「触れたい、けど」
階段をあがり、彼が足を止めたのは、2階の突き当たりからひとつ手前の部屋だった。
この書斎の奥が 佐伯(さえき)の自室だと知っている私は、慌てて少し前で立ち止まる。
「わ、私、家に帰らなきゃ……!」
「だから、だれもいない家に帰ってどうするの」
「そうだけど、でもっ」
これから佐伯とふたりきりなんて、そんなの心臓が持ちそうにない。
ドアを開けた佐伯は、廊下に立ち尽くす私にしびれを切らし、中へ引き込んだ。
「か、帰る。 だって、もしも親から連絡が入ったら困るし、 そ、それに、こんなことになるなんて思わなかったから、着替えもないし、 それに……」
「千夏(ちなつ)」
佐伯は部屋のドアを閉め、ノブを掴んだまま私を見た。
「ひとりにするのが心配だって、口に出して言わないとわからない?」
いつもよりゆっくり声。
まっすぐな視線。
私を見つめる瞳が不***************************
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