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【能力者名】独絵三十九秒
【能力名】 アンハッピーリフレイン
《友好型》
【能力】 勉強中、39秒だけ時間を巻き戻すけ能力
【以下、細菌達の記録】
《転々の夢の中にて》
転々は気が付くと一人で荒野に居た。
空はどこまでも赤く、鮮血のような色をしていた。
「ここは…..?私、確かじゃんねを庇って
……..。」
突然、空から複数の目玉が現れた。その目玉はぎょろぎょろと転々を見つめていた。
目玉の一つから血涙がぼたっと零れ落ちた。
ズズズズ…..と、その血涙から赤髪のツインテールの少女が現れた。
彼女は悪夢ちゃんと呼ばれる悪霊である。
悪夢ちゃんは突然、転々の首を締め出した。
首の骨が折れてしまうほどの強い力だった。
「ぐぅぅッッ……!!??」
転々は苦しげに呻いた。
悪夢ちゃんは血涙を流しながら転々のことを
ひどく恨めしげに睨み付けていた。
「憎い……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
!!!!!!!!私からパンダを奪おうとするお前らが
憎い!!!!!!!!!!」
赤い血涙をぼたぼたと流しながら悪夢ちゃんは叫んだ。
「誤….解….アル…..私はパンダに興味がないネ…….。」
首を絞められながら苦しげに転々は言った 。
転々の言葉にまるで耳を傾けず悪夢ちゃんは
言った。
「パンダが……あの男が……また私から離れてしまう……嫌だ……!!!絶対嫌だァッ…..!!!パンダは誰にも触らせないッッ!!!!!私はアイツと添い遂げるんだッッ…..!!!!!」
血涙を流しながら、ひどく苦しそうに、悲しそうに、怨めしそうに悪夢ちゃんは言った。
転々は悪夢ちゃんをじっと見つめていた。
転々の瞳に恐怖は無かった。
転々は悪夢ちゃんの手に触れながら悪夢ちゃんを見つめて言った。
「私は恋愛とかしたことがないネ…..。
だけど大切な人はいるアル….。その人と離ればなれになりたくない気持ちは分かるネ…..。」
悪夢ちゃんは転々の首から手を離して叫んだ。
「お前に何が分かるッッ !!!! 《ラビットホール》!!!!!」
ぼたっ……ぼたぼたぼたっと空に浮かぶ複数の目玉から血涙が零れた。
血涙はミミズのように蠢き、バニーガールの格好をした転々の双子の姉、独絵三十九秒の姿になった。
バニーガール姿の独絵三十九秒は次々と増殖してゆき、鋭い牙を剥き出しながら一斉に転々に襲いかかった。
「ぐぅぅッッ….!!!」
バニーガールの独絵三十九秒達は転々を引っ掻き、鋭い牙で転々の腕に噛みつき、転々の脇腹の肉を噛み千切りながら口々に言った。
「あんたのせいだ。」
「憎い」
「なんであんたばっかり。」
「あんたさえいなければ。」
「憎い。」
「憎い。」
「憎い。」
バニーガールの独絵三十九秒達は口々にそう呻きながら転々の肉を噛み千切り続けた。
痛みに耐えながら転々は言った。
「お姉ちゃんは…….こんなこと言わないアル…..!!!私のお姉ちゃんは!!!!とっても優しいアル!!!!どんなに怒ってても!!!! 私のことぶったこと一度もないアル!!!!!!こんなのは偽物ネ!!!!ちょっと似ているだけのそっくりさんアル!!!!お姉ちゃんを侮辱するな!!!!」
転々はそれからバニーガール姿の独絵三十九秒達に夢の中で肉を噛み千切られ続け死ぬことも出来ずにもがき苦しんでいた。
《時は遡り観客席》
独絵三十九秒は妹の転々が謎の悪霊に襲われているのを見て能力を発動した。
英単語帳を開いていた彼女はポケットの鉛筆を転がし彼女の能力《アンハッピーリフレイン》を発動し、左手の甲に鉛筆を突き立てることで 意図的に自身の能力をバグらせた。
(《アンハッピーリフレイン》Act.2
《アンノウン•マザーグース》……!!!!)
そして独絵三十九秒は勉強時間中に39秒だけ時間を巻き戻す能力《アンハッピーリフレイン》を無理矢理バグらせて時を止めた。
そんな無茶をすれば当然身体に、脳に、ものすごい負担がかかる。
彼女は鼻から血を垂れ流し、酷い頭痛に耐えながら近くにいた妖怪沢どろりの塩味のポップコーンを抱えて影の応援席の非常口を出た。
彼女は走った。走った。走った。
勢い良く走るものだからポップコーンがポロポロ零れ落ちた。
そして走るのに疲れた彼女はぜぇぜぇと息を吐きながら歩いた。
そして転々と、転々に取り憑いた悪霊の元へとたどり着いた。
独絵三十九秒はポップコーンを片手で掴んで
思いっきり転々に向かって投げた。
「離れろ…….離れろ!!!!転々からさっさと離れろぉ!!!!」
独絵三十九秒はポップコーンを掴み野球選手のように振りかぶって…..投げた。
「くそがぁぁぁ!!!!!!!!」
彼女は次々とポップコーンを転々に向かって投げては投げてまた投げた。
「転々めぇ!!!勝手に《クローバー同盟》とか言うワケわかんない組織に入ったかと思ったらなんか良く分かんないイベントに参加しやがってぇッ!!!!能力者同士の戦いには危ないから近づくなってお母さんに教わったでしょうがぁぁぁッッ!!!!!」
独絵三十九秒は止まった時の中で妹に向かって次から次へとポップコーンをぶん投げた。
「大体あんたいっっつもそうじゃん!!!!高い木に登って降りれなくなったときもそう!!!!
ショッピングモールで勝手にほっつき歩いていなくなった時もそう!!!!ちょっとは後先考えろやぁぁぁ!!!!!」
まだポップコーンは半分も残っていた。
独絵三十九秒は次々と妹の転々に向かってポップコーンを投げた。
これは悪霊を追い払うためである。
決して憂さ晴らしのためではない。
三十九秒は止まった時の中でポップコーンを
投げて、投げて、また投げて。
とうとう空になるまでポップコーンを投げ尽くしてしまった。
「…….はぁ…..はぁ……こんだけポップコーン撒いときゃ大丈夫でしょ……。
なんか知らないけど塩まいときゃいいんでしょコイツ?」
悪夢ちゃんという悪霊を全く恐れる様子なく彼女はそう言った。
三十九秒はんーっと大きく伸びをして
「あーあ、帰って勉強しなきゃな。体育祭とかやりたいやつだけやればいいのに。」
とつぶやきゆっくりと元いた応援席に戻っていった。
そして妖怪沢どろりに空のポップコーンの箱を返し席に座り左手の鉛筆を抜き、鼻にティッシュを詰めた。
すると再び時が動き出した。
《グラウンドにて》
「ギャアアアアアア!!!!!!??????」
ものすごい悲鳴をあげながら悪夢ちゃんが
半田緋色の元へ戻っていった。
「悪夢ちゃん!!??あっ、やば意識が…..。」
半田緋色がガス欠を起こし能力が解除された。
パンダの頭のハチマキはらりと外れ眠っているパンダは影の中に吸い込まれた。
「転々ちゃん!!??大丈夫か!!!?」
《クローバー同盟》の無能力者達は皆転々を
心配した。
「….平気アル。…..なんか身体中がポップコーンの油でベタベタするアル…..。」
姉に助けられたことに全く気付いてない転々は ロカ先生の方を向いた。
ロカ先生は目を見開いていた。
(これは…..時間操作系能力!!?しかし転々さんや《クローバー同盟》の生徒達に能力を使ったような気配はない。…….転々さんの姉の独絵三十九秒さんの能力か?…….それなら 納得できる。何にせよ転々さんが無事で良かった。)
そしてロカ先生は深呼吸をして構えた。
「転々、こっから作戦はあるじゃんね!!??」
黒小場じゃんねは転々に聞いた。
「ないネ。」
「はぁ!!!??お前かしこいんじゃないじゃんね!!!?」
「うっさいアル!!!色々と想定外だったネ!!!
全員!!!!ロカ先生めがけて撃つアル!!!!!」
「そうこなくっちゃなぁ!!!!」
「よっしゃぁ!!!!!!」
《クローバー同盟》の無能力者達は一斉に
ロカ先生めがけて水鉄砲を撃った。
ロカ先生はそれを高速で躱し続けた。
「くそっ、弾切れだぁ….!!!」
「こうなりゃやけだ!!!全員でロカ先生の
ハチマキを奪うぞ!!!!」
ロカ先生は溜め息をついた。
「…..どうやらもう策はなさそうね。
そろそろ終わりにしましょうか?」
そう言ってロカ先生は指パッチンをした。
「…….《ガランド》。」
戦闘機に変身し透明化していたシリアスブレイカーから出てきた那乃彦先生はそう言って
自らの能力を発動した。
するとじゃんね以外の《クローバー同盟》の生徒達の動きが止まった。
「……は?」
無量大数那乃彦先生の能力《ガランド》は
数学によってこの世の理を理解しこの世の理を再現する能力である。
能力の詳細は不明である。彼の脳の構造は
複雑すぎて我々では解読ができなかった。
彼は宇宙人ですと言われた方がまだ納得ができる。
我々に分かるのは彼のルービックキューブに
書かれた複雑な数式の羅列が能力のトリガーで、《クローバー同盟》のメンバーは三十秒の間身動きが取れなくなったということだけだ。
ロカ先生は速やかに黒小場じゃんね以外の
《クローバー同盟》のハチマキを奪った。
じゃんねにはどうすることもできなかった。
「《ガランド》、解除。」
那乃彦先生がそう言うとルービックキューブの数式は焼き焦げ、転々達の意識が戻った。
「……え?あれ……?」
転々達は何が起こったか分からないという風にぽかんとしていた。
《クローバー同盟》のメンバーは全員影に呑み込まれていった。
那乃彦先生はハチマキを自ら取った。
そして、ロカ先生に向かって言った。
「後は……任せる。」
そう言って那乃彦先生は影に呑み込まれていった。
シリアスブレイカーはハチマキを勢い良く外して言った。
「シリアーッス!!!!多勢に無勢は好きじゃないッッ!!!!ここはシリアスにリタイアさせてもらうッッ!!!!」
そう言ってシリアスブレイカーは決めポーズを取りながら影に呑み込まれていった。
「さて、お互い残るは一対一ね。」
じゃんねは目の前でとてつもない殺気を放つ
ロカ先生に足が竦んでいた。
ロカ先生は静かに構えて言った。
「決着をつけましょう。」
(最後まで読んでくださりありがとうございます。)