テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「才花ちゃん、トレーニングもヤンチャ系?」
「まさか。おとなしくゆっくりストレッチみたいなもんだよ…こうして…」
ゆっくりと体を反らせて床に手をついて足で円を描き、ゆっくり片足ずつ着地する。
「ゆっくりの方が難しいだろ?」
「別物だね。これはストレッチの感覚だもの」
羅依が私の様子を窺っているようだが、本当にどこも何ともない。
「膝の細かい動きは以前のようにいかないけどね」
「サイサイの言う‘以前のように’は世界のトップレベルだからね。もう普通の一般人のレベル以上に上手に踊れるだろうね。サイサイは何が踊れるの?ヒップホップだけ?」
「レゲエ」
「レゲエ?」
「そう、レゲエダンスは一応オーケー。遊びでやってたから」
「レゲエダンスがイマイチ分からない…」
タクがスマホを出して検索を始め、私が着替えに行こうとしたとき
「こんにちは~。えぇ……Kingと緑川さんだ。こんにちは。あ、才花さんのお迎えですか?」
香さんがジムに入って来た。
「木村さん、まだ30分も早いので出てもらっていいですか?」
「先生、そんなこと言わないで下さいよ。他の人でなく、よく知った才花さんなので待たせて頂きます。邪魔はしませんから」
「そういう問題でなく、こちらの休憩の都合とか、パーソナルレッスンなのでデリケートな体の相談などがある場合も考えてもらえませんか?」
「私と才花さんの仲なんで、ね、才花さん?」
「…はい、こんにちは」
「こんにちは。才花さん、さすがですよね。ボディラインが神です」
「……着替えて来ます」
「私も着替えます」
「才花、そいつ先に着替えさせろ」
羅依がそう言うと
「才花ちゃん、これ?こんなの?」
とタクがスマホを手に手招きする。
「木村さん、着替えて下さい。早めに始めた分はもちろん早めに終わりますが、どうぞ」
香さんは一瞬考える素振りのあと、更衣室に向かった。
「レゲエダンスってこんなの?」
「うん」
「エロいね」
「ぅわっ…セクシーって言ってよ、タク」
「腰…これ、才花できんの?」
「うん?ああ、ワイニーとか腰打ちだね。うん、これが出来れば跳んだり出来なくても、クラブでみんな上級者に見えるよね。男性もセクシーだよ?みんな、やってみれば?」
「サイサイ、ボクにレクチャー出来る?」
「えっと…腰打ち、4点でいきましょうか?」
「お願いします。サイサイ先生」
「はい?まあいいか…肩幅よりも広めに足を開いて、腰を落とした状態でリラックスして腰を回していきます」
「オーケー」
「右回りだったら、腰を右に動かすときにドンッ、後ろにドンッ、左にドンッ、前にドンッと、それぞれお尻を弾いていきます…って、私も素人ですよ?こうですね…」
「こんな感じ?」
「緒方のは硬いね」
「才花、俺好みだ」
「えぇ?何やってるんですかぁ?」
「仲間うちのお遊びですよ。サイサイ、お疲れさま」
「ありがとうございました。羅依、タク、ちょっとだけ待っててね」
「急がなくていい」
チュッ…羅依が私のこめかみにキスしている途中に、タクが
「才花ちゃん、ゆっくりでいいよ。このあとスーパーに行こうよ」
と言う。
「うん、分かった。いいよ」
「あれ?才花さんって、3人で暮らしてるんですか?」
ショッキングピンクのハイウエストレギンスとブラトップトレーニングウェアを身につけた香さんが、羅依とタクを見ると
「そんなわけないでしょ?はい、ストレッチから始めて下さい、木村さん」
緒方先生が香さんにマットを指差した。
そして
「木村さんって、サイサイと最後にいつ会ったんですか?」
と聞く。
「病院でですね」
「それって、いつ?ずいぶん前だよね?」
今度は私?
「事故直後なので、ずいぶん前ですね」
「それなのに、木村さんはサイサイのケガや体調を聞かないんだ…冷たい人ですね。ちょっとっ、ちゃんと息吐いて。ストレッチがいつまでもまともに出来なくてどうするのですか?」
先生がピリピリしていたけれど、大変だったのは私達が外に出た時だった。
コメント
1件
朝から『俺好み』いただきました🖤✨この言い方たまらなく好き!羅依限定だけど! レゲエって難しいよね?サイサイ先生(*´꒳`*)/ハイ!私もレクチャーしていただきたい!!!多分緒方先生と同じカクカクだろうけど😂タク、エロセクシーにはできないわ。 こんな楽しい空間に余計な人が…時間を守るのは大切な事だけど、パーソナルだし意味わかってないよね😮💨ケガの事には一切触れないし。 迷惑だけど、なんかしでかして撃沈させられちゃえ〜!