桃時「いった……」橙「痛いです……」
雨花「みんな怪我ない?」
橙「私は大丈夫です……」
桃時「私も……」
雨花たちは本の中に吸い込まれた。ここは本の中である。
桃時「ていうかあんたは何でそんなに平気そうなのよ?」
雨花「受け身取ったからね」
橙「私は本が怖くてそれどころじゃなかったですよ……」
雨花「それより……ここひたすら暗闇って感じだね」
雨花たちは辺りをみ渡す。どこもかしこも闇が広がっており、何故かお互いの姿はみることができるが、ひたすら闇のみが広大化していた。
雨花「何にもなくて空っぽな場所……」
橙「何だか……怖い」
桃時「そうね……」
雨花「そうかな?わたしは結構こういう場所好きだけど……」
桃時「あんたも物好きね……」
雨花たちが話していると……
「誰だ」
雨花・橙・桃時「!」
雨花たちの前に現れたのは……
橙「あ、悪魔?!」
黒い翼に牙が生え、角のある生き物……つまり、悪魔だった。
雨花「あなたは悪魔なの?」
「だったら何だ」
橙「悪魔なんているんですか?!」
桃時「まぁ天使がいるんだし、いるとは想うけど……」
「お前たちは何者だ!!!!」
悪魔はとても怒っている様子。
雨花「あなた寂しくないの?」
「…………は?」
雨花「あんな心細くなりそうな場所で、本の中も暗くて……寂しくないの?だから人間たちの間でご利益のある五円玉を敷いてたんじゃないの?」
「お前……悪魔の僕にそんなこと言うのか?」
雨花「悪魔だから……何?」
「…………」
悪魔はしばらく黙ると、口を開いた。
「僕は天使に閉じ込められたんだ。この本の中に」
橙「閉じ込められた?」
桃時「どういうこと?」
「僕たち悪魔は、長い間天使に封印されている。僕たち悪魔は悪だと。悪の根源だと。特に大天使の奴は僕たちの話を聞こうとすらせず、閉じ込めやがったんだ……」
橙「あなたたち悪魔は何か悪いことをしたんですか?」
「そんなのするに決まってるだろ。僕たちは悪魔なんだからな」
雨花「どんな悪いことをしたの?」
「悪魔は人間の願いを邪魔するのが本文。自死したいなら自死できないように恐さを与えたり、障害や傷が残っても生かす。相手の願いをとことん邪魔するのが僕たち悪魔のすることだ。どうだ!人間の苦しんでる姿は堪らないからな!」
桃時「なるほど。天使とは根本的に違うのね」
雨花「「天使の場合は、「自死したい」という願いをそのまま遂行するからね。天使の本文は、「浄化」……相手の要望に答えることだから」
「それにしても」
雨花「あなたたちはちゃんと持ってるんだね」
「何をだ?」
雨花「自分たちの正義を」
「……は?」
雨花「あなたたちは自分たちの本文をちゃんと知っている。自分たちの本質を信じている。つまり、言い換えれば、自分たちの正義を掲げてるとも言える。」
「!」
悪魔は驚いた。
自分たちの行為は間違いで、それ以上でもそれ以下でもなくて、一生間違いだと言われ続けると想っていたから。そんな「正義」だなんて言葉で言い表されると想ってなかったから
雨花「ねぇ。あなたたち悪魔の正義もっと広げてみない?」
「え?」
桃時「確かに良いかもしれないわね。天使の考えで救われる人がいるように、あんたたちの考えで救われる人もいるはずだもの」
橙「私も賛成です」
雨花「今の天使はね。少しずつ自分たちの力を信じ込んでるんじゃなくて、押し付けたりせず、自分と周り同士と救い合うために、力を使うようにしようとしているの。だからあなたたちも救われる対象。だって、正義を押し付けていた天使たちだって救われる対象なんだから。願いが生まれ続ける限り、救われて良い。なぜなら、願いは救いに繋がるマストアイテムだから。あなたの正義を掲げて欲しい。掲げて良いんだよ。」
「…………ふん。意味のわからんことを言うな!しかし、まぁお前たちをここから出してやる分には良いだろう」
橙「本当ですか!!ぜひ!!お願いします!!」
桃時「あんたどんだけ出たがってたのよ……」
「では、ゲートを作ろう」
すると、悪魔は扉を出現させた。
橙「早く行きましょう!」
橙、桃時はゲートの方へ向かった。
雨花「あなたの封印はどうやって解くの?」
「僕の封印はお前たちがこの本から出た後、全てのベージを破り捨てれば解けるはずだ」
雨花「分かった」
「最後に一つ良いか?」
雨花「ん?」
「どうして僕たちの正義を掲げて良いと想った?」
すると、雨花は「何も映っていない目」になった。
雨花「死ぬことには意味があると想う。人の感情や考え方が消えるから。でもその意味はとても寂しくて心細い意味。でも、生きることにはそんな意味すら無い。」
「「無いんだよ」」
雨花「「命」という名分におまけとして付いてるものだから。ただそれだけ。そんなちっぽけですらないものをあなたたち悪魔は守ってる。人間の苦しんでる姿がみたいだけだとしてもちゃんと人間の「生きる」ということに楽しんでる。…………わたしにはできないから。だから協力したいなって想ったんだよ」
「…………そうか」
橙「雨花さん!行きますよ!」
雨花「ほいほい!……じゃあまた後で」
雨花たちはゲートをくぐって本の外に出たのだった。
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桃時「うーん……出れた出れた!」
橙「はぁ……怖かった」
雨花「じゃあ早速……」
雨花は本のページを一気に全て破り捨てた。
桃時「あんた力強すぎ」
橙「一瞬で破られた……」
すると、禍々しい光がますます強くなり、そして、光の柱が本から伸びると、悪魔が出てきた。
「こんなに早く破り捨てられるなんて……どんだけ力が強いんだ?」
橙・桃時「それなです・それな!」
雨花「これからどうするの?」
「僕はTSLハイスクールに帰って、封印されてる悪魔の封印を解く。……そして少し、天使と話すことにするよ」
雨花「……また、何か困りそうなことがあったらいつでもおいで」
「……あぁ」
そして、悪魔は飛び立って行った。
橙「仲直りできると良いですね」
桃時「そうね」
雨花「…………」
悪魔がいたあの場所……
何故だか既視感がある
前にも似たような場所に行ったような……
桃時「……めか、雨花!」
雨花「ん?なぁに?」
桃時「だから帰るわよって」
雨花「そうだね!帰ろっか!」
橙「今日はとてもハラハラしました……」
こうして、雨花たちの七不思議体験は終わったのだった。
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