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このグラス、この紙、このボールペン、このテーブル、その手、その腕、その体、あの時計、この時間、あの窓、あのカウンター、あの人達、会話の声、このジャズ、あの入口のドアノブ、あのポスター、このクーラーの音、この匂い、この湿気、この酒の味、これ全部、数ある現実のうちのほんの一例、ほんの一枚の切り口だってことだ。もちろん、君が「その服を着てる」こともその同じ一枚に入る。
ところでそれ、どこで買った?
渋谷です。最初はこういう色じゃなくって、もっと普通の、薄いブルーっぽいのを買おうとしたんです。実際、そういうのを選んでレジまで行きました。そしたら店員さんが、一応こういうのもあるのでお見せしますって、入ったばかりの最新のシャツとやらをわざわざ奥から出してきてくれたんです。「ただ、あいにくブルーはないんですよ」と言ってました。
ということは、「その服」を選ばなかった可能性もあったわけだ。
もちろん。第一、最初に買おうとしてたのは別な色、別な襟の形、別なブランドでしたからね。
でも、君は他のじゃなくてそれを選んだ。
ええ。試着したらサイズがぴったりで、結構気にいったんです。
その瞬間から「そのサイズの白地に黒いストライプの入ったそのYシャツを選んだ現実」に限定された。
限定、ですか。