「アガパンサス?だっけ」花を生け終えて、花言葉を調べる
「恋の訪れ、誠実な愛、知的な装い……ヨーロッパではラブレター代わりに送られる花…」
(ラブレターね。青色なことも強調してたな…)
「はぁー……………やられた」
大きくため息をついて、つい項垂れる
返事くださいのメッセージが来たことで、薄々勘付いていたけど、これはもう決定的だ
まさか、あの恥ずかしがり屋の翔太側から先に、アクションがあるなんて思いもよらなかった
しかも、こんなにも早く
流石に何年も見てきたんだから、全く脈がない状態だったのが、なんとなく最近は意識されているなっていう手応えは感じていた
夏頃の朝の番組に翔太が来た時も、ふわふわと可愛い笑顔でご機嫌に話してくるのを見て、顔がニヤけそうになるのを必死に我慢していた
この前の水族館デートの誘いに踏み切ったのだって、翔太が俺のことを見てくれ始めたのを、なんとなく感じることができたからだ
それでも、長すぎる片思いと、何人ものメンバーの失恋を横で見てきた経験とが、足踏みをさせて慎重に事を運ばせていた
翔太は自分から想い人を遊びに誘うことすらできないタイプで、自分から行くまでには相当な時間がかかる、横目に見てきた経験ではそう判断していた
めめと康二も翔太にアプローチしていることは分かっているから、悠長なことはやってられないという焦りもあったが、その焦りのせいで手順を間違えれば、翔太の心は一気に離れるリスクがあった
だから、俺としては、あと1〜2回は2人で遊んでじっくり様子を見てから、告白しようかと思っていたのだ
ところが、ここに来て、翔太にしてはかなり大胆な、ほぼ告白のようなアクションを起こしてくれた
しかも花言葉だなんて翔太らしくもない……むしろこういうのは俺の方が好きな類だ、とそこまで考えたところで思い至る
あぁ、そうか、俺が好きそうなことを一生懸命に考えてくれたのだ
こうなってしまったからには、自信のない翔太が勝手に諦めてしまう前に、とにかくスピード勝負で、でもちゃんと本気が伝わるように応えないと
翔太は今頃きっと、ソワソワしたり、不安になったりと1人で勝手に一喜一憂しているのだろう
共有カレンダーを開いて予定を確認する
俺の明日の仕事は午後から、翔太も夕方からだから今日の夜はゆっくりできるはず
近場の花屋を検索して片っ端から目当ての花があるか電話する
3軒目で見つかったので花束を依頼して、今度は翔太に電話をかける
電話の前で深呼吸でもしているのだろう、十数秒コール音を待ってから、少し硬い声が耳に届く
「も、もしもし、あべちゃん?」
「うん、翔太、お花ありがとう。すごくキレイなお花で嬉しい」
「う、ううん、どういたしまして」
「実は俺も翔太に渡したいものがあったんだ。だから翔太が大丈夫なら、今からもう1回会ってくれない?」
「え!そうなの!……ごめん、さっさと帰っちゃって」
声が萎むのがわかったので極力優しく問いかける
「それは謝らなくていいから。翔太、今はどこにいるの?」
「もうちょっとで家に着くとこだった」
「じゃあ車で迎えにいくから家で待ってて」
「分かった。ありがと」
「うん、着いたら連絡するから、あとでね」
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