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ビルの2階から1階へ降りると、外のざわめきが聞こえる。
夕方なので、いつもある程度の人通りがあるけれど、何だか雰囲気が違う。
「何かあったか？」
「サイレンとかは聞こえてないよね？」
「才花、後ろ」
羅依がそう言い、タクと羅依が並んで歩き、私は二人の後ろに下がった。
「おおぉ、King」
「久しぶりに見たぁ」
「緑川さぁん!」
「カッコいいっ…!」
「香の書き込みマジだったんだ」
「パーソナルジムって書いてたよね？」
「入会したいなぁ」
ビルの前に人だかりが出来ていたようで、たくさんの声が聞こえる。
彼らは羅依とタクを見に来ているのだと、私も分かった時には二人がスーツの袖を触れ合わせるように立ったまま
「下がって」
私に小さく言う。
よくわからないけれど、2、3歩下がると、彼らも下がり、自動ドアが閉まると同時に二人が私を抱えるようにして今来た通路を逆戻りした。
「あの女、何した？」
タクが低くそう言いながら、勢いよくジムのドアを開けると
「アンタ、何した？スマホ、見せて下さい」
さらに低く告げる。
私は羅依に腰を抱かれて、タクの後ろからジムに入る。
すると、緒方先生はベンチプレスのベンチに座ってスマホを持ち、香さんはまだストレッチをしているようだった。
「どうした？」
「表」
「うん？」
緒方先生が立ち上がって、窓のブラインドに二本の指で隙間を作り
「わ、これ、コイツのせい？」
と、その二本の指で香さんを指差した。
「書き込みしたみたいだから、スマホ見せろ。内容確認したい」
「緑川さん、こわーい」
「タク、強制的に見られないから待てよ…コイツのアカウント、探せばいいんだろ？」
緒方先生が手にあるスマホを操作している間に、香さんはゆっくりと立ち上がって下ろしたままの髪を手で整えた。
元々中肉中背、日本人の標準タイプの彼女はダイエット目的でここに来たのではない。
ダイエットは必要ないから。
今、体のラインを見た印象は、以前より少しがっしりしたかな？という感じだ。
特に太ったというわけではないだろうけど、全体にうっすらと…それが筋肉ならカッコいいけど、腕やお腹の一部が見えてる状態では違うようだ。
顔が変わっていないので、たぶん洋服を着ていれば分からない程度だろう。
「あった」
「何て？」
「‘Kingの本拠地、Scenic Gemの近くのビルの2階にあるパーソナルジムで、Kingと緑川さんとご一緒してます!’だと。これ、うち的にアウトなんだけど？アンタ、即退会ね。今すぐ出て行って」
「えー？ジムの名前は出していません」
「そこじゃなくて‘ジム内の情報漏洩、拡散はしない’と入会の契約書にサインしてるだろう？うちにはプロのスポーツ選手も来るし、芸能人も来るんだ」
「ここにいる人は一般人ですよ？」
「それでも‘ジム内の情報’だろ？だいたい、パーソナルジムなのに3人一緒にトレーニングしているようなイメージを与えられたらうちには損害」
なるほど、そうだよね。
先生は更衣室に香さんを連れて行くと、ん？先生も入るの？…あ、扉を開けたまま香さんに鍵を開けさせ、荷物をぐいっと体に押しつけて持たせる。
そして肘を持って歩かせると、そのまま入口ドアから一緒に出て行った。
コメント
2件
あららぁ〜😅この人なーんにも考えてなくて、ただ「ワタシKing達と仲良いの、凄いでしょー」アピールしたいだけ…😓呆れたもんだ。 ちょっと待って〜先生！香は着替えないの？そのまんま帰すの？ショッキングピンクのハラ丸出しのピチピチ姿で？笑っちゃうですけど〜ꉂ🤣𐤔𐤔
香さん、常識がなさ過ぎて呆れる。どれだけマウントとりたいんだか😠
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