「なあ…涼太の焦った顔、本気で見てみたくない?」
楽屋のソファで、渡辺がポツリと呟いた。その言葉に、近くにいた向井が「ええやん!面白そう!」と目を輝かせる。
「幼馴染なのに、しょっぴーもないの?」
深澤が尋ねると、渡辺は少し考えてから、
「いや、あるぜ?でも超少ない。あいつ、マジで動じねえから。」と悔しそうに言った。
その一言が、 Snow Manの悪ガキたちの心に火をつけた。
ターゲットは、気高き国王、宮舘涼太。
ドッキリの内容は、「舘様が作った手料理を、全員がありえないくらいマズそうに食べる」という、彼のプライドを懸けたものだ。
舞台は、YouTubeの撮影と称したニセの料理企画。舘様がメンバーに新作料理を振る舞う、という彼にとっては最も得意なフィールドだ。
「よーし、みんな!舘様にバレないように、いかにマズそうな顔ができるか選手権だからな!」
佐久間が小声でメンバーに檄を飛ばす。全員が「オッケー!」とニヤリと笑う。
そこに、何も知らない舘様が、完璧なシェフ姿で登場した。
「皆、お待たせ。今日の日のために、最高の食材を用意したよ。さあ、Party Timeの始まりだ。」
優雅な手つきで、舘様が作り始めたのは、彩りも鮮やかな「海の幸のロイヤルパエリア」。スタジオには、食欲をそそる最高の香りが立ち込める。メンバーたちは(うわ、絶対美味いやつじゃん…)と心の中で葛藤しながらも、今日の使命を思い出し、顔を引き締める。
そして、ついにパエリアが完成。
一人ひとりの皿に、美しく盛り付けられていく。
「さあ、召し上がれ。」
自信に満ちた笑顔の舘様に見守られながら、メンバーは一斉にスプーンを口に運んだ。
一口、食べた瞬間。
最初に仕掛けたのは、ラウールだった。
「…ん?…からっ…!え、辛い!辛い!」
突然、水をがぶ飲みし始め、口をパタパタと仰ぎ始める。
次に、阿部。
「…うわ、しょっぱ!え、これ、塩の量、間違えてない…?」
難しい顔で、パエリアの米粒をじっと見つめる。
向井は「酸っぱい!なんかレモン100個分くらい絞った!?」と叫び、目黒は無言のまま、眉間に深くシワを寄せ、遠い目をする。
岩本は一口食べた後、静かにスプーンを置き、腕を組んで首を横に振った。
そして、最大のキーマン、渡辺。
彼は、一口食べると、数秒間黙り込み、信じられない、という顔で舘様を見つめた。
「…涼太…。これ、マジでどうした…?」
その、本気で心配しているかのような、悲しげな声。
それは、他の誰に言われるよりも、舘様の心に深く突き刺さった。
「え…?」
いつも余裕のある舘様の顔から、スッと表情が消える。
まさか、そんなはずはない。味見も完璧だったはずだ。
彼は、震える手で自分の分のパエリアを一口食べた。
「…え、美味い…けど…え?」
口の中に広がるのは、いつもの完璧な味。
しかし、目の前では、自分の料理のせいで苦しんでいる(フリをしている)メンバーたちの姿。
「ご、ごめん…俺、何か間違えたかな…?」
声が、少し上ずる。
「みんな、本当にごめん、水持ってくるね…!」
明らかに目が泳ぎ、冷静さを失っていく舘様。あの優雅な立ち振る舞いはどこへやら、オロオロと慌てふためくその姿は、メンバーの誰もが見たことのないものだった。
もう十分、というところで、深澤がニヤッと笑い、スケッチブックを掲げた。
『ドッキリ大成功!!!!!!』
その文字を見た舘様は、一瞬キョトンとし、次の瞬間、全てを察してその場にへなへなと崩れ落ちた。
「お前ら…!」
「舘様の焦った顔、ちょー貴重!」
「ごめん舘様!本当はめちゃくちゃ美味い!」
「おかわり!」
わらわらと舘様に駆け寄り、空になった皿を見せるメンバーたち。
さっきまでの苦悶の表情はどこへやら、全員が満面の笑みだ。
「…翔太、お前まで…。」
恨めしそうに幼馴染を睨む舘様に、渡辺は「ごめんごめん!」と笑いながら、空の皿を差し出した。
「でも、俺らのために本気で焦ってくれて、なんか嬉しかったわ。…で、おかわりは?」
その言葉に、舘様は呆れたように笑い、そして、どこか嬉しそうに呟いた。
「…全く、しょうがないな。…仕方のない人たちだ。」
結局、メンバーの愛のあるイタズラには、気高き国王も敵わない。
スタジオには、いつもの平和で、わちゃわちゃした笑い声が響き渡るのでした。
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だてさま優しい!! 料理美味しくないって言われて、最後こんな接し方できるって尊敬だわ 続き楽しみにしてます!!