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「あんまりいないと思うわ。紺野くん、やっぱり能力者と普通の男性が一緒にいるのは難しいんじゃないかしら?」
「そんな事ないと思いますけど」
「今はお互い好きだし若いから、能力の事なんて関係ないと思ってるかもしれないけど、ずっと長く一緒にいたら、少しずつ2人の関係に歪みが生じてくると思うの…」
「そう決め付けてしまうのはどうなんですかね?」
「やっぱり、遥香の相手は私と紺野くんが探してあげなきゃ駄目なんじゃないかしら?」
「何で反対してるんですか?」
「私は、葵ちゃんの代わりに母親になったの。遥香には絶対に幸せになってもらわなきゃいけないの。紺野くんだってそう思うでしょ?」
「そりゃそうですけど…」
「可哀想だと思うけど、遥香の為に2人で反対しましょう。私たち2人が認めなければ、遥香だって諦めると思うの…。遥香たちには別れてもらいましょう」
美咲さんは、ハンカチを目に押しつけていた。
「ちょ‥ちょっと待って下さい。話も聞かないで頭ごなしに反対するのはよくないんじゃないですか? とりあえず会って話でも聞いてみましょうよ」
美咲さんの言葉で何だか遥香が可哀想になり、そんな事を言ってしまった。
気付くと反対派の僕と賛成派の美咲さんの立場が逆転していた。
「私は絶対無理だと思う…」
「まぁ、そう言わずに話でも…」
「わかりました…。話を聞くだけですからね。私は絶対に反対なんですから…」
ピーンポーン…‥
遥香が帰って来たようだ。
僕は2人を出迎えに玄関に歩き出したが、美咲さんは和室に座ったまま立ち上がろうとしなかった。
「美咲さん…」
僕は美咲さんを立ち上がらせると、体を支えながら一緒に玄関に向かった。
「どうぞ…」
僕が声をかけると遥香と男が中に入って来た。
「初めまして。平井章太と申します」
スーツ姿の男は、身長が180㎝以上で痩せ型、短髪で顔は優しそうな甘いマスクをしていた。
「遥香の父です」
「・・・・・」
美咲さんは黙ったまま何も言おうとしなかった。
「こちらは遥香の…母親です」
「よろしくお願い致します」
すると男は僕らに向かって深々と頭を下げてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「・・・・・」
どうしちゃったって言うんだよ美咲さん…‥
それから僕の案内で2人を和室に通した。
「お酒でいいですか?」
「はい」
男は遥香とアイコンタクトで何かを確認した後、そう返事をした。
「帰りは遥香に送ってもらうといい」
「わかってるよ、パパ。だから彼の家まで迎えに行ってきたんじゃない」
「なるほど…」
初めからこうなる事はわかっていたようだ。
そして、男と僕と美咲さんのグラスにはビールが注がれ、遥香のにはオレンジジュースが注がれた。
「どっ‥どうぞ召し上がって下さい」
美咲さんが、1人でビールを飲み始めていたので慌てて声をかけた。
「はい、ありがとうございます。いただきます」
しばらくの間は、世間話をしながら食事を楽しんだが、相変わらず美咲さんは何も語ろうとしなかった。