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「……天使さんは、いつ私を連れていくんです?」
彼女は大きな目を少し伏せて、こちらを見ながら言った。
「……さあ?一応は決まってるんだけど、君が早く連れて行って欲しいならもう連れて行ってもいいよ」
「んー……生きてても、つまらないんですよね」
「え?」
「私、もうすぐ死ぬじゃないですか。なのにずっと病室という名の牢に閉じ込められて好きなことも出来ない。美味しいものも食べられない」
「……」
「本当は、退院できたんですよ。残りの人生楽しめって。だけど何を思ったのか、両親は入院続けるなんて言い出すんです、いい加減にして欲しいですよね」
「ご両親は、君の体を心配していたんじゃないか?」
「……それもあるかもしれませんね。でも、家に置いておいても、ただの荷物になるやつなんて、病院に入れておいた方が楽だったのではないのでしょうか」
「ものすごいネガティヴ思考だね」
「あはは。自分でもそう思います」
強がってるけど、全然、強くない。
病担当してるとこういう人によく会う。
その人の周りをなにか薄い膜が囲っていて、けれどその膜はとても固くて、破ることは出来ない。
そこに本当のこいつが隠れてる。
「……話くらいなら、ぼくでも聞けるよ」
「ありがとうございます!でも、大丈夫です。これ以上話したら、泣いちゃいそう」
「……別に泣いていいのに」
「ダメです。私のプライドが許しませんからね!w」
「泣けば、一般的に見たら美少年な方のぼくが慰めてあげたよ?()」
「今のでもっと嫌になりました」
そう言って彼女は、目に張った薄い水の膜をぼくにバレないように掬いとった。