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ツバキです。こんばんは。
レベル3になりました。膝はまだ震えてます。
◇◇◇
──イノシシを焼いた翌日。
私は奇妙な確信を抱いていた。
「昨日のビーム……今までと違った…」
あれは、偶然なんかじゃなかった。
はっきりと──出そうと思って、出した。
「つまり……我が秘奥の審判に、制御の兆しが……!」
(私、発動のコツを掴みつつある……?)
うん、ちょっとかっこいい気がする。
自分で言うのもなんだけど。
だが。
「つまり、制御もできるようになってきたということですね!」
「否ッ!! 因果の掌握など、我は未だ果たせてはおらぬ!」
(いや、できるとは言ってない!!)
なのにもう、村では謎の”御加護の演武”とかいう儀式が準備されていた。
「またしても……世界は勝手に加速する……!」
(……あれ? なんか、また話が大きくなってる……?)
◇◇◇
数日後、事件は起きた。
次の村で、私たちは洞窟の魔物討伐を頼まれた。
そして最奥で出会ったのは──
“石化の魔眼”を持つ、巨大な蛇型モンスター《バジリスク》だった。
「名前からしてヤバい! ビジュアルもヤバい! 絶対ヤバいやつ!!」
ローザが盾となり、ビームのチャージを稼ぐ。
「聖女様、今です!!」
「いざ……魂よ震えろ……いま、我が瞳にて世界を穿たん!」
(いける……いける……出るぞ……ッ!!)
左目が熱い。来る、これは来る……!
中腰になり、気合いを込める。
「──漆黒を裂く、魂の閃光よ!」
洞窟の最奥が光に染まり、闇が退けられる。
その瞬間だけ、私は確かに”世界を変える力”を掴んだ気がした。
(……これが、私の意志で放つ光……!?)
ビーーー♡
閃光が洞窟を駆ける。
だが──バジリスクの鱗が光を弾いた。
「なにィ……!?
い……威光が、効かぬ……!?」
──ビームの軌道が逸れた。
「なな、なんでぇぇえええ!? 今の最大火力だったじゃん!?」
そして──頭に声が響いた。
【ツバキは新スキル《ホーリービーム♡(右)》を習得しました】
右目、うずく。
「……えっ? 右目……?」
右目に力が集まり始めた──。
ズギャアアアアッ!!!
「ば……馬鹿な……我の右の瞳も目覚めるというのかァァア!?」
(ま、まさかの……右目覚醒ぃぃい!?)
──さらに! 頭に声が響く!
と、同時に両目、ビリッ。
【ツバキは新スキル《ディバイン・ホーリービーム♡》を習得しました】
「待って待って両目から出そう!? なにこれ!? なにこれぇー!?」
「──解放せよ……双眼の審判!!」
(──もう無理……出る!)
シュンッ……!
……ッんビーーーーーーーーーーッ♡♡
両目からビーム、同時発射。
光の奔流がバジリスクを直撃する。
「グシャアアアアアアアッッッ!!!」
バジリスクの絶叫が洞窟に響き渡る。
ズズズズズ……バキバキバキッ!
鱗が砕け、巨大な身体が光に溶けていく。
「ギシャアアアア……ア……ア……」
断末魔の声が次第に弱くなり、やがて──
ボウッ!
完全に蒸発。光の粒子となって消え去った。
──地面が陥没。
──風が止まり。
──空が裂けた。
「光に呑まれる……!! この混濁の楽園では我は盲目なりィィィィ!!」
(見えない見えない見えないぃぃぃ!! 前が見えないんだけどォオオオオオ!?)
完全なる視界ゼロ。
視界が光で埋まって、マジで見えない。
「なんだこれ光しかねぇッ……!!
天国かコレッ!? 終わった!? ローザよ! 私、終わった!?」
「聖女様ァァ!! 顔が光り過ぎて見えません!!」
「そ! そそそそそ! それは我も同じく!!
いま、この魂は視を失いし混迷の中ッッ!!」
(私も見えねぇよ!! このままじゃ崖に落ちるって!!)
私は絶叫しながら首を振った。
ビームが次々と洞窟を破壊した。
*ローザは全部避けてた。何者なんだアイツ
「誰だこの設定考えたのはァァアア!?」
◇◇◇
──そして。
爆光の余韻が消えぬまま、私はその場に立ち尽くしていた。
焼け焦げた地面。崩れた岩壁。残響するビームの余熱。
── 静寂。
「ふ、ふは……貫いた……?
闇より来たりし獣を……我が瞳の審判にて……!」
(超マグレだよ! とりあえず良かった…!)
また暴れた。けど、逃げなかった。
初めてだ、私──ちゃんと”制御したい”って思ったの…
テレレレッテッテッテー♪
その時、脳内に”あの音”が響いた。
「……来た、か」
私は目を細めて、静かに息を吸う。
【ツバキのレベルが8に上がりました】
「ふ、また一歩……混沌の扉へ近づいたな……」
(レベル、上がった……)
◇◇◇
【名前】ツバキ
【レベル】3 → 8
【新スキル】
・ホーリービーム♡(右)(NEW)…右目からレーザーが出る。
→ 最終的には口からも出る。*ホーリービーム♡(口)(予定)
・ディバイン・ホーリービーム♡(NEW)…両目同時発射。威力は絶大だが、発射中は前が見えない。リスク:極大。
◇◇◇
「”リスク:極大”て! そりゃそうだよマジで怖かったぁ!」
「……って、え?」
私はゆっくり、もう一度スキル欄を見直す。
【ホーリービーム♡(右目)】──ここまではわかる。いやわからん。
私はステータス欄を眺め──
……ふと、そこに見慣れぬ文字列を見つけた。
【最終的には口からも出る。*ホーリービーム♡(口)(予定)】
「……は?」
頭がバグる音がした。
「ちょ、えっ? なに? ちょっと待って、口から……!?
え、ビーム!? え、口!? 私、口からビーム出すの!? 巨神兵かよ!」
ステータスウィンドウを指差して叫んだ。
「あとはフ○ーザ様とかそっち系でしょ!?
私あんな感じになるの!? いや無理無理無理!!」
私は膝から崩れ落ち、顔を覆った。
「最終的にって何!?
どういう成長曲線なの!?
まさか鼻とか耳とかも!?
もうお嫁に行けなくない!?」
ローザが背後から神妙に言う。
「……とりあえず、”三位一体の聖光”……という解釈で……」
「ローザよ…これは神託に非ず…ただの絶望の呻き…信仰補正は止めて? ちょっと泣きたいの今」
「……神はあらゆる器官からも顕現すると聖典に……」
「書いてないでしょ!? 今書いたでしょ!?
ていうか勝手に聖典書き足すなーッ!!」
私は地面に突っ伏し、そこからしばらく動けなかった。
──そしてゆっくりと顔を上げ、唇を噛んで、宙を睨んだ。
「サクラ……カエデ……私はビーム人間になったよ……
どうだ……? 羨ましいか……?」
「さあ! 聖女様! 今日はもう寝ましょう!
このまま東へ進みましょう! タマイサやエドノくらいまで行きたいですね!」
「もうなんでもいいよ……」
──その日の夜。宿屋にて。
バジリスク戦の興奮(と恐怖)が冷めやらぬまま、私たちは夕食のテーブルについていた。 ステータスの「口ビーム(予定)」のショックで、食欲があんまりない。
「はぁ……。憂鬱だ……。 深淵を覗きし代償は、かくも重いのか……」
(口からビームとかマジでどうしよ……歯医者さんとか行けないじゃん……)
その時。 洞窟で埃を吸ったせいか、鼻がムズムズした。
「くっ……鼻腔を擽るこの気配は……風の精霊の悪戯か……? ──ヘックチュンッ!」
ビッ♡
「え?」
今、なんか、口から出た。
すごく細くて短いのが、出た。
てか、ビームだった。
ジュッ……。
目の前のテーブルに置かれていた、私のサラダ。
その中のミニトマトがひとつ、真っ黒な炭になって煙を上げていた。
「…………」 「…………」
沈黙。
私はスプーンを持ったまま固まった。
「ひ、ひいぃぃぃ!?
とうとう口からビームの予兆がァァァ!?」
「……聖女様」
「ち、違うのローザ! 今のは不可抗力! 生理現象!」
「いえ。『瞬きの間に敵を焼く、神速の断罪』……お見事です」
「……はは
お嫁さんに……なりたかったな」
私は唇を押さえた。
明日からは、笑う時も気をつけないといけない。
“うっかり幸せ”が、焼ける。
◇◇◇
【天の声】
──その頃。
オサカに居るカエデの胸がポヨンと揺れて、
タマイサの常闇のダンジョンに居るサクラのツノがピクッと動いた。
気がした。
(つづく)
◇◇◇
──今週のカイ様語録──
『この光、世界を照らすには強すぎた……(つまり、前が見えねぇ)』
解説:
TVアニメ《堕光のカイ》第1923話より抜粋。
最終決戦を目前にした深夜、カイ様が夜道で懐中電灯を強にしすぎた際の発言。
闇を祓うつもりが、自分の目が潰れかけて何も見えなくなったという壮絶なシーンである。