「いい感じに柔らかく育てるのは、俺の役目なんだけどなぁ……」
「そんな事で残念そうにぼやかないでくださいよ。それより、春日さんってすっごい鍛えてて、めちゃくちゃ格好いい体をしてたんです! お腹なんて引き締まって割れてたんですよ? 凄くないです? 私、あれを目指したいな」
「えぇ……」
はしゃいで言ったのに、尊さんはめちゃくちゃ嫌そうな声を出す。
「なんですか、その返事は」
「……朱里はフワッと柔らかい抱き心地が最高なんだから、あんまり頑張らなくていいよ」
「もー、女子ウケする体になりたいんです」
「……尊ウケしてくれよ」
けれどそう言われて、まんざらでもない自分がいる。
評価されているお腹と言うけれど、そうお肉がたっぷりついている訳でもない。つまんだら……、ちょっと……主張してくるぐらいで。
何せ胸元にボリュームがあるものだから、へたに服のチョイスを間違えると、本当に大柄に見えてしまう。
だから多少胸元が目立ってセクシーと思われようが、胸元とウエストの差をつけて「お腹はちゃんとへこんでますよ!」というアピールをしている。
けど、人によってはいやらしい目で見てくるので、悩ましい問題でもある。
ていうか、そういう目で見てくる人は、何を着てもそう見てくるけど。
(……あ、痴漢に遭った愚痴を女子会で言えば良かった。……また今度にしとこ)
二人の事を思いだして微笑んでいると、尊さんがクスッと笑って言った。
「お前、だいぶ明るく笑えるようになったよな。いい傾向だと思う。前は割とツンとしてたから」
「あ……、ですね」
確かに、この数か月でかなり表情豊かになった自覚はある。笑った回数がとても多い。
「でも、全部尊さんのお陰ですよ?」
「ん? そうか?」
「尊さんが私を明るくしてくれました。……それに尊さんも最近、笑顔が明るくなったと思います。心から楽しそうに笑ってるなって思うんですが、……その解釈で合ってます?」
「お陰様で、毎日楽しいよ」
その言葉を聞き、胸の奥から喜びがキューッとこみ上げた。
「やった……!」
私は呟いて、ぐっと小さく拳を握る。
「最初に口説いてきた頃、皮肉っぽい笑い方しかしなかったじゃないですか。『自分は幸せになれない』って諦めている感じで、あの笑顔を見ていると凄く悔しかったんです。だから私『絶対、尊さんを幸せにしてやる』って思ってました」
それを聞き、尊さんはクスッと笑った。
「ありがとう。朱里は俺の招き猫かもしれないな」
「両手で招いてる、レアな奴ありますよね」
「あー、テレビで見たかも」
そんないつも通りの話をしながら、私たちは三田のマンションに戻った。
**
「ただいまー……、……ん?」
玄関に入った瞬間、尊さんに手を引かれ、壁に押しつけられた。
「ちょ、ちょちょちょ……、ん、ん……」
そのまま、ちゅ、ちゅと唇をついばまれ、抱き締められてキスが深くなっていく。
舌先で歯列をなぞられ、前歯の裏側を探られた時は、ゾクッとして腰を引いてしまった。
すると尊さんは私の脚の間に太腿を入れ、グッと押してくる。
(ちょっとー!!)
私は完全にスイッチの入った彼にタジタジになり、ねっとりと濃厚なキスをされ、酸欠気味になってクラクラしてしまう。
「あ……っ、は、はぁ……っ」
酸素を求めて口を開くと、そのタイミングで舌をヌルヌルと擦りつけられる。
「ん! んぅ……っ、う~~~~……」
苦しくなってトントンと尊さんの肩を叩くと、彼は口から銀糸を引いて顔を離した。
その目にはすでに情欲が宿っていて、彼が私を激しく求めている事を知った。
「……嫉妬してないって言ったじゃないですか」
「『どちらともいえない』と言った」
屁理屈を言われ、私は溜め息をつく。
「日曜の昼間にセックス、どう?」
尊さんは壁ドンして妖艶な表情で尋ねてくる。
そんな彼にキュンとしたのは言わずもがな、一晩我慢させていたと思うと断れない。
「……お風呂入ってからなら」
条件を出すと、尊さんは私にチュッとキスをしてから「お湯を貯めてくる」と上機嫌に中に入っていった。
コメント
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尊ウケ....(笑)😁 アカリンは今のままが最高だね~‼️👍️💕