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山中 Side .
自由行動の時間。
班は当然のように一緒で、気づけばまた隣を歩いている。
「次どこ行く?」
「どこでもいいよ」
「ちゃんと考えて」
そんな会話をしながら、人混みの中を進む。
そのとき、ふっと指先に触れられた。
「……はやちゃん」
「ん?」
何でもない顔で、指を絡めてくる。
「外」
「うん」
「みんないるんだけど?」
「うん」
「……」
全部理解した上でやってる。
「離して?」
「やだ」
また即答。
「バレるって」
「もうバレてるでしょ」
確かに、朝の件で隠す意味はほぼない。
でもだからって、これはこれで違う。
「柔太朗」
名前を呼ばれて、少しだけ力が緩む。
「手、離したい?」
静かに聞かれる。
少しだけ考えて、視線を逸らした。
「……別に」
「じゃあいいじゃん」
そのまま、しっかり握り直される。
結局、ほどけられない。
しばらく歩いたところで――
「はい見ーっけ」
後ろから声。
振り返ると、同じ班の友達がにやにやしている。
「やっぱりな」
「…何が」
「何がじゃねーよ。手」
視線がそのまま下に落ちる。
繋がれたままの手。
「あーね?」
「公開処刑じゃん」
好き勝手言われる。
「だから言ったじゃん」
小声で言うと、隣が笑う。
「でも離してないの柔太朗じゃん」
「……それは」
言い返せない。
「ほら認めた」
「はいカップル確定ー」
「もう隠す気ないなこれ」
完全に囲まれる。
「別にいいじゃん」
はやちゃんがあっさり言う。
「減るもんじゃないし」
「メンタル強」
「てかお前ら距離近すぎなんだよ」
ぶつかったって遠慮は無用だ
「朝からずっとそれ」
笑われる中で、ふと手に力がこもる。
見ると、はやちゃんが少しだけ優しい顔をしていた。
「大丈夫?」
小さく聞かれる。
「……大丈夫」
同じくらい小さく返す。
「ならいい」
そのまま、また自然に歩き出す。
冷やかしの声は続いてるのに、
不思議と気にならなかった。
「柔太朗」
「なに」
「あとで2人で抜けよっか」
「だからバレるって」
「じゃあちょっとだけ」
呆れながら、少しだけ笑う。
「……考えとく」
「やった」
ほんと単純。
でも、その手の温度だけは、最後までちゃんと冷めぬままだった。
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