コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
お風呂上りのせいか、これから起こる事への緊張からか、やたらと喉が渇く。
沙羅は、ミニバーにある冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、グラスに注いだ。
そのグラスとスマホを持って、さっきまで慶太が座っていた掘りごたつの座椅子に腰をおろした。グラスに口をつけ、喉を潤しながら、窓から見える深い緑の景色を堪能する。
「はー、お水が美味しい」
スマホの写真アプリをたちあげて、美術館で撮ってもらった写真を確認する。
画面の中には、スイミングプールの青い背景の中で、学生の頃のように寄り添い微笑んでいるふたりが居た。
「ふふっ、良く撮れている」
自然と笑みがこぼれる。
そのままスマホを構えて、いつの日か、今日の気持ちを思い出せるようにと、窓から見える景色を写真に収めた。
ついでに豪華な部屋を撮ろうとモードを切り替え、シャッターに指を掛ける。
すると、浴衣姿の慶太がフレームインして、驚いた沙羅はそのままシャッターを押した。
「わっ、びっくりした。お風呂早かったね」
「そう?」
「あっ、お水飲む?」
「もらおうかな」
沙羅は立ちあがり、冷蔵庫から新しいミネラルウォーターを取り出して、グラスを用意する。
「ありがとう。そのままでいいよ」
慶太がペットボトルを受け取り、ボトルキャップを外すと、直接口をつけ、ゴクゴクと飲み下す。
アダムの林檎と別名のある、男らしい喉仏が上下する。
ただお水を飲んでいるだけなのに、悩ましい色気が漂う。
慶太の色気にあてられた沙羅の体温はあがり始め、赤く染まった頬を隠すようにうつむいた。
そんな沙羅を慶太は後ろから抱きしめる。
「沙羅……」
切なげに囁かれ、慶太の広い胸に|枝垂《もた》れた沙羅は、甘い息を吐き出した。
すると、慶太の指に顎先を捉えられ唇が重なる。
お互いの熱を確かめ合うように、何度も短いキスを繰り返して、その心地よさに蕩けていく。
恋の熱に侵されて、唇を重ね続けた。
沙羅の息は上がり始め、やがて呼吸が荒くなる。呼吸と共に上下する浴衣の合わせを縫うように、慶太は手を忍び込ませる。
まろみのある胸の先端に節の指が触れ、ピクッと体を震わせた。
瞬間、節のある指が離れようと動く。けれど、沙羅は浴衣の上から慶太の手を押し留め、熱の籠もった瞳を向ける。
「お願い、止めないで……」
「後悔しない?」
「今、止めたら後悔しそう」
儚げに微笑んだ唇に唇が重なった。上唇を喰まれ、口づけが深くなる。慶太の舌が紗羅の舌を追いかけ、絡め囚われる。
静かな部屋にクチュクチュとリップ音が鳴り響き、 ねっとりとした刺激に体の芯に熱が溜まり、体の一番深い所で火が灯り出す。
浴衣の合わせは乱され、慶太の熱い手のひらが胸を包み込み、やわやわと甘い刺激を与えられる。
それに反応して先端の果実は硬く実り、節のある指が動きに合わせるように、指の合間で白い乳房が形を変え、まるで別の生き物のように|蠢《うごめ》いていた。
沙羅は自分に触れている慶太のことだけを考えようと、濡れた瞳で見つめる。
切れ長の綺麗な目、スッと通った鼻梁、そして、自分を惑わせる唇。
その唇が、官能を引き出すように沙羅の首筋を伝う。
体に溜まった熱を逃がすように、吐息が漏れる。
薄く開いた目の端に映る、畳の上に敷かれた布団が、酷くいやらしく感じられた。
布団に組敷かれ、下から慶太を見上げる。
そして、ねだるように手を伸ばした。沙羅の細い指先が耳朶から喉仏を這い、浴衣に差し込み素肌に触れる。慶太から伝わる鼓動を確かめるように厚みのある胸板へ手を当てた。
世間とは切り離されたこの場所で、束の間の幸せを味わい女に戻る。
聞こえるのは、蝉の鳴き声と衣擦れの音。
「慶太……」
「沙羅、たくさんキスをしよう」
唇の端にそっとキスを落とされた。沙羅は追い求めるように顔を動かし、慶太の下唇を甘噛みをする。そして、触れるか触れないかの距離で囁いた。
「たくさん……して」
「ん、」
唇がついばまれ、頬へ耳元へ徐々に場所を変えて、首筋にもキスをくり返す。
くすぐったさと、気持ち良さが入り交じり、身をよじる。
胸元にもキスが降りてきて、やがて、柔らかな胸のふくらみにも唇の感触を感じた。
硬くなった胸の先端の果実に慶太の唇がそっと触れた。舌先で|舐《ねぶ》り沙羅の反応を伺う。
上目遣いで、自分を見つめる切れ長の瞳。その熱に焼かれ、背中にゾクリと電気が走り、粟肌がたつ。
「あぁ……」
約束の出来ない関係を切なく想いながら、失くしてしまった幸せを埋めるように、慶太の優しさに甘えている。
慶太の髪に指を梳き入れ、ねだるように胸に抱き寄せた。
ガラス窓の向こうは、まだ明るい太陽が輝き、緑の木々が生い茂り芽吹いている。そして、蝉時雨が降り注ぐ。
肌は、しっとりと汗をかき始めている。
胸の果実を口に含まれ、甘噛みされると、絶妙な刺激を与えられ、たまらない気持ちになる。
「はっ……あっ、あぁん」
小さく喘ぎ、もどかしさで内ももをすり合わせた。
沙羅は自分でもはしたなく思うほど、慶太を欲しがっている。
慶太は身を起こし、はだけた浴衣を脱ぎ捨てた。すると、均整の取れた筋肉質の体があらわになる。
鋭気に満ちた美しい裸体に沙羅の鼓動は激しく動く。
慶太は、濡れた瞳でしどけなく横たわる沙羅の足の間に膝をつき、手を伸ばした。
スッと伸びた指先が、沙羅の唇に触れる。
そして、甘やかに微笑み、ゆっくりと唇の上を伝い、その輪郭をなぞるように動く。
「沙羅、綺麗だよ」
「ばか……」
慣れない褒め言葉に沙羅は、指先の感触を残したまま、恥ずかしさで頬を赤らめる。
けれど、少し開いた唇の間から舌を覗かせ、ねっとりと慶太の指先を舐め上げた。
少女のような清らかさと妖婦のような艶を同時に魅せられ、慶太の余裕は奪われる。
瞳は愛欲に満ち、ゴクッと喉元が動く。
「そんなに煽られたら、止められないよ」
「止めなくていいの。私……慶太に抱かれたい」
沙羅は、ふっと甘く優しい笑顔を浮かべる。けれど、その微笑は凄艶でもあった。
これ以上にないほど心を奪われた慶太は、むさぼるように唇を重ねた。
息も|吐《つ》けないほどの深いキスをして、沙羅の舌を追いかけ、頬の裏側を舐め上げる。
それに応えるように、沙羅は腕を慶太の背中にまわし強く抱きしめた。
肌と肌とが重なった部分が、酷く熱い。
繰り返される口づけに、頭の芯が蕩けていく。
息継ぎのために唇が離れると、少し寂しく感じてしまう。
「もっと……」
ハァハァと、荒い息をしながら沙羅は、その先を欲しがった。
「沙羅 ……」
節のある指が、沙羅の|鳩尾《みぞおち》からお臍の横を通り、足の付け根の薄い茂みに辿り着く。
奥に隠れた花芽を探り当て、指の腹で優しく撫でた。
「あっ、あぅ」
与えられる甘い刺激に腰が揺れる。
丁寧な愛撫に、いまにもイキそうなほどの快感が押し寄せる。沙羅は意識を飛ばさないようにシーツを掴んだ。
「けい……た。もう……」
「いいよ。もっと、気持ち良くなって」
そう言って、節のある指先が沙羅の濡れそぼった内側に入り込む。
浅い部分を撫でられ、粘り気のある水音がクチュッと聞こえた。
潤みきったその場所は、いやらしいほど慶太の指に反応している。
「あっ……ぁう、んっ」
さらに奥にある敏感な部分を見つけられ、ビクッと腰が跳ねる。
みだらな自分に罪悪感を意識する沙羅だったが、それも直ぐに消し飛ぶほどの、たまらない快感が押し寄せる。
「そ、そこ……あ、むっ、無理っ……」
さらに敏感な部分を擦られ、絶頂に駆け上がる。
沙羅の口を塞ぐように、慶太がキスを落とした。
その瞬間、快感が全身を駆け巡り、ビクビクと体を震わせた。
体に力が入らずに、とろりと瞳を潤ませる沙羅の頬を慶太は愛おし気に撫でる。
慶太は、沙羅に近づくほど想いが募り、離れ難くなっていた。
そして、いまさら言っても詮無き事だとわかっているのに、沙羅を長年独占してきた人物、別れた夫への嫉妬心が湧き上がる。
今だけの恋人。
そう、沙羅は言った。
「沙羅、ひとつになろう」
自分の痕跡を沙羅の心に残したい。そして、今だけではなく、この先も一緒に居る事を沙羅も望んで欲しい。慶太は、切に願っていた。
「うん……きて」
手を伸ばした沙羅の潤みを湛えた場所に、薄い被膜を被せた楔をあてがう。
「沙羅、好きだよ」
短いキスを落とし、慶太は腰を進めた。
沙羅の熱く狭い場所へ入り込む。
「ああっ……」
熱い楔が、ゆっくりと抽挿を繰り返し、やがて最奥まで辿り着く。
ひとつになれた|悦《よろこ》びが、快感となって、沙羅の体を駆け巡る。
「ふっ、ぁぁぁ」
薄っすら瞼を開いた沙羅の瞳に、自分を見つめる慶太が映る。
眉間に皺を寄せ険しい表情の中に甘さを含み、それが、凄絶な男の色気を放っていた。
「けい……た……好き」
「沙羅……好きだよ」
ゆっくりと動き始めた。体の内側から沸き立つ刺激に、沙羅は背をのけぞらせる。
あまりの気持ち良さに内側の壁はとろとろに濡れてうねり、慶太の楔を締めつける。
大切に想われ、心が潤う。
けれど、今の幸せは|泡沫《うたかた》の夢。
沙羅は、想い想われた幸せな記憶を心の糧として、東京に帰ったら子供のために生きていこうと思っていた。