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「ふぅ。大分荷物が軽くなったわね」
再び雪山エリアへとやってきた二人は防寒着へと着替えていた。
「そうだね。水も結構使ったからね」
「そうね。でも、ここからはこの雪を飲むのよね?少し心配だわ」
持ち運ぶ防寒着が増えた分、何かを削らなくてはならなかった。
その為、持ち運ぶ水の量を減らしたのだ。
足りない分と帰りの分は、この雪を溶かして賄う。それについてミルキィが不安に感じているのだ。
「村でも冬にはそうしてたでしょ?それと変わんないよ」
「貴方ねぇ…ここの雪はダンジョン産なのよ?少しは警戒しなさいよ…」
「お腹を壊した事がないからわかんないや」
レビンは野生児なのであった。
そしてミルキィは箱入り娘である。同じ田舎の村育ちなのに……
冬に雪を溶かして水を確保することは、二人の出身地の村が田舎であることとあまり関係は ない。雪が積もる所であれば、日常的に行っている事なのだ。
しかし、ミルキィの言う通り、ここはダンジョンである。一先ず溶かした雪が飲めるのか試すことにした二人。
「おっ。普通に溶けてるな。これで問題なさそうだね」
「まだ飲めるかわからないわ。レビン。任せたわよ」
ここは一二もなくレビンに任せたミルキィ。どんな世界であれ、はじめての物を口に入れるのは恐ろしいのだ。
雪を溶かした水をそのまま鍋で沸騰させて、コップへと移した。
ゴクゴクッ
「うん。普通のお湯だね!温まるよ!ミルキィも飲む?」
「ええ。頂くわ。……普通ね。これで漸くこのエリアに臨めるわね」
お湯を飲んだレビンは問題が無いことを確認した後、ミルキィにも勧めた。
そして、遂に二人は新エリア攻略へと向かうのであった。
雪山の魔物は銀狼と呼ばれる雪景色に対して保護色を纏う全長1.2mほどの狼と、雪男と呼ばれる白い体毛が長い身長2mのゴリラのような魔物であった。
どちらも特筆した技能は持ち合わせていないが、このエリアに適した動きを見せていた。
簡単に言うと、雪の上で普通の道と同程度の動きを見せるのだ。
保護色になっている体毛と相まって、ここ以外で遭えば大した敵ではないのに苦戦する。
普通の冒険者であれば……
ザシュッ
「数が多くても問題ないね」
「そうね。この魔物なら解体できるわ」
ミルキィも田舎育ち。ただの獣であれば、難しい解体でなければ問題はなかった。
これまでのグロテスクなモノを見て耐性がついたのかもしれない。
イエティは単体行動が目立つが、銀狼は集団行動だ。
レベルを上げる為にどちらが効率的かというと、どちらでもない。
イエティを倒すと単体でレベルは上がるが、シルバーウルフも今のレベルであれば複数の個体が必要ではあるが、それも一度の戦闘で足りる。
剣を振る回数が増える程度にしか、レビンにとってはどちらも負担に感じなかった。その為、戦闘では特筆する事はなかったのだが…
しかし……
「もう!何でシルバーウルフばかりと出会うのよ!」
「…仕方ないよ。数が多い生き物と遭遇しやすいのは当然だよ」
「だってシルバーウルフの魔石5個とイエティの魔石1個が同じ買取価格なのよ!?手間は5倍も掛かるのに…おかしいわ……」
普通の冒険者はそれを手間とは思わない。
パーティによってはイエティ戦の方が楽な場合もあるが、基本は単体で強い魔物は敬遠される。
この世界は数の力より個の力の方が基本恐ろしいのである。
例えば、イエティの戦力が10だとしてシルバーウルフを2としよう。
単純に2×5=10と言えるが、それはあくまでもこちら側が一人の場合だ。
こちらの戦力が同じ10でも3・3・4のような力関係であれば各個撃破できるシルバーウルフの方との戦闘が好まれる。
逆にイエティと戦うと、上手く連携を取れないと各個撃破されてしまうだろう。
パーティの連携が優れている者達は自分達より強者とも戦えるが、そうでなければただの烏合の衆である。
逆にイエティより強いのであれば、手数と時間が取られる銀狼との集団戦よりも、イエティとの単体戦が好まれる。
もちろん、それには相手を遥かに凌ぐ実力が必要な事は言うまでもない。
文句を言いつつも解体に精を出した二人は、雪山を順調に攻略していった。
もちろんその間にレベルドレインを欠かしてはいない。
「何となくだけど……ここが僕達には合ってるかもね」
「…そうね。悔しいけど、解体の手伝いが出来るのはこれまででここくらいだし…
寒さにも慣れたわ」
山暮らしに慣れている二人は、適応出来ているこの場所を主戦場とするようだ。
もちろん他にも理由はある。
「このエリアは広いよね」
「そうね。これまでならすでに次のエリアに到達している辺りまでは歩いたわ」
他のエリアより広く…
「つまり他の冒険者に出会いづらいよね」
「少なくとも近くにはいないわ」
二人きりで…
「ここみたいに山間だと吹雪の影響で視界も悪くて他の冒険者に見られないね」
「…レベルドレインの事?そうね。見つかる事はないのじゃないかしら」
安心できる場所でもあった。
吹雪の雪山が安心できる場所というのは…やはり、難儀な二人である。
予定の日数を雪山エリアで過ごした二人は、目標を達成し、街へと戻ってきていた。
魔石は全て持ち帰れなかった為、泣く泣く投棄したが。
しかし、二人パーティでは破格の個数を持ち帰り、受付を驚かせていた。
「凄い金額になったね!」
「そうね…レベルが上がりすぎて、まだフワフワするわ」
「とりあえず宿に戻ってゆっくり休もうよ!」
ゆっくり休む人のテンションではない。
しかし、仕方がないのかもしれない。
レベル、収入共に予定を大幅に超えたのだから。
1週間の探索で丸4日雪山に篭っていた二人は、テンションとは裏腹に宿に着くなり泥のように眠りについた。
翌朝。
「雪山に4日も…ミルキィさんはそれで良かったんですか?」
乙女心の『お』の字もわからないレビンに、カーラは最近厳しい視線を向ける。
二人の事情を知っていればカーラが悪者なのだが、側からみたらどうだろうか?
男女関係なく、誰もが羨む美少女のミルキィ。
レベルが高く、銀ランク冒険者。田舎育ちとは思えない所作に言葉遣い(母親の趣味)。
片やどこにでもいる普通の少年であるレビン。
レベルが低く、でも銀ランク冒険者(知らない人は高レベルであるミルキィの金魚の糞だと思っている)。
田舎育ち丸出しで、言葉遣いは子供の時のまま。
所作は……オタク丸出しである。
「良いのよ。諦めてるし、出来るだけレビンの好きなようにして欲しいの。
それよりガーランドの友の人達は?」
カーラの中でミルキィの評価が爆上がりしている。
そしてレビンの評価は地を這っていた……
カーラさん。あまり男に高望みをすると、行き遅れ…おっと、誰か来たようだな?
「あの人達は昨日探索に出られたので、暫く戻ってこないと思いますよ」
どうやら入れ違いをしたようだ。ミルキィはカレンに魔法についての質問があったようだが、またの機会にすることにした。
「私達はどうするの?」
「今日はゆっくり休んで、明日からまた活動しない?」
「じゃあ二人はデートですね!」
「「えっ!?」」
カーラの助け舟にミルキィまで驚きを隠せなかった。
ミルキィはあくまでも耳年増なのだ。
そこに耐性はない。
レベル
レビン:11→15→14→15→14→16→15→17→16→17
→16→18→17→18→17→18→17→18→17→18→17→18→17→18→17→16→15→14→15→14→13→12(98)
ミルキィ:68→87