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#そのじん
笑う門には福来る
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#nmnm注意
nanana

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画面の中の仁人が、小さく息を吸った。
『俺は』
一度、言葉を切る。
真っすぐカメラを見つめて。
静かに続けた。
『勇斗と出会えたことを、一度も後悔したことはありません』
勇斗の目が、わずかに揺れた。
『これから先も、その気持ちは変わりません』
そう言って。
仁人は小さく笑った。
「……」
勇斗は何も言えなかった。
ただ。
画面の中の仁人を見つめる。
昨日まで。
自分のためなら、離れた方がいいと言っていた人だった。
勇斗の仕事を守るため。
今まで積み上げてきたものを守るため。
自分が足枷になるくらいなら。
手を離した方がいいと。
本当は別れたくないくせに。
そう言っていた。
それなのに。
今日は。
勇斗一人にすべてを背負わせないために。
自分から前へ出た。
誰にも相談せず。
一人で覚悟を決めて。
自分たちの関係を明かした。
勇斗は、膝の上でそっと拳を握った。
勝手なことをして。
そう思う。
こんな大事なこと。
どうして一人で決めたんだ。
相談くらいしてほしかった。
これから仕事にどんな影響が出るのか。
ファンがどう受け止めるのか。
事務所がどう判断するのか。
何一つ分からない。
もし。
この配信をきっかけに仁人が傷つくことになったら。
そう考えるだけで。
胸の奥がざわついた。
あとで。
ちゃんと話さなければいけない。
どうしてこんなことをしたんだと。
一人で全部決めるなと。
言わなければいけない。
けれど。
画面の中の仁人を見ていると。
その気持ちさえ。
少しずつ形を変えていった。
『勇斗だけを責めないでください』
さっき仁人が言った言葉が、頭に残っている。
『隠そうと決めたのは、俺たち二人です』
『どちらか一人の責任ではありません』
そこでようやく。
勇斗は、仁人がここに立った理由を知った。
自分だけが責められていることを。
仁人は、黙って見ていられなかったのだ。
昨日の電話でも。
ずっとそうだった。
自分がどうなるかなんて。
ほとんど口にしなかった。
仕事が減るかもしれない。
役が来なくなるかもしれない。
否定されるかもしれない。
仁人が怖がっていた未来の中心には。
いつも勇斗がいた。
自分のことは。
そのあとだった。
だから。
今度は。
自分も同じ場所へ立つことを選んだ。
勇斗だけを矢面に立たせないために。
「……」
胸の奥が。
どうしようもなく熱くなる。
本当に。
仁人はいつもそうだ。
自分のことになると。
勝手に決める。
勇斗のためだからと。
勝手に我慢して。
勝手に離れようとして。
そのくせ。
勇斗のことになると。
誰よりも必死になる。
自分が傷つくかもしれないことなんて。
後回しにする。
昨日は。
勇斗を守るために離れようとした。
今日は。
勇斗を守るために隣へ立った。
やっていることは。
まるで逆なのに。
理由は。
ずっと同じだった。
――勇斗のため。
「……ほんと」
小さく息が漏れた。
その先は。
言葉にならなかった。
画面の中では。
仁人が黙ってコメントを見つめていた。
『勇気を出して話してくれてありがとう』
『びっくりしたけど、これからも応援するよ』
『二人とも幸せになってね』
『これからもM!LKが大好き!』
『仁人くんも勇斗くんも悪くないよ』
『勇斗くん、仁人くんを幸せにしてあげてね』
『二人で幸せになって!』
次々と流れていく。
仁人は。
しばらく動かなかった。
一つ。
また一つ。
確かめるように目で追っている。
きっと。
覚悟していたのだろう。
否定されることも。
怒られることも。
応援してくれていた人が離れていくことも。
全部。
分かった上で。
この配信を始めた。
だから。
目の前に流れている言葉が。
すぐには信じられないようだった。
『……え』
小さな声が漏れた。
仁人が一度、瞬きをする。
そして。
もう一度。
コメントを見る。
『ずっと応援するから安心して』
『話してくれてありがとう』
『仁人くんが笑ってくれたらそれでいいよ』
『二人とも幸せになってね』
仁人の目が。
少しずつ潤んでいった。
「……」
勇斗の眉が。
わずかに下がる。
画面の中の仁人は。
誤魔化すように少し笑った。
『……ごめん』
指先で。
そっと目元を拭う。
こぼれた涙は。
ほんの少しだけだった。
『泣くつもりじゃなかったんだけど』
恥ずかしそうに笑う。
そして。
もう一度コメントを見る。
『……ありがとう』
声が少しだけ掠れていた。
『本当に、ありがとう』
その顔を見た瞬間。
勇斗の中から。
何かが抜けていった。
どうして相談しなかった。
勝手なことをするな。
あとで言おうと思っていた言葉が。
一度。
全部遠くなる。
仁人は。
怖かったのだ。
平気な顔をして。
自分で決めたような顔をして。
カメラの前に座って。
真っすぐ話していたけれど。
本当は。
ずっと緊張していた。
それでも。
勇斗のために。
ここまでした。
そして今。
受け入れてもらえたことに。
ようやく少しだけ安心している。
それが。
あの涙だった。
「……」
勇斗は。
画面から目を離せなかった。
泣いているからじゃない。
涙なんて。
ほんの少ししか流れていない。
その涙の理由が。
分かってしまったから。
胸が。
どうしようもなく締めつけられた。
昨日は。
自分のためなら離れると言ったくせに。
今日は。
自分のために。
一人でこんなところまで来た。
本当に。
勝手だ。
こっちの気持ちなんて。
いつも置いていく。
守られるだけでいるつもりなんて。
最初からなかったのだろう。
自分も。
勇斗を守る側に立つ。
きっと。
仁人なりに。
そう決めたのだ。
勇斗の口元が。
ほんの少しだけ緩んだ。
笑ったわけではない。
ただ。
張りつめていた表情から。
ゆっくり力が抜けていった。
画面の中で。
仁人がまた一つ。
コメントを見つける。
『仁人くん、笑ってくれてよかった』
仁人が。
少しだけ照れたように笑った。
その瞬間。
勇斗の目元も。
自然と緩んだ。
「……」
自分でも。
気づいていなかった。
ただ。
仁人を見ていた。
安心したように笑っている。
それだけで。
よかったと思った。
傷ついていない。
後悔していない。
今。
ちゃんと笑っている。
それだけで。
胸の奥が満たされていく。
昨日まで。
手を離そうとしていた人が。
今日は。
自分から隣に立つことを選んでくれた。
それが。
たまらなく嬉しかった。
そして。
どうしようもなく。
愛しかった。
きっと。
あとで会ったら。
言いたいことはたくさんある。
相談してほしかった。
一人でこんなことをするな。
何かあったら。
ちゃんと自分にも背負わせろ。
それでも。
今だけは。
何も考えられなかった。
ただ。
会いたかった。
画面越しではなく。
ちゃんと目の前で。
仁人の顔が見たい。
少し赤くなった目元も。
安心したように笑う顔も。
全部。
自分の目で確かめたい。
そして。
できるなら。
何も言わずに。
抱きしめたかった。
「……」
勇斗は。
ほんの少しだけ身体を前へ傾けた。
まるで。
そこに仁人がいるように。
けれど。
伸ばしかけた手は。
すぐに止まった。
当然だ。
これは。
少し前の仁人が映った、ただの画面なのだから。
勇斗は小さく息を吐く。
それでも。
目は。
仁人から離れなかった。
そして。
一つだけ。
もう、決めていた。
この配信を見終えたら。
仁人に会いに行く
コメント
1件
読み終わりました……。 仁人が一人で全部背負ってカメラの前に立ったシーン、本当に胸が熱くなりました。昨日は「勇斗のために離れる」と言っていたのに、今日は「勇斗のために隣に立つ」——行動は真逆なのに、根っこの想いが変わらないっていう構造が、もう本当に美しくて。勇斗が責める気持ちを手放して、ただ「会いたい」「抱きしめたい」と思えるようになる流れも、自然で引き込まれました。コメント欄の温かさも、いいアクセントでしたね。最後の「会いに行く」で終わる余韻が、たまらなかったです。