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コアラと木の実
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「じゃ、俺は1年の教室棟回ってくるね。」
「ん、俺は3年ね。」
この学校の生徒会、風紀委員は常に一緒に行動する傾向がある。
朝の挨拶運動もその一環だ。
放課後、阿部と岩本は教室、部室以外の場所の施錠、生徒がいないかの確認を行なっていた。
阿部は、1年生の教室棟。
岩本は、3年生の教室棟。
この校舎は棟で分けられているため、手分けをしないと全てを見回るのが難しいのだ。
岩本は、早速空き教室を回っていく。
当たり前だが、この時間帯、普通の生徒はこの階にはいないはずだが…
「………電気、ついてる。」
一番端の空き教室のみ、電気がついていた。
ガラガラガラッ!
躊躇なく岩本はその教室に足を踏み入れる。
規則を破っているのだ。
風紀委員長として見逃すわけにはいかない。
「直ちにこの教室から出てください。」
淡々と、その教室にいた問題児に言い放つが…
「あら〜、昨夜の風紀委員長だ!おつおつ〜、わら」
飄々とした様子で、深澤が手を振っていた。
とりあえず座ってよー、と深澤に促され、岩本は渋々空いた席に座らせられる。
「……お前、この学校のサボり魔だって?」
「あー…誰かから聞いたの?」
「すごい有名らしいな。」
ニコニコと机の上であぐらをかく深澤への怒りを抑えながら、岩本は深澤に話しかける。
「サボり魔とは失礼な気もするんだけどねぇ…ま、俺が有名なのは顔がいいからじゃない?わら」
そんな岩本とは対照的に、深澤はずっと声を弾ませている。
「とにかく、今何時かわかってるか?17:24、ここは使えないんだぞ。」
少しイラつきを声に滲ませながら、深澤にスマホの時間を突きつける。
「あっは!本当だー!じゃ、教室行こーっと。」
深澤は笑いながら机から勢いよく降りる。
ガタンガタン!
その勢いで、机と椅子がドミノのようにいくつか倒れる。
「お前、あぶねーだろ!」
岩本は急いで机を直しながら、深澤に注意するが…
「………あいつ……!」
すでに深澤はいなくなっていた。
「ふんふふ〜ん♪」
深澤は上機嫌に廊下をスキップする。
ゲーム機が壊れたというのに、またかばんをブンブン振り回す。
「岩本照くん、って言うんだ〜。」
その手に握られているのは、岩本の制服についていた名札プレート。
いつ、それを奪ったのかはわからないが…
深澤はそれを上に投げながら、生徒がいなくなったであろう教室に向かう。
昨夜のように。
「…世間知らずの風紀委員長。」
深澤は、最後の生徒が閉めたであろう教室のドアを開ける。
「この学校、ドアの鍵が壊れてる教室多すぎ〜、わら」
自分の教室ではないのだが、遠慮のえの文字もなくくつろぎ始める。
窓の外を覗いてみると、阿部と合流をして、帰宅する岩本がいた。
「まだまだ知らないことばっか。……ま、それがいいよね〜。」
深澤はカーテンを閉める。
そして、裏掲示板を開く。
「こんなの、信用しないでね。委員長♪」
“堕落した優等生“
その噂が生まれたのは、2年前。
その上、その名前を知っているのはほんの一握りだけ。
なぜ、こんなに印象的な名前を知るものが少ないのだろうか?
『いや…お前、昔はそんなんじゃなかったじゃん。』
遠藤の発言を思い出す。
「昔、ねぇ…」
深澤は、当たり前に座っていた机の上から降りる。
チョークを手に取り、黒板に文字を書き始める。
「2次関数、懐かしいよね〜。平方完成ミスったら終わりでさ〜、わら」
「フランス革命!歴史の先生、この話題になると張り切るよね!」
「物理は、あんまだったかなぁ?ほぼ数学だし!」
黒板に、数式や年表、図やグラフで埋まっていく。
全て、驚くほど正確に。
3.6×1.2mの黒板の全面が埋まり、かなり短くなったチョークを置く。
黒板に詰め込まれた、1年の“鬼門“と言われている内容。
今でも苦手意識を持つ生徒もかなり多い。
数学から物理、歴史に科学、古文に漢文、英語まで…
ほぼ全ての教科の内容が、完璧に詰め込まれている。
「……こんなん、意味ないのに……」
深澤は、短くなったチョークを右手で砕き、黒板消しを手に取る。
そのまま、無心で黒板の文字を消していく。
何度かクリーナーにかけながら、隅々まで綺麗に消していく。
「……うわっ!手、汚れたぁ!」
綺麗に消し終えた後、自分の手を見て声を上げる。
深澤の手は、チョークの粉で汚れていた。
ぱんぱんっ!と手を叩き、チョークの粉を払う。
だが、
「うぇっ!ケホッケホッ、粉吸ったぁっ!!」
払った粉を思いっきり吸い込み、激しく咳き込む。
ゲーム機は壊れ、チョークの粉を吸い込み…
「今日、ついてねぇなぁ…」
深澤は、少し肩を落としながら教室を出た。
「目黒くんは、王子みたいやなぁ…」
向井は、にやにやと自分の手のひらを見つめながら、“裏掲示板”に書き込みをしていた。
深澤の見ていた、やけに詳しい生徒会と風紀委員の特徴。
それの投稿者の名前は、“photo boy”。
向井のニックネーム。
つまり、向井が書き込んでいたものだった。
ホームページや他のサイトで調べてきた情報をわかりやすくまとめ、それをノートに書き写し、掲示板に投稿する。
任命式のあの日から、それが向井のルーティンになっていた。
「今度、許可もらって写真撮らせてもらおうかなぁ…?」
自分の投稿を見返して、やはり写真は欲しいと思う。
きっと、写真があればよりみんなにも知ってもらえると思ったのだ。
向井は、ニックネームの通り、写真を撮ることが好きだった。
「明日、目黒くんとラウールくんに、頼んでみようかな…」
向井は、自室に置いてあるカメラを手に取る。
だが、すぐに顔をブンブン横に振り、
「……な、何考えとるん!?///こんなお願い、あの2人が引き受けるわけないやん…!!」
カメラを机の上に置き直し、ゆっくり夕飯の支度をしに部屋を出た。
「ん!おいしいね。」
「だろ!!」
宮舘は、チャーハンを口に運び、驚いたように目を見開いた。
その様子を見て、渡辺が満足そうに笑う。
「ネットでいっぱい出てきたんだよ!」
今夜の夕飯は、渡辺が作ったものだった。
「俺よりも、料理上手くなるかもね。」
「ばーか!そんなわけないだろーが。」
宮舘が冗談めかしに笑うと、渡辺は照れたように顔を背ける。
「……でも、本当に美味しいよ。ありがとうね。」
そんな渡辺にやわらかく微笑みかける。
「………まぁ…うん…」
その笑顔で、渡辺はさらに顔を赤くさせるのだ。
宮舘が食器を洗っている間、渡辺は風呂に入る。
渡辺が風呂から上がる頃には、宮舘は後片付けが終わっており、ゆっくりテレビを見ていたりする。
「涼太、風呂。」
渡辺が声をかけると、宮舘がにっこりと笑いながら頷く。
「その前に、翔太の髪の毛乾かそうか?」
「……い、や…自分でできるし…っ!!」
まだ髪の毛が濡れている渡辺を見て、宮舘がドライヤーを手にするが、慌てて宮舘からドライヤーを奪い取る。
そんな渡辺の様子に笑いながら、宮舘は風呂に向かった。
「……ったく…子供扱いしやがって…」
宮舘のいなくなった部屋で、渡辺は少し不機嫌そうにしながらも丁寧に髪の毛を乾かす。
いつもこうなのだ。
同居人であり、“幼馴染”である渡辺と宮舘。
幼い頃から一緒にいる2人。
双子のように仲が良く、親同士も仲が良かったため、2人のルームシェアに反対する人はいなかった。
ただ…
「いっつも、俺のこと子供扱い…」
ルームシェアを始めてから渡辺の気づいたこと。
自分は、宮舘に子供扱いをされている。
そのようにされる理由は、渡辺自身もわかっている。
渡辺は、自他ともに認める“1人ではほとんどのことができない“のだ。
幼い頃から、周りのことは誰かに代わりに行ってもらえていたため、自分から何かを行うことに慣れていない。
宮舘は、小さい頃から特に渡辺の世話をしていた。
先程の出来事もまさにその一環である。
昔はよく泊まりに行った時に宮舘に髪の毛を乾かしてもらったものだ。
昔はそれが心地よかったが…
「…高3だぞ、俺…」
思春期真っ最中の渡辺には少し複雑なものであった。
ピロンッ
「……ん?」
渡辺のスマホが鳴る。
ドライヤーのコンセントを抜き、スマホを手に取る。
「………佐久間から?」
『来月の文化祭、一緒にステージ立たね?』
佐久間から送られてきたのはその一文。
そういえば来月の初めは文化祭か、と思いながら渡辺はスマホを持ちながら冷凍庫のアイスを手に取る。
一口齧り、改めてその分を見返す。
「……はあぁぁぁ!?」
「あっははは!」
佐久間は、渡辺からの返信を見て笑う。
返信までの時間は、既読がついてから約1分。
『なんでだよ』
ただ一言。
それだけなのに返信に時間がかかっている。
「翔太、だいぶ眠いのかぁ〜?」
ニヤニヤしながら佐久間は返信を返す。
ステージに立つのは、俺と翔太と“もう1人“いるから、と。
「“あいつ“、誘ったら乗ってくれっかなぁ〜?」
佐久間の中では、渡辺が一緒にステージを立つことは確定事項だ。
ただ、“もう1人“。
そいつが乗ってくれるかは微妙なようだが…
「ま、連絡だけしてみっかー!!」
渡辺からの怒涛の拒否を無視して、指を下へ滑らせていく。
最後に連絡をしたのは、どうやら2年前のようだ。
「文化祭、おまえとステージ立ちたいなぁ〜…っと!」
コメント
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第3話、めっちゃ面白かった!深澤くんめっちゃ掴みどころないけど、黒板に全部の教科を完璧に書いてたシーンで「あ、コイツめっちゃ元優等生だな」って確信したわ。裏掲示板の噂と“photo boy”の繋がりも気になるし、渡辺×宮舘の幼馴染ルームシェア尊すぎて悶えた。文化祭ステージの“もう1人”だれだろ…続きめっちゃ待つわ🔥