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とにかく一度調べてみようと思い、スマホを取り出して手入れ方法を検索すると
画面には「こまめな乾拭きが基本だ」と出てきた。
他にもいくつか専門的な手入れ方法は出てきたが、下手に素人が手を出すよりは
その基本に沿ってやろう。
そう思った僕は、表面にうっすらと積もった埃を優しく拭き取るために
まず手前のトロフィーを、台座から両手で慎重に取り外し
お気に入りの柔らかいハンカチを使って丁寧に拭くことにした。
取り出したトロフィーを、安定したショーケースの上に一度置いて
指の跡が新たにつかないようにハンカチの端を使いながら、細心の注意を払って丁寧に拭いていく。
少しずつ輝きを取り戻していくトロフィーを見て、僕の心もどこか満たされていくようだった。
◆◇◆◇
それから数十分後
最後に、敦がショコラティエとして1番最初に貰ったという
彼にとっても特に思い入れの深いに違いない
小ぶりだが美しいトロフィーを完璧に拭き終えた。
僕は、達成感に胸を膨らませながら、それを元の台座に戻そうと両手で持ち上げた。
そのとき───
ほんの一瞬、指先の力が上手く入らなかった。
つるりと滑らかな金属の感触が手からすり抜け、重力に引かれていく。
ガシャン、と静かな部屋に痛烈な音を立てて、トロフィーを床に落としてしまったのだ。
「……っ!」
心臓が跳ね上がり、呼吸が止まる。
慌てて床に膝をつき、祈るような気持ちで拾い上げると
光にかざした脚の部分に、一本の細いヒビが入っているのが分かった。
幸い、真っ二つに折れているわけではないようだ。
割れるのだけは免れたことに安堵したのも束の間
じわじわと自分の犯してしまった罪の重さが脳裏を支配し、全身の血が凍り付くようだった。
指先が小刻みに震え出す。
「安心してる場合じゃない…割ってはないけど…しゅんが1番大切にしてるものに傷つけちゃうなんて……っ」
やってしまった。
取り返しのつかないことを。
その猛烈な罪悪感に苛まれた瞬間
視界が歪み
「余計なことしやがって───」
また〝あの声〟が脳裏で恐ろしいほど鮮明に反芻した。
耳を塞いでも、脳内で直接再生される忌まわしい記憶。
浜崎くんといた頃に、何か行動を起こしては失敗し
その度に言われ続けた言葉たちが、まるで今この瞬間に起こったことのように生々しく蘇ってきた。
胸が締め付けられて呼吸が浅くなる。
冷や汗がだらだらと背中を伝う。
思考が完全に堂々巡りになって
どうしよう、どうしようと頭の中が焦燥感と恐怖だけで埋め尽くされる。
(…ごめんなさいごめんなさい!)
#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
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