しかも、今日だって別なのを着てくる可能性だってあったはずだ。
……どころか、クローゼットを最初に開いたときは、最近ずっと着てるヤボいいつものを手に取りました。これはまだ先週買ったばかりなんで、もったいないなと。着てもすぐに汗まみれになりますもん。
なのに、なんで今それ着てる?
もったいないって言ってちゃ、いつまでたっても置きっぱですからね。夏用のシャツだから、今着なきゃ来年になっちゃうなと突然思って。
私も君も「この現実」、つまり「高橋君がその服を着てる、この現実」を、宇宙の中の唯一の現実だと思ってる。現に今、目に見えてさわれて匂って質感を感じとれるんだからね。
まさに「現実の三角形」ですね。
でも、もし「この現実」が4次元世界を切り取った「3次元の切り口」の、無数にある中のたった一つに過ぎないとしたら?
……その切り口ごとに、現実が違ってるってことですか。
そう。同じ真実でも切り口ごとに現実が違うってことは、「この現実」も真実であるけれども、「別な現実」も真実だってことだよ。そうなると、君がその服を着てるのも現実、別のを着てるのも現実ってことになる。
……同時に、いくつもの現実?
そう。別な切り口では別な現実が、他の切り口では他の現実が。この現実、この世界、この宇宙しか知らない我々には、理解に苦しむところだな。
同じ3次元なのに、「これ」以外にも?
それも、無限にね。
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