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放送をすると毎回拉致…どうしてだろ。それにしても今日は夢見が悪い…。髪の毛が抜け落ちたり、閉所に閉じ込められる夢を見たりする。心霊スポットによく行ってるからってのもあるかもしれないが、僕はそうだと思わない。普通に疲労と軽いストレスの積み重なり。それからー…この写真…

この女性、コノコノサマだっけ?トンネルの時に僕を追いかけてきたあの…

「あの時は必死で逃げてたからよく見えなかったけど、改めて見てみるとこんな顔してたんだ。」

さすが元女優、顔がいいな…っていけない。この人はもう亡くなってコノコノサマになったんだ。幽霊に見とれていたら絶対取り憑かれる…気がする。けど

「少しだけ この人について調べてみたいな」

よし、そうと決まればディレクターに相談しようかな。拉致事件の犯人の目撃情報についてもちょっと気になってたし、丁度いい。そう思い軽い身支度を済ませ、職場に向かった。

「今は朝の…11時か。ならいるな」

今日は次に行く心霊スポットを探すつもりだったが…人間やはり好奇心には勝てないものだな。

ーーーーーーーーーー

「なるほど、この女優の霊…いや、コノコノサマについて深堀したいと」

「そうなんですけど…いいですか?またあそこに行っても」

「個人的に行く分にはいいよ。仕事だったら変わってくるけどね」

「あ、ありがとうございます。すみません急に来ちゃって…」

「ふふっ、いいんだよ。でもびっくりしちゃったな…。前川くんがそんなに興味が湧く内容だったなんて…よし、前川くん」

「なんですか?」

「もし面白い情報が手に入ったら、それを前の人形旅館のやつと繋げて放送しよう」

「……仕事じゃないんですよね?」

「拉致事件の事にも繋がってるかもだし、君は運が強いから、いい情報が入る気がするんだ。もちろん、自分だけが知ってたいと言うのならば、無理にとは言わないよ。」

「じゃあいい情報が手に入ったら、ディレクターが知っている範囲での情報を教えてください。」

「………私が持っている情報?」

コーヒーを飲もうと手を伸ばした手が止まった。眼鏡のレンズ越しから僕の顔を鋭い目つきでじっと見つめてくる。

意外と当たるもんだなーと思った。ディレクターも僕と同じで好奇心と探究心が高い。色んなところから情報を集めて、それを考察するディレクターなら、コノコノサマの事や菜津ちゃんの個人情報などを自分よりも 沢山調べているのではないかと予測を立てていたのだ。

ディレクターはずっと睨んでくる。僕も僕なりの真剣な眼差しをディレクターに向けた。そうしたらため息をついて、仕事中ずっとつけていた眼鏡を外し、机の上にゆっくりとそれを置いた。

「私が…情報を持っていると思ってる?」

「はい」

「ふーん…まぁいいよ。私が知ってる情報なんて、ほとんどないと思うけどね」

「ありがとうございます。」

「あまり期待しすぎないように。」

「わかってます」

ーーーーーーーーーー

その後僕はディレクターと軽く昼食を食べに行き、家に戻った。

「明日は…予定なしだな。よし、明日行こう。準備もしないと。」

仕事がレポーターと言っても普段はフリーターでデザイン系の仕事もやっていて、悠々自適な暮らしができている。…まぁ周りからは賛否両論あるけど。

「よし、準備できた。今日はもう寝ようかな。」

ーーーーーーーー

電車に揺られている。最近悪夢ばっかりだったが今日は快眠だった。だからとても気分がいい。今日もこの前と同じ××××町に行く。そういえば、前に会ったあの女性とはあんまり喋ってなかったな。どんな人なんだろ。そういえば、トンネルの事も何も聞いてなかったなー…。二度手間になってるし…今度はちゃんと計画を練ろう。そんな事を考えていたらいつの間にか××××町に着いていた。

「うーん…さすが、いつ来ても空気がいいな」

軽く伸びをして、××××町で人を探す。今日は聞き込み調査という形でやっていこう。…見るからに人がいない。この間は所々人がいたんだけどな…。今日は何か大事な日なのだろうか…。

しばらく歩いていると人が集まってるのが見えた。目を凝らし遠くから見ると何かに祈りをしているみたいだった。なんだろ?そう思った瞬間、皆が一斉に棒を持って何かを何度も何度も叩き始めた。その何かは見えなかった。けれど、その行為は一瞬で終わった。その棒の先端には赤い何かがついている。

刹那的で不気味な出来事に驚いた僕は声にもならない程の悲鳴を出した。すぐに逃げたいはずなのに、目は棒に釘付けになっている。この感覚は廃校の時の体験とやや似ている気がした。1分程止まっているとあの時の女性が話しかけに来てくれた。

「大丈夫?ってあの時のテレビのやつじゃん。どうしたの?」

肩を叩かれ、この前と同じように話しやすい口調で声をかけてくれた。

「え、えっと…なんて言うべきかでしょうか…。もうちょっとだけコノコノサマについて調べようかなーと思いまして…。」

「ふーん? そうなんだ。…前でなんかわかった事とかあんの?」

「前でわかった事はかなり少ないですね…。人形旅館はあまり幽霊が出てくるところではなかったので…。」

ディレクターが考察したあのぬいぐるみの中に入っている骨、それから旅館経営の事については言わなかった。言ったら長くなりそうだったし。

「そっかー ねぇ」

「どうかしました?」

「コノコノサマの事を調べてるんでしょ?いい情報持ってるんだけどー……気になる?」

軽い上目遣いで煽るように聞いてきた。

「気になりますね」

「だったら、教えてあげるよ。」

彼女は僕に向かって軽薄に微笑んだ。

「本当ですか?」

「ただし…私の言うことも聞いてね?」

「…わかりました。」

彼女の言動の意味をこの時はまだ分からなかった。

「それじゃあ、早速…」

「待って」

僕の顔の数センチ前に彼女の小さな手のひらが出される。

「ここ暑いからさ、私の家来てよ。」

「確かに…そうですね。わかりました、行きましょう」

今日の天気予報は曇り後雨、微妙な天気ではあったが湿度が70%だった為、陽の光はでていないが僕が今着用しているTシャツは汗がびっしり付いていた。

「決まりだね。とりあえずこれで汗ふきなよ。ちょっとは気持ち悪さ減るかもよ?」

汗ふきシートと白いタオルをカバンから取り出し、僕の首に巻き付けてくれた。その行動から察するに、彼女な相当な世話好きなのが伝わってくる。

そのような軽い会話をして彼女の家まで向かっていった。

ーーーーーーーーー

「それで、何が知りたいの?」

彼女の家の座敷に連れられ、テーブルを挟み、僕と彼女が向かい合わせになっている。彼女の質問を返さず、僕はテーブルの上にあった、柔らかいふにゃふにゃのせんべいを口に入れ、出された麦茶を一気飲みした。

「…お腹空いてたのはわかるけど、私の質問に答えてくれる?」

僕の行動に不満を持っているかのように言った。ふと目と目が合う。

「まず、コノコノサマは君たちで言うとこのどうゆう立ち位置なんだい?」

「コノコノサマは恐れられていた。それは今も。封印しなきゃって、みんな棒を持って叩くの。コノコノサマが生きていた時の遺体をね。」

「…君は見たことあるの?」

彼女が麦茶を口に含み、数秒経った後に飲み込んだ。

「見た事あるよ。なんならその時どんなのが出たか書いてるし、多分それネットで上がってるよ。」

「?」

……聞いた事がある。トンネルを調べた時に出てきたあの中学生が書いた絵…。まさか

「まさかだけど…入場美香さんだったりする?」

彼女と中学生の時の写真があまりにも不一致だったため疑心暗鬼になっている…が

「あれ、知ってたの?知らないかとずっと思ってたわ…。 まぁ調べ尽くしてんだったらそりゃ知ってるか」

馬鹿にするように笑われ、少し苛立った。 もう一度せんべいを食べたが、物笑いの種にされたからか、2度目は味がしなかった。

「じゃあ話は早いですね。入場さん、率直に聞きますけど、コノコノサマに追いかけられましたか?」

「ううん、追いかけられてないよ。願ったからね。」

「は? 」

思わず声に出してしまった。おかしい。願ったら死ぬんじゃないのか?あの菜津ちゃんの手紙は嘘だったのか? もうどうなってもいい。この人に僕が体験した事全部言おう。

「急にどうしたの?私変なこと言った?」

「…話を変えましょう。僕があのトンネルに入って体験した事…他にコノコノサマに関わる事を全部言います。」

「…わかった。」

その後僕は入場さんに僕が体験した心霊現象、僕が知っているコノコノサマの情報を余すことなく語った。最初は驚いた表情を見せていたが次第に眠くなったのかボーッとしていた。

「これが僕が知っている情報です。疑問点があれば教えて頂きたい。」

彼女は僕から目を背けて、自分の横髪を弄りながら話した。

「色々あるけどね…。まず、私に関する情報は正しくないよ。受験の時は確かに忙しかったけど、別に自殺する程でもないしね。…なんなら他殺されちゃうかもね。私はただ、妹を生き返らせたいなって思っただけだから。」

彼女の目線が仏壇の方へ向く。そこには小学生らしい女の子の写真があった。

「こちらの方が妹さん?」

「うん、こいつも小6の時、拉致されちゃってな…。下校中だったし、1人だったからいつかはなるかななんて少しは思ってたけど。はー…やっぱコワイモノは見ちゃダメなんだねー…。」

「え?」

コノコノサマはコワイモノだからコノコノサマじゃないのか?別人?やばい頭が混乱してきた。その様子を見て彼女は心配そうな顔をしてきた為軽く咳払いをし、話を続けた。

「コワイモノとコノコノサマは違うのですか?」

「…私が近所の爺さんに聞いた話しただとね、コノコノサマとコワイモノは全くの別物でコノコノサマは昔凄まじい人気があった女優で、コワイモノは犯罪者…小6の子供を拉致する人の事、ほら、全くの別人でしょ?」

麦茶を自分のコップに注ぎ、少量を飲んだ。扇風機は回っているがエアコンはない。外よりかは大丈夫だけど、エアコンに慣れている僕の体じゃ扇風機で満足できない。とにかく蒸し暑かった。

「疲れた。少し話しすぎたね。けどあとちょっとだけでしょ? もう少し耐えてね。」

彼女の首筋に汗が流れ落ちた。彼女も蒸し暑いと思っているのだろう。

「……2人の共通点とかってないんですか?」

「ないね。血縁関係的なところは。でもあからさまにその犯罪者コワイモノ女優コノコノサマに好意を持っていた。それだけは言えるね」

「思ったんですけど、そのコワイモノは生きてるんですか?今も拉致事件起きてますし…。」

彼女の目線が段々落ちていく。次第に目の光がなくなり、言いずらそうにしながらもボソッと独り言のように呟いた。

「うん…生きてる。あの犯罪者が11歳の時からその女優をそうゆう目で見てた。確かそん時の女優の年齢は24だった気がする。その点については君の方が知ってるんじゃない?」

「……その女優さんと他の男性の方との体の関係を持っていた事は知っています。」

「あぁ、その時だったんだ。あのクソ親父との不倫発覚したの。あーでもそんぐらいだったね。」

「クソ親父?」

親父って事は、彼女のお父さんって事だよな…。てことはあの残酷な殺人事件の犯人は…

「あー…うん。不倫してたの私の親父なの。そこまで気づいたらわかるかも知れないけど、あの殺人事件の犯人…私の妹なんだー。まぁ虐待受けてたし、仕方ないよね。」

「そうなんですね…」

彼女の目が死んだ魚のように生気がなかった。それはそうか。これまでずっと親に虐待をされながら耐えてきて、それで妹が罪を犯して自分と祖父母で頑張ってきたんだもんな。見るからに今は大学生?っぽい見た目をしているけれど幼少期にこれだけの心の傷や体の傷を負っていたらさぞ辛いだろう。

「あぁもう! こんなしんみりした話をしたい訳じゃないの!」

いきなり自暴自棄になり、せんべいをこれでもかと言う程口の中に詰め込み、少し涙目になっていた自分の目を服で拭った。

「…ごめん。急に暴れだして。てかもうこんな時間だ。」

時計の針を見ると午後の5時半過ぎを指していた。もうそろそろ帰らないとな。

「それでは僕はこれで、また来るので次は菜津ちゃんの話をしましょう。」

「うん。あ、そうそう。私の言うこと聞いてくれるんだよね?」

「あぁ、そうだった。どうぞ、いつでも聞きますよ。」

すると彼女は「ちょっと待ってて」と言って違う部屋へ向かった。数分突っ立っていると彼女が戻ってきた。両手にコートを持っている。

「なんですか?それ」

「これは犯罪者コワイモノ私物だよ」

「!」

犯罪者の私物…もしかしたら、これを警察に渡すとなにかの手がかりになるんじゃ! これをテレビで流せばすぐに捕まるだろうし…

「お願い、これは絶対他の人に渡さないで。」

彼女が訴えるような口調で言った。その物…焦げ茶色のコートを握っている手は微かに震えている。

「理由は?」

「私が犯罪者に殺されてしまうから。ここには1年に来るか来ないかで犯罪者が泊まりに来るだよね。別にあいつの家ではないんですけどね。たまに私物などをここに置いて行くことがあるんだよ。もしその私物をテレビにだされたら…。多分というかまぁ絶対私の命は無くなるだろうね。」

「そうですか…。わかりました、今日あったことはテレビの方々には何も話しません。もちろんこれから入場さんが話すこともね。」

彼女の目に少し光が浮かんだ。さっきの目とは大違いだ。

「ありがとう!本当に!本当にありがとう!」

何度も何度も頭を下げる。そんなに僕の事信用してなかったのか…?

「それじゃあまた来るから。その時には涼しい時にしようね。」

「はい!」

そんなこんなで今日の聞き込み調査は幕を閉じた。スマホを開くと18:14と記されていたのと、数件ディレクターからメッセージが届いていた。ディレクターに話す事は何も無いなーと思いつつ、電車に乗った。

…………あれ?僕が何も情報話さなかったらディレクターが知ってる情報聞けないじゃん。

…まぁいっか














雨降る夜は奴が来る

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