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†┌┘墓└┐† 無事、ほっとけーきは天に昇りました__ ↑なぜ
夜。
さっきの出来事の余韻がまだ残ってる部屋。
でも空気は、ぴりついてない。
静かで、やわらかい。
すちは布団の上に座って、
膝を抱えてる。
みことは少し離れた場所。
近づきすぎない距離。
「……さっきさ」
すちがぽつり。
「うん」
「俺、足震えてた」
「知ってる」
「でも」
顔上げる。
「逃げなかった」
みこと、少し笑う。
「うん」
それだけで、
すちの胸の奥があったかくなる。
沈黙。
でも重くない。
すち、少し迷ってから言う。
「……手、いい?」
みこと、目瞬かせる。
でもすぐ差し出す。
すちはそっと掴む。
ぎゅってじゃない。
指先、触れるくらい。
でもその接触がやけに大きい。
「……落ち着く」
正直な声。
みこと、視線やわらかくなる。
「それならよかった」
すちは手を見つめながら言う。
「俺さ」
「うん」
「前は、“必要”って言葉、嫌いだった」
みこと黙って聞く。
「いないと困るから一緒にいる、みたいで」
指先が少し強くなる。
「でも今は」
ゆっくり顔上げる。
「……ここにいてほしい、のほうが近い」
みこと、息止まる。
でも笑う。
「それ、かなり大事なこと言ってる」
「そうなの?」
「うん」
少し間。
すち、急に照れて目逸らす。
「なんか恥ずかしくなってきた」
「今さら?」
「今さらだよ!」
みこと、少しだけ手を引いて、
すちの頭に軽く額くっつける。
一瞬だけ。
すちは固まる。
でも逃げない。
「……みこと」
「ん」
「これも、尊いってやつ?」
みこと、小さく笑う。
「多分な」
しばらくそのまま。
時間がゆっくり流れる。
何も起きない。
でも満たされてる。
すちは思う。
(好きって、たぶん)
胸がぎゅってなって、
でも安心できる人の隣にいたい気持ち。
言葉にしなくても、
もう体がわかってきてる。
小さくつぶやく。
「……ここがいい」
みことは聞こえてる。
でもあえて答えない。
代わりに。
手を、少しだけ握り返す。
強くなくていい。
離れない強さだけあれば。
その夜。
怖い夢は見なかった。
隣にいる温度が、
ちゃんと現実だって証明してたから。
夜。
電気を消したあとも、
二人ともすぐには眠れなかった。
同じ部屋。
同じ時間。
呼吸の音が、少しだけ近い。
すちは布団の中で、
目を閉じたまま考えていた。
(……あったかい)
さっき握っていた手の感覚が、
まだ残ってる。
胸の奥が、ふわっとして、
でも少し怖い。
(これ、離れたら消えるのかな)
そんなことを考えてしまう自分に、
少しだけ嫌になる。
「……みこと」
小さな声。
「起きてる」
即答。
それだけで安心する。
「……さ」
言葉を探す。
「俺、いま」
喉が詰まる。
「……幸せって思っていい?」
みこと、少しだけ間を置く。
そして、はっきり言う。
「いい」
「……ほんと?」
「むしろ、思え」
すちは、くすっと笑う。
「命令形」
「じゃないと疑うだろ」
図星。
すちは布団の中で体を丸める。
「……触っていい?」
また、聞く。
前なら聞けなかった。
みこと、ゆっくり布団越しに手を伸ばす。
「どこ」
「……頭」
みことの手が、
そっとすちの髪に触れる。
なでる、というより、
確かめるみたいに。
すちは一瞬びくっとするけど、
すぐ力が抜ける。
「……っ」
声が、変になる。
「落ち着く?」
「……うん」
目、閉じたまま。
みこと、リズムを崩さない。
急がない。
「……逃げないんだな」
ぽつり。
すち、正直に言う。
「……逃げたくない」
その言葉に、
みことの手が一瞬止まる。
でも、また動く。
少しだけ、優しく。
「……それ、嬉しい」
低い声。
すちは胸がきゅっとする。
「……みこと」
「ん」
「俺、たぶん」
言いかけて止まる。
怖い。
でも。
「……独りじゃないって、信じたい」
みこと、静かに答える。
「信じていい」
「……裏切らない?」
「裏切らない」
断言。
すちは、目の端が熱くなる。
涙が出るほどじゃない。
でも、こぼれそう。
「……ずるい」
「何が」
「そんな言い方」
みこと、少し笑う。
「ずっと一人で耐えてきたやつには、
これくらいでいい」
しばらくして。
すちは、眠りに落ちかけながら言う。
「……ねえ」
「うん」
「もし俺が、また弱くなったら」
「なるだろ」
「……そんときも」
「そばにいる」
即答。
すちは、安心したみたいに、
みことの服の端をぎゅっと掴む。
無意識。
みことは離さない。
引きはがさない。
ただ、そのままにする。
(守るって、こういうことか)
みことは思う。
力じゃない。
言葉でもない。
離れないこと。
それだけ。
朝。
目覚めたすちは、
自分がみことの腕に寄っていることに気づく。
一瞬固まる。
でも、逃げない。
ゆっくり顔をうずめる。
「……あったかい」
小声。
みこと、目を閉じたまま言う。
「聞こえてる」
「……聞こえなくていいのに」
「無理」
すちは、ちょっと照れて笑う。
(ここにいていい)
それが、体に染みてきている。
必要とされるとは、
縛られることじゃない。
一緒に、安心できること。
すちは、やっと少しわかり始めていた。