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めあ
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#ネタバレ注意
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#イケメン
蒼乃 月
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クッションとかそういう藤子の家の様に温かみのある小物はまったく無く、余りにもスッキリしすぎていて、いかにも独身男性の家だ
そしてまだ新築の樹脂の匂いが家全体にこもっている、たしかメビウスタワービルは去年完成さればかリだ、藤子が「お部屋探検」を楽しんでいると彼は黒のTシャツと紺のジーンズに着替えてきた
腕や胸の筋肉がTシャツにぴったり張り付いているのに嫌でも目がいく・・・スーツ姿の彼の体はほっそりしていると思っていたが、やはり運動選手だ、とても鍛えられていた、ダークスーツの下にはこんな素敵な肉体が隠されていたのだ
彼がオープンキッチンに向かったので、藤子もキッチンカウンターの向かいに座った
「あなたのおうちでディナーをご馳走してくれると聞いた時は驚いたけど、本当にお料理をするのね」
彼は紺色のデニムのエプロンを付けると、冷蔵庫からシャンパンを出してウィンクした
「色々考えたけど、何が藤子ちゃんの好物か分からなかったから、君が好きなものをその場で作るのが一番かなって思ったんだ」
藤子の目が輝いた
「まぁ・・・そんなこと考えてくれてたの?」
「料理が趣味なんだ、魚と肉ならどっちが好き?」
ほほ笑みながら藤子は目の前で二つのグラスに注がれるシャンパンの泡を覗いて言った
「お魚かしら」
「いよっしゃ!すごくいいサーモンが手に入ったんだ!さっそく取りかかろう!」
パンッと彼が手を叩いて言った
クスクス・・・「喉スプレーが素敵なディナーになって返って来たわ」
・.。. .。.:・
リビングには間接照明だけで壁にはエーゲ海の景色、ステンレス製のカウンターキッチンで藤子の為に素敵なディナーを素敵な彼が作っている・・・いったい自分は前世でどんな徳を積んだのだろう
藤子がうっとりと眺めていると文也は慣れた手つきでアスパラガスを刻み、コンロの上で熱くなっているフライパンに放りこんだ、オリーブオイルを少々加える・・・藤子は調理カウンターを挟んで、文也の向かい側に座り文也に出されたシャンパンを少しづつ啜った
素敵な男性に料理をして饗してもらうなんて、なんて贅沢なのだろう、こんなにワクワクする気持ちは久しぶりだった、彼が包丁を手にかがむと、一房の前髪が額に落ちて目に入りそうだ
クスクス・・・「目に髪が入るわ」
「縛って、藤子ちゃん、今手が離せない」
藤子がクスクス笑いながら、自分の手首にはめていた、髪ゴムで文也の前髪を縛る、おでこが全開で、前髪ちょんまげでもどうしてこんなに可愛いのだろう、そしてキッチンでの仕事を心得ている男性には、独自の色気があるのも初めて知った
「料理が好きなんだ、一人でも休日は、良く作るよ」
文也はフライパンから視線を上げ、藤子の表情を見やった、途端に藤子が熱く見つめているのを彼に気取られ、思わず視線をそらしてしまう
何か不思議なエネルギーが二人の間で発散されている・・・それを肌に感じた藤子はごまかすように大阪の夜景を見渡せるベランダを指さした
「素晴らしい眺めね。外に出てもかまわない?」
文也は微笑んで頷いた
「もちろん、出来上がるまで好きなようにくつろいで」
ベランダに出ると南の方から吹いてくる涼しい風を感じた、やはり35階だ、風がとても強い、ふとタワーマンションのベランダは洗濯物が干せないだろうなと所帯臭い事を考えた、きっと彼の家の洗濯機は、藤子の憧れの全自動乾燥機付きの洗濯機に違いない
手すりにもたれ、街の明かりを見つめながら持って来たシャンパンを啜った、今はすっかり彼のペースに翻弄されている自分も悪くないと考えていた
ついさっきまでは、彼に誘われた「おうちディナー・デート」を断わるつもりだったのに、なんだか彼の口車に乗せられて気が付けば家までホイホイ着いて来ていたなんて・・・やっぱりディナーを食べたらさっさと帰ろう
断る理由ならいくらでもあった、自分は30歳で結婚適齢期を過ぎようとしている、今度お付き合いをする人は真剣に結婚を考えたい人に決まっている、結婚して子供を産むならば、自分はもう後は無い、信二のせいで20代の後半全てを無駄にしてしまった・・・なので6歳も年下の文也はいくら素敵でも現実的ではない、自分はもう遊びの恋をするには歳をとりすぎている
それでも、もう一人の自分が言った
―あんな素敵な彼が自分に好意を寄せてくれているのだから、年下だろうと何だろうと今を楽しめばいいのよ―
メビウスの中では今の藤子の立場になれるなら何でもするという女性社員が沢山いるのに、特にセクシートリオの中では文也が一番人気だと受付嬢の双子が言っていた
男友達でも一夜のアバンチュールでも、もっと軽く考えたら・・・そこでまた信二の顔が浮かび、やっぱりこんなことをしている自分はどこか心が拒否していた
その時、いつの間にかベランダにいる藤子の後ろで文也が来ていて言った
「あと5分もすればディナーが出来上がる、中にはいらない?」
手すりにもたれる藤子に覆いかぶさるように文也も手すりに両手をついて言う、ついぴったり寄り添っている背中を意識してしまう
「ありがとう、本当にここからの眺めは素晴らしいわ」
彼は謎めいた表情で藤子に視線をうつした
「でも・・・目の前の眺めほど素晴らしくないよ」
じっと彼が見つめてくる・・・途端に心臓がドキドキする、藤子は照れ隠しに笑って文也の腕をパチンと軽く叩いた
「またまた~冗談ばっかり、お姉さんをからかわないで!」
「いてぇ~・・・本気なのに」
分かってもらえなくて、シュンとしてるちょんまげヘアスタイルの彼は可愛すぎた、よく考えたら生涯でこんな若くて魅力的な男性と素敵なディナーを食べれるなんて、そんな機会はそうそうないだろう
―そうね・・・あれこれ考えないで、今はこの男性と同じ時間を少しだけ楽しもう―
そう思って藤子は彼のあとから部屋に入った
コメント
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すごくドキドキするエピソードでした!文也さんが料理をする姿も、前髪をちょんまげに縛る可愛さも、もう眼福すぎて……。藤子さんの「年下だから」と引いてしまう気持ちと、でも「今を楽しもう」と踏み出す心の揺れが、すごくリアルで共感しました。ベランダでの「目の前の眺めほど素晴らしくないよ」って、心臓止まるかと思いました。二人の距離が縮まる瞬間が、じっくり描かれていて素敵です。