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ばたこ
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「じゃあこれで帰りのHRを終わるぞー 解散」
俺はのど飴を舐めながら 荷物を準備する
支度を終え 教室の辺りを見渡す
あれ 佐野くん もう教室いったのかな?
そう思いながら 教室へ向かう
彼の姿はなかった
あれ どっか寄ってんのかな
俺はのど飴を食べ終え 彼が来る前に
新曲の練習をする
彼には万全の状態で聞かせたいため
何度も練習し 声の発生練習までする
彼のために準備している自分がなぜか恥ずかしくなる
でも 彼は来なかった
もしかして忘れたのかなと 悲しい気持ちを抑え込むように言い聞かせた
翌朝
彼の席に姿はなかった
「よーし 朝のHR始めるぞー」
「あ、その前に 急な報告になるが 佐野だが」
「転校することになった」
「あーまあすることになったというよりかもう転校したんだけどな」
「親の事情で急遽決まったからみんな別れの挨拶とか出来てないだろうけど またどっか会った時に 挨拶してやれな 」
俺は先生が淡々と喋る言葉を鵜呑みにすることができなかった
心拍数がどんどん早くなるのがわかる
驚きをも通り越して 絶望した
なんで、……
なんで俺は気付けなかったんだ、
言ってくれなかったことよりも気付けなかった自分を強く責めた
今まで白と黒でしか見えていなかった学校生活が
彼のおかげでカラフルに見えていた
張っていたバリケードも彼のおかげで
気がついたらなくなっていた
彼がいなくなった瞬間に気がついた
俺の中で彼の存在がどれだけ大きくて、俺自身を変えてくれた ということに
その後の授業は魂が抜けたように集中することはできなかった
それからの日々も
いままでどうやって過ごしてきたか忘れてしまうほど 俺は心をなくしてしまった
彼にまた会いたい
毎日そう願った
彼がいなくなってから1ヶ月後
俺はまだもぬけの殻だったが
彼が居なくなってから初めてあの教室へ行ってみた
やっぱりここは 落ち着く
でも彼がいないこの教室は寂しさを感じる
あのとき 彼のために練習したあれ以来
一度も歌っていない
歌ってみようかな、
歌えばまた彼を思い出し 一晩中泣きわめくだろう
彼と過ごした日々を頭の中で描きながら指を弾く
「あなたはとても素敵だから_」
「隣にいたいと思う人ばかりね_」
静かに瞳から涙が零れる
「私のものにしたいなんてさ_」
「わがまま、言っちゃだめだね。_」
窓から聞こえてくる外部活の声や
吹奏楽部の奏でる音など
全部聞こえなくなる
「伝えたい言葉を飲む故に続かない会話も胸が苦しい_」
「許されてもないのに愛した_」
「私を知らないままのあなたで_」
サビ前のブレスで息が震える
「恋に沈んでゆく月の水面が照らす_」
「泡になって溢れる想いが浮かんで_」
涙が止まらず 声が震え 高音を出せない
「言葉には出来ない愛を抱きしめて_」
「ひとり海の底で眠るわ。_」
歌い終わったあと俺は最後に彼と交わした会話を思い出した
最後の会話
彼が最後 俺にした言葉
それは
『仁人なら 絶対歌手なれるかんな』
思い出した瞬間 涙があふれる
あの時はなんなんだと思いながら笑って聞き流した
でも もう彼と会えないと思うと
彼のあの言葉が俺の中で重く大切なものになる
「…ずるいよ、」
届くはずのない声で
ぽつりと呟くことしか出来なかった