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いつからだろうか、父が嫌いになったのは。
確か、嫌いになったのは中1の頃からだった。当時は思春期だから思っていた。嫌いになったきっかけは、母の居ないところで母の悪い所をわざわざ私に言う所だった。そして最も嫌いになった時期は、中3最後の夏、夕食を食べ終えてから好きなアニメを父と見る そんな時だった。父はアニメを見ながら酒を飲むので、酔った勢いでよく本音を漏らした。
「女は料理が出来なければダメだ」
そう言ってまた父は酒を1口飲む。私は怒った。何故そんなことを言うのだと、すると父は「できないよりかはできた方が良いだろう」そう言った。さっきまでは、女全体は料理が出来ないと駄目という言い方をしていたのに。私は反論した、「男だって出来ないよりは出来た方が良い。わざわざ女という主語を使って言うことではないよ」と。父はこう続ける。「大体、うちがその根拠だろ。今はババが料理をしているが、死んだらどうする?誰が料理するんだ?ママは料理しねぇだろ!」私はまた反論した。「ママだって料理は上手だよ」父は、呆れたように「そうか?」と言った。父はさらに続けて「俺は1人で料理も作れるし、洗濯も洗濯物を畳むのも、今はママが洗い物をしているが、洗い物くらい俺もできる。あいつ(母)は俺がいなきゃ生きていけないんだ」私は思った。確かに父は基本なんでも出来る。物が壊れたら直してくれたし、庭の手入れも畑仕事もいつも父がしていた。同級生や周りの人もきっと、うちが良い家庭だと思っていただろう。実際表面上の仲は良かった。陰で妹と私に皆の悪口を言っていた。よく悪口を言っていたのは父だった。私がどんどん大人になるにつれ、普段の父の顔からも怒りが溢れていることに気づき始めた。祖母が料理をとる箸と食べる箸の置き場所を間違えた時も、有り得ないだろという風な顔をしていた。皆箸と祖母にしか目がいっていなかったかもしれないが、私は気づいていた。父の事が嫌いなのはそれだけではない。悪口を言っていた相手がいざ目の前にくるといい顔をするのだ。中学生時代の人間関係を見ているようで気持ち悪かった。父は明らかに母を見下す発言をしていたので、私は咄嗟に「ママを失敗例として挙げないで」と言った。父は少し不気味に笑いながら「あぁ。確かにそうかもな。だけど俺は1度もあいつを失敗例なんて言ってないけどな」と言った。私は母を失敗例だと思ったことはない。父の発言に関して言ったのに、私が母を失敗例と言った風に話を進めた。私は気付かぬうちに父は正しいという洗脳を受けてきたのかもしれない。父はいつも「すべて俺が正しい。俺は間違えない」と言い聞かされてきた。そのせいか、母も父のことを腫れ物のように扱っていた。そう言われた後何故か悲しくなってきたのだ。正確に言えば幼い頃から慕っていた母を侮辱された悔しさや悲しみと父の無神経さや残忍さに腹が立った。怒った私が「ならなんで結婚したの?」と聞くと、少し笑いながら「それも失敗だよ」と言った。一瞬父が何を言ったか分からなかった。あまりに衝撃的で人の言葉なのかさえ疑った。父の顔すら見たくなくなり、隣の部屋で眠ろうとしている愛犬を撫でながら声を殺して泣いた。娘が怒っているにも関わらず、テレビの電源をつけ、ドラマを見始めた。その無神経さにさらに悲しくなった。涙がひとつ、またひとつ、愛犬の足を濡らした。愛犬はただ泣いている私を見つめるばかりで何も言わない。父が酒を注ぎに行こうとすると、愛犬は立ち上がり、父を見ていた。愛犬は父の味方なのだと再確認しさらに悲しくなった。犬は悪影響を及ぼす人をその場の雰囲気や音で察知できるというが、嘘だと思う。なぜなら、父によく懐くからだ。暴力的で、すぐ感情的になって、酒癖が悪くて、無神経な人を好きになるはずないからだ。
〇最後に
幼い頃から父親や母親が居ない人も辛い思いをしてきたと思うし、私の方が辛いんだから、悲しむななんて言いません。私よりもっと酷い境遇の子もいると思います。そんな境遇に負けないように今を必死に生きましょう。ご閲覧ありがとうございました。