テラーノベル
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6話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
それから、 レトルトは少しずつ話すようになりました。
まだ瞳はどこかうつろで、 何を考えているのか分からない時もあったが時折クスッと笑う仕草を見せるようになりました。
朝、目を覚ませば。
小さな声で、
『……おはよう』と。
ご飯を食べる前には、
『……いただきます』と。
そして、
『……キヨくん』と名前を呼ぶ。
少しずつ、 本当に、少しずつ レトルトは変わり始めていました。
その変化が、 キヨは嬉しくてたまりませんでした。
名前を呼ばれるたびに、 胸の奥がぽかぽかとあたたかくなるようでした。
けれど、その一方で一一
レトルトは何者なのか。
何にあんなにも怯えていたのか。
麦畑で倒れていたあの夜 レトルトに何があったのか。
気にならないはずがありませんでした。
けれど――
キヨから尋ねることは、 決してありませんでした。
レトルトが話したくなるその日まで、 待とうと決めていたのです。
「レトさん、ちょっと出かけてくる!」
キヨは小麦の袋を肩に担ぎながら 元気よく振り返りました。
「近所のおっちゃんに小麦頼まれてたんだ!ちょっと 届けてくるわ!」
レトルトは、 こくりと小さく頷いて 静かに手を振ります。
その姿に、 キヨはにっと笑って家を飛び出しました。
おじさんの家へ着くと――
「よー!おっちゃん!」
声をかけたキヨの耳に、 低い声が聞こえてきます。
「んー……なるほどなぁ……」
おじさんは新聞を広げ、 難しそうな顔をしていました。
「何読んでんの?」
キヨがひょいっと覗き込むと、 おじさんは新聞を指差します。
「隣の国の国王が死んだんだとさ。 まだ若かったはずなのになぁ…… かわいそうになぁ」
「へぇ……」
あまり興味なさそうに返事をしながら、 キヨも新聞を覗き込みました。
――その瞬間。
キヨの動きがぴたりと止まります。
そこに載っていた、幼き 国王の写真。
金色の髪。
白い肌。
整った顔立ち。
けれどどこか虚ろな瞳。
まだあどけなさの残る写真でしたがキヨには見覚えがありすぎる顔でした。
「……え?」
キヨの喉が、ひゅっと鳴ります。
「……これ……」
言葉を失ったまま、 キヨはその写真を見つめていました。
(レト……さん?)
キヨの胸が、
どくん、と大きく跳ねました。
「……おっちゃん、この子どもが国王なの?」
震えそうになる声を抑えながら、 キヨは尋ねます。
「んー、これは子どもの頃の写真だなぁ。今はもう少し大きくなってるんじゃないか?」
おじさんは新聞を覗き込みながら、 ゆっくりと答えました。
「前の国王は殺されたんだよ お妃さんと一緒にな。しかも、その 犯人はまだ見つかってねぇ。
それで、一人息子が国を継いだんだ」
キヨは黙っておじさんの話を聞いていました。
「その時の戴冠式、俺も行ったけどなぁ……」
おじさんは、 遠い目をして思い出します。
「本当に小さな子どもでな….。 こんな子に国王なんか務まるのかって 思ったもんだ」
キヨの頭の中で、 点と点が繋がっていきます。
「……この子、死んだの?」
恐る恐る尋ねました。
おじさんは新聞をトンと叩き、
「新聞にはそう書いてあるなぁ。 次は国王の叔母が国王になるらしいぞ」
キヨの背筋に、 ぞくりと嫌なものが走ります。
(……まさか)
「……その国王、名前……なんてーの?」
キヨは 祈るような気持ちで聞きました。
おじさんは新聞を目で追い、 何気なく答えます。
「えーと……」
「レトルト。レトルト王、だとさ」
その瞬間――
キヨの中で、 何かが音を立てて崩れ落ちました。
「……そ、そっか!」
キヨはひきつった笑顔で頷きました。
「ありがと! 俺、まだ畑あるから帰るわ!」
おじさんの返事も待たずにキヨは家から飛び出しその まま駆け出します。
走りながら、 頭の中はぐるぐるとしていました。
――レトさんが、国王だった。
でも….
なんで、あの夜。
麦畑で倒れていたんだ?
あの怯え方は、何だったんだよ。
あの黒い模様は?
それに、死んだって….。
どういうことだ?
疑問ばかりが頭を埋め尽くします。
息を切らしながら、 キヨは家へと戻りました。
勢いよく扉を開けると――
レトルトは、 ベッドに腰掛けていました。
膝の上で手を重ね、 どこか寂しそうに 俯いて
まるで、 置いていかれた子どものように。
「……ただいま、レトさん」
その声に、 レトルトがはっと顔を上げます。
そして――
少し目を細めて、 にっこりと笑いました。
『……おかえり、キヨくん』
小さく、 優しい声。
その姿を見た瞬間、 キヨは たまらずレトルトに抱きついていました。
家までの道中、 キヨは レトルトに真実を聞こうと思っていました。
国王だったこと。
あの夜のこと。
怯えていた理由。
あの黒い模様のこと。
聞きたいことは、
山ほどあったはずなのに。
けれど――
ぎこちなく笑うレトルトを見た瞬間
そんなことは どうでもよくなっていました。
ただ…
レトルトと一緒にいられればいい。
レトルトが笑ってくれるなら。
辛い過去なんて、 思い出さなくていい。
キヨは、 強く抱きしめながら思います。
突然抱きつかれたレトルトは、 驚いたように目を見開きました。
キヨの優しいぬくもりに包まれて、
胸の奥が、ほんのりと熱くなるのを感じます。
――この感じ。
懐かしい。
嬉しい。
もっと、抱きしめてほしい。
胸の奥に閉じ込めていた気持ちが、
少しずつ、少しずつ 溶けるように蘇り
レトルトはそっと手を伸ばして――
キヨを、
抱きしめ返しました。
続く
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ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ いいっ!すごくいいっ! めちゃくちゃ好きっ!! そうそう!私はこれを求めていたのだっ ただそばに居たい。過去も未来も全て受け止める。そんな愛が大好きなんですっ ありがとうございます( ܸ. .)"