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#そのじん
笑う門には福来る
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#nmnm注意
nanana

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― 柔太郎side ―
『……俺です』
画面の中で。
仁人が、そう告げた。
柔太郎の目がわずかに見開かれる。
「……え?」
聞き間違えたのかと思った。
けれど。
隣にいる勇斗を見ると。
何も言わない。
否定もしない。
ただ。
画面の中の仁人を、じっと見つめていた。
画面の中で。
仁人がゆっくり息を吸う。
『俺と』
一度だけ目を閉じる。
そして。
覚悟を決めたように、もう一度カメラを見た。
『佐野勇斗は、お付き合いしています』
「……え?」
今度は。
はっきりと声が出た。
柔太郎は画面を見る。
そして。
勇斗を見る。
「はやちゃんと……仁ちゃん?」
返事はなかった。
勇斗は。
画面から目を離さない。
聞こえていないわけではないと思う。
ただ。
今は。
柔太郎に答えることよりも。
仁人が何を話すのか。
そちらの方に意識を奪われているようだった。
それでも。
否定しないことが。
何よりの答えだった。
本当なんだ。
柔太郎は。
もう一度、画面を見る。
勇斗が。
あれほど手放したくないと言っていた人。
M!LKと比べることさえできない。
どちらも自分の人生だと。
そう言った相手。
それが。
仁人だった。
あまりにも予想していなかった。
昨日まで。
同じグループのメンバーとして。
いつも通り隣にいた二人。
その二人が。
ずっと付き合っていた。
聞きたいことなら。
いくらでもあった。
いつから。
どうして。
なんで誰にも言わなかったのか。
けれど。
今は。
何一つ聞ける空気ではなかった。
『今回のこと』
仁人が真っすぐカメラを見る。
『勇斗だけを責めないでほしいです』
その瞬間。
隣で。
勇斗の表情がわずかに変わった。
『配信を切り忘れたのは勇斗だけど』
『俺たちの関係を公表しないって決めてたのは、二人だから』
『勇斗一人の責任じゃありません』
「……」
勇斗は何も言わない。
けれど。
スマートフォンを持つ手に。
少しだけ力が入ったのが見えた。
柔太郎は。
そんな勇斗と。
画面の中の仁人を交互に見る。
――ああ。
なんとなく。
分かった気がした。
仁人は。
勇斗だけが責められていることが。
嫌だったのだ。
だから。
誰にも相談せず。
自分からここへ出てきた。
『驚かせてしまって、ごめんなさい』
『今まで話してこなかったことも』
『こんな形で伝えることになったことも』
『本当に、ごめんなさい』
仁人が深く頭を下げる。
その姿を。
勇斗は。
瞬きも忘れたように見つめていた。
「……ばか」
小さな声が落ちる。
柔太郎が横を見る。
勇斗だった。
それ以上、何かを言うことはなかった。
ただ、仁人を見つめている。
その「ばか」が何を意味しているのか。
柔太郎には分からなかった。
けれど。
少なくとも、怒っているようには見えなかった。
むしろ。
少しだけ、苦しそうだった。
柔太郎は。
そんな勇斗の横顔を見て。
ふと、あの日のことを思い出した。
最初の会議。
仁人が。
『M!LKがなくなるくらいなら』
『……俺は、別れた方がいいと思う』
そう言った時。
勇斗は。
明らかに傷ついた顔をした。
そして。
『嫌だ』
そう言った。
一度ではない。
何度も。
別れたくないと。
それでも。
仁人が答えを変えなかった時。
勇斗は。
『……さすが、リーダーだな』
そう言った。
『そんな簡単に気持ち切り替えられるんだ』
あの時は。
少しだけ引っかかった。
恋人との別れを勧められただけなのに。
どうして。
仁人に対して。
あんな言い方をしたのだろう。
普段の勇斗なら。
仁人がリーダーとして考えて出した答えを。
もっと冷静に受け止めると思っていた。
でも。
今なら。
分かる。
あれは。
リーダーに反対された人の言葉じゃなかった。
恋人本人から。
別れた方がいいと言われた人の言葉だった。
「……あ」
小さく声が漏れる。
けれど。
勇斗は振り向かなかった。
柔太郎は。
もう一つ思い出す。
翌日の会議。
舜太と自分は。
別れた方がいいと答えた。
大智だけが。
別れなくてもいいと言った。
そして。
最後に仁人が。
『……俺は、別れなくていいと思う』
そう言った。
あの瞬間。
勇斗は目を見開いた。
『……ほんとに?』
それから。
心の底から安心したように。
『……よかった』
そう言った。
あの時は。
少し大袈裟だと思った。
一番強く反対していたリーダーが。
味方になってくれた。
だから。
あんなに喜んだのだと思っていた。
違ったんだ。
リーダーの意見が変わったからじゃない。
恋人が。
離れようとするのをやめてくれたから。
あんなに。
嬉しそうだったんだ。
「……そっか」
柔太郎が小さく呟く。
今まで。
少しだけ引っかかっていた言葉。
不思議だった表情。
その全部が。
一つずつ。
繋がっていく。
もう一度。
隣を見る。
勇斗は。
相変わらず仁人を見ていた。
柔太郎の方を見ようともしない。
あんなに大切にしていた人。
仁ちゃんだったんだ。
柔太郎は。
それ以上、何も言わなかった。
今は。
画面の中で。
一人で覚悟を決めた仁人の言葉を。
最後まで聞こうと思った。
二人は。
もう一度スマートフォンへ視線を戻した。
画面の中で。
仁人がゆっくり顔を上げる。
まだ。
少し緊張した顔をしている。
そして。
恐る恐る。
コメント欄へ視線を落とした。
『びっくりした』
その言葉を見た瞬間。
仁人の表情が。
わずかに強張った。
隣で。
勇斗の身体が。
ほんの少しだけ前へ傾く。
柔太郎は。
それを黙って見ていた。
『正直、めちゃくちゃびっくりしてる』
仁人の視線が揺れる。
けれど。
次に流れたのは。
『でも、話してくれてありがとう』
だった。
仁人の目が止まる。
続けて。
『二人とも幸せになってね』
『勇気出してくれてありがとう』
『仁人くん、大丈夫だよ』
『これからも応援するよ』
次々と。
温かい言葉が流れていく。
仁人は。
しばらく何も言わなかった。
一つずつ。
確かめるように。
コメントを目で追っている。
そして。
何度も瞬きをした。
「……」
柔太郎は。
なんとなく分かった。
泣きそうだ。
そう思って。
ちらりと勇斗を見る。
勇斗も。
じっと仁人を見ていた。
きっと。
同じことを思っている。
そんな気がした。
『……泣かないよ』
仁人が。
誤魔化すように小さく笑った。
その直後。
一粒だけ。
涙が頬を伝った。
慌てたように。
指先で目元を拭う。
『……最悪』
少し恥ずかしそうに笑う。
『泣くつもりじゃなかったんだけど』
その顔を見た時。
隣の勇斗の表情から。
少しだけ。
力が抜けた。
仁人が泣いたのに。
心配そうではなかった。
たぶん。
分かっているのだ。
悲しくて流した涙ではないことを。
仁人は。
またコメントを読む。
そして。
今度は。
さっきより自然に笑った。
その瞬間。
勇斗の目元も。
ほんの少しだけ緩んだ。
「……」
柔太郎は。
勇斗の横顔を見つめた。
仁人が強張れば。
勇斗の表情も硬くなる。
仁人が安心すれば。
勇斗からも力が抜ける。
仁人が笑えば。
勇斗の目元まで柔らかくなる。
言葉なんて。
ほとんどない。
それでも。
見ていれば分かった。
会議で。
勇斗が恋人をどれほど大切にしているかは。
もう知っていた。
でも。
その相手が仁人だと知って。
こうして二人を見ていると。
あの時に聞いた「大切」という言葉が。
急に。
別の重さを持った気がした。
――本当に、好きなんだ。
柔太郎は。
今さらのように思った。
こんな勇斗を。
今まで見たことがなかった。
同じメンバーとして。
何年も一緒にいたのに。
仁人を見る時だけ。
こんな顔をすることを。
知らなかった。
画面の中で。
仁人がまた笑う。
勇斗は。
その顔から目を離さない。
柔太郎は。
そっと視線を外した。
なんとなく。
これ以上見ているのが。
少しだけ。
いたたまれなかった。
仁人は。
ここにすらいない。
ただ。
画面の中にいるだけ。
それなのに。
恋人同士の時間に。
自分だけが紛れ込んでいるような気がする。
柔太郎は。
それ以上。
勇斗に話しかけなかった。
勇斗も。
何も言わなかった。
ただ。
画面の中で。
安心したように笑う仁人を。
ずっと見つめていた。
コメント
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柔(メンバー)からの答え合わせ最高です…!! そうだよね、会議で『別れた方がいい』『嫌だ別れない』ってやってたの激重カップルのやり取りだったんだよ〜エモエモエモエモ
うわああああ第16話読み終えたよ……!!😭💕💕 柔太郎の視点でじわじわと「そういうことだったのか」って繋がっていくの、マジでエモすぎた……。特に、あの会議での勇斗の反応が全部「恋人だから」だったって気づくシーン、胸がギュッてなった。 仁人が一人でカメラの前に立って「勇斗だけを責めないで」って言ったのも、勇斗が無言で画面見つめてるのも、もう全部が尊い。言葉がなくても伝わる空気が本当に上手くて、読んでるこっちまであったかい気持ちになれた……! 2人のこれからもずっと応援したくなる回だったよ〜!✨