楽しそうに笑った。
柔「あはは、大成功。じゃあ今の表情、忘れないうちにスケッチしてね?」
悪戯っぽく笑う幼馴染のような笑顔。
……ずるい。こんなの、想像の天才に振り回されてるだけやん。
でも、不思議と脳内には、さっきの距離感と、彼の手の熱さが鮮明に焼き付いていた。
fin
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れもん
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コメント
5件
設定が最高すぎる…!! どうなるのかすっごく楽しみです✨ありがとうございました🥹
コメント失礼します🥲💞 お話大好き過ぎて一気読みしてしまいました🥹💕 続き楽しみに待ってます…🫣💖
**最高すぎてお腹痛いんですけど!!!😭💕💕** 水族館で柔太朗くんが舜くんを引き寄せるとこ、完全に少女漫画の練習じゃなくて本番になってるやつやん…!?「これ、だよ」って囁く声、想像しただけで鼻血出るわ🫣💦 しかも舜くんの「わかりすぎて胸焼けする」ってツッコミも可愛すぎるし、照れて隠すとこがもう尊すぎてもう一回読んできたわ…! 創作のための練習っていう名目で距離詰めていく2人の関係性、これからどうなるんやろ…続き待ってます🔥🔥