ここは何処だろう?
何も見えない、聞こえない。
ただ一つわかるのはここが酷く寒いと言うことだけだ。
突然視界が晴れる。
見覚えのある景色だが、何かが違う。
薄暗いこと?それとも樹の根元に立つ人?
そこまで考えて俺は思い出した。
これは夢だと。
もう二度と思い出したくなかった。
考えたくもなかった。
あぁ最悪だ。
脳裏に焼きついて離れない。
突然右胸に激痛が走る。
なんだ…何が起きたんだ
理解ができないまま、咄嗟に右胸を抑える。
驚くほど冷たかった。燃える様に熱いというのに
少しずつ少しずつ視界が、意識がぼやけていく。
俺の手は俺自身の血で紅く染まっていた。
そこで俺はやっと攻撃されたのだと思い至った。
攻撃は背中から右肺を貫通していた。
息ができない…ヒューヒューというか細い呼吸音が口から漏れる
周りは俺の血で真っ赤に染まっていた。
傷口からはダムが決壊したかの様に止まることなく血が流れ続ける。
あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか、あか…
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
そんなことが頭を駆け巡っていると急な睡魔に襲われた。
あぁ、なんだかとてもとても眠い。いっそこのまま眠ってしまおうか
ふと横を見ると俺の唯一で最愛のヒトが泣いている。
そんなに悲しそうに泣かないでくれよ…そんなに憎らしそうな顔をするものじゃないよ
そう、言ってやりたかった。
だが残念なことに、俺にできたのは無様に呼吸音を響かせることだけだった。
俺の体はもう限界だった。
目は見えず、声は出せず、体もほとんど動かせない。
だが幸か不幸か耳だけは最後まで聴こえていた。
「必ず助けてやるから、だから俺を置いていくな。頼むからァ」
「なぁ珊瑚…きっと仇を打つから、何百年かかったとしても必ず地獄におくるから」
「だからまた俺の元に戻ってきてくれ!」
「愛してるよ。おやすみ」
どんな顔をしていたかは分からないが、声だけなら今だって思い出せる。
狼影は死んだりしないから俺が一生一緒なんて無理だと分かってるはずなのに。
ほんとらしくないこと言ってたよ。
俺気付いたことがあるんだ。
本当は記憶を無くしてなんてないんだ。
この悲しい記憶と共に全ての思い出に蓋をしただけなんだよなぁ。
でもここから先は本当に知らない。
ここから先は俺のいない狼影だけの執着と復讐の物語だ。
狼影は俺がいない空白の期間をどうやって過ごしたのだろうか
コメント
1件
もうそろそろ受験生ということでね、ほぼ更新がなくなります。たまに浮上するかもだけど、1年後までバイバーイ