聖女は復讐の刃にキスをする

　王妃ミリエットこそが伝説の聖女その人である――。
　ヴォルフラムの発表に、重臣たちは慌てふためいた。
　理由は山のようにある。多くの者が彼女を「他国の民」「平民の出身」だと見下していたし、その寵愛が深かったことから、王をたぶらかした毒婦だとすら噂されていたのだ。
　だが、ヴォルフラムの言葉が真実であれば。

「運命は……我らを見捨ててはいなかったということですか」

　政務長官が、ぽつりと呟く。
ひどく疲れた顔で、呆然とミリエットを見つめながら。

「ああ。彼女はルドロス帝国の暴虐に対抗するべく、アルタール王国に力を貸してくれた。もちろん、俺にとっては最愛の妻でもある」

　先の城塞都市ローリア、聖地セレネスでの勝利。
　それに加えて、帝国辺境に潜入していたヴォルフラムを助けたのもミリ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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